表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: よしだ

昨日から、私の飼っている鳥が変だ。


一昨日の夕方、帳が降りかけていたが、私はいつもとおおかた同じ時間に鳥に餌をやった。そのときは特に変わったことはなかった。これが十一月四日のことだ。私の鳥は穀物を食べる。この鳥を飼い始めたときはペットショップで一緒に置いてあった穀物を与えていたが、私は色々思案するのが好きな性質なので、今年の春頃からはどうやら評判が良さそうなミックス穀物をAmazonで買って与えている。(そうそう、言い忘れていたが、私は鳥に特に名前を与えていない。もちろん思案するのが億劫だった訳ではなく、ペットショップで出会った彼は、なんとなく名前を必要としていない様なおももちだったのだ。)


私はその日は、歌番組を眺めながら、夕飯に今年初めて鍋を作り、それを食べて寝た。

_______________________


翌日(今日の私から見た場合の、昨日。)、私はセットした七時三十分の目覚ましの音を聞く前に起きた。これはたいへん珍しいことだ。私は目覚ましを聞いてもなかなか起きられない性質で(ここ最近は寒くなってきたため、ことさらだ。)、その証拠に、七時四十分と、七時五十分、七時五十五分にも目覚ましをセットしている。

私は昨日の鍋の残りを雑炊にして食べた。

朝食の穀物を鳥に与えようとしたところ、どうやら寝ているのか起きているのか分からない様子で、いつもの鳥籠に収まっていた。

私は穀物を餌皿にあけて、会社に出た。

_______________________


私はいつも家に帰ると、半ば義務的にただいまと挨拶をしている。私は鳥と二人暮しであった。

私はジャケットを脱ぎ、唯一の同棲者に穀物をあげようとした。

鳥は、まだ寝ているのか起きているのか分からない様子で佇んでいた。いや、正確には起きてはいた。しかし寝ているのか起きているのか分からない“雰囲気を醸して”いたのだ。鳥はぼんやり空中の一点を見つめていた。当然のことだが、朝与えた餌は失くなっていた。


私は前日と比べ特筆すべき差のない工程をなぞり、床につこうとした。

しかし、すぐには寝つけなかった。

寝つけない時間はつまらない!

そして、寝つけないと煩悶する時間が、私は嫌いだった。

こういうときは切り替えが肝心だ。私は仕方なく電気のスイッチをつけ、鳥に構った。まだ鳥はぼんやりしていた。具合でも悪いのかと思ったが、ペットショップの主人に聞いた具合が悪い際のサインはどこにも現れてなかった。ネットでも調べたことがあるので、間違いないはずだ。私は、こうみえて鳥の体調管理は欠かさないという自負がある。

鳥は、晩に与えた穀物はとっくに食べ終えていた。

私はいつ買ってきたか覚えていない文芸雑誌を読んだりしながら、眠気を待った。部屋の細々とした片付けをしたりもしていたため、再び床についたのは普段寝る時間よりだいぶ遅かったが、それでもまだ午前一時はまわっていなかった。そもそも私は普段、寝る時間が早いのだ。

これが十一月五日、月曜日の出来事だ。

_______________________


そして今日の朝、私は目を覚まし、妙に気になったので朝食を食べるより先に鳥の様子を見に行った。

おおかた昨日と変わらないが、依然ぼんやりしており、空中を見つめているようだった。

しかし、たぶん、見つめる点が昨日とは変わっている気がする。方向的には冷蔵庫のある方向だが、冷蔵庫を見つめているかどうかは定かではない。たぶん、違う。

それと、なんとなく羽の色がいつもより淡い気がした。汚れではない。

しかし、よく思い出してみれば、昨日の時点で既にいつもより淡かった気もする。昨日の私は見間違いだろうと思考に蓋をしていたのかもしれない。


今日は十一月六日、火曜日だ。

子供たちの声が聞こえる。私の家は小学校に近い。


私は今日、会社を休んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ