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9話

「フレンド、ですか?」


「そう、今イベントでフレンド増やすと限定アイテムもらえるんだ。だから2人ともお願い!」


「そういえばそんなのやってたね……」


 お知らせ欄を確認すると確かにそういうイベントが開催中となっていた。

フレンドを1人増やすとプリズムクラッカー、3人増やすと限定家具チェリータペストリー、5人増やすと限定使い魔(ファミリア)桜ドランくん、10人増やすと限定乗機(キャリー)ブロッサムドラゴン……何に使うものかはわからないけど「限定」と付いているんだからレアなものなんだろう。


「ルピナスは限定に弱くて……でもそっちのフレンド増やすのも手伝えるし、頼めないかな?」


 シリウスさんからも熱視線を送ってくるルピナスさんをなだめつつ提案された。

ふむ、会ったばかりの人だけど、ヘルプの説明によればフレンドになることによってゲーム外の個人情報が伝わることはないらしいし、フレンド解除も簡単に出来るはずだ、問題はないだろう。


「いいですよ。せっかくだから2人ともとお願いします、それで限定家具まではもらえるみたいなんで」


「わあっ、ありがとう!!早速フレンド申請送るね!」


 ルピナスさんは飛び跳ねて喜び、すぐにフレンド申請が送られてくる。

すぐに承認し、フレンドリストを確認するとちゃんとアルカナ・ルピナスさん・シリウスさん3人の名前が並んでいた。


「やったー!限定アイテムの受け取りは冒険者ギルドにいる配達ドランくんに話しかけると出来るから忘れないようにね」


「俺達けっこう暇してるから攻略の手伝いとかあったら気軽に呼んでくれて大丈夫だよ」


 2人はそう言ってから別れの挨拶とともにダンジョンから退出した。

僕とアルカナも後を追って退出し、新たな装備と縁を得て初めてのダンジョン挑戦は成功したのだった。



 冒険者ギルド指導員に再び話しかけてクエストを完了し、戻ってきたブレイブポートの冒険者ギルド。

その入口付近を見渡すと、いました郵便配達員の帽子を被ったドランくん――『ドラゴンファンタジー』シリーズのマスコットキャラクターである青い小さなドラゴン、頭上にも「配達ドランくん」の文字があった。

話しかけるとニッコリ笑い、癖になる高い声でしゃべりだす。


「冒険者さんにプレゼントが届いてるドラ!」


 そしてアイテム欄に入ってくる2つのアイテム。

気になるのでその場でアイテムの詳細を確認してみる。


『プリズムクラッカー

  消費アイテム

  光り輝くエフェクトを発生させるアイテム。』


『チェリータペストリー

  家具・壁掛け

  春限定、桜色の鮮やかなタペストリー。』


「これって何に使うの?特にクラッカーの方」


 純粋な疑問にアルカナが丁寧に答えてくれる。


「集合写真スクショするときとかに使う。いらない人はいらないけど使いまくるから欲しがる人もいるからプレイヤーマーケットで売るって手段もあるかな」


「へぇ……家具の方は今はないけどそのうち置ける家が手に入るってこと?」


「そうなんだけど、個人用の家はめっちゃ高いからクランに入って部屋もらうのがオススメ」


 クラン、知らない単語が出てきた。

確か一般的な意味では氏族……ゲームで使う単語には思えないから別の意味があるのだろう。


「クランってのは何?チームみたいなやつ?」


「あ、まだ説明してなかったか。プレイヤー同士で組めるチームで、結成するとクラン専用の家がもらえてメンバーひとりひとりの部屋もある」


「おー、いいね!アルカナもどこかのクランに入ってるの?」


「……まあ入ってるといえば入ってるというか、うん」


 アルカナの目が泳いだ。

これは何か都合の悪い方向に話が進んだと思っている反応だ。

最近の傾向から察するにおそらく、廃人クランに入っているのを隠そうとしてるのかな?


「廃人クランとかそういうのには入ってないよ!」


「まだ何も言ってないよ!?」


「そういう顔をしてた!!」


 こちらから向こうの考えがだいたい分かるように向こうもこちらの考えがだいたい分かるらしかった。

アルカナは少しテンションを落としつつも言い訳を続けた。


「わたしが入ってるのは《ヴァンガード》っていう高難易度コンテンツに一緒に挑もう、ってクランなんだけど……ノルマとかないし緩いノリな中堅クランだよ!」


 中堅って言っちゃった……自分でそう言うってそれなりの強豪では。

まあいじめたいわけではないので深くツッコむのは止めておこう。


「緩いノリとはいえ高難易度に挑戦するようなところに初心者が入って部屋だけもらうってのは申し訳ないから家具の方はとりあえずしまっておくことにするよ」


「えー、遠慮しなくてもいいよ。ゴリ押せばそのくらい……」


「本当に大丈夫だからゴリ押しは止めなって」


 っていうかゴリ押せる立ち位置ってクランの主力にいるってことでは?

主力メンバーがリアル彼氏連れ込んでチーム崩壊なんて事件は絶対起こしたくないのでちゃんと遠慮しておこう。

とりあえず話題を変えて……


「そういえば他の限定アイテムに使い魔とか乗機とかあったけど、それはどんなやつ?」


「そっちも気になる?じゃあクランのことは一旦置いといて……」


 一旦って。結構本気で考えちゃってたよ危ない!

ちょっと焦る気持ちを隠しつつ新しい話題にがんばって誘導しなきゃ。


「うん、気になる!使い魔ってどんな役に立つのかなー?」


「使い魔は役に立つっていうか、アクセサリーみたいなもので……その辺のプレイヤー見てみなよ、小さいの連れ歩いてる人がそこそこいるでしょ?」


 言われるままに周囲のプレイヤーを確認すると、ピンク色のドランくんやミニサイズのモンスター、デフォルメされた人間キャラクターを連れ歩いているプレイヤーが確かにいた。


「あれが使い魔、特に効果はないけどかわいい。今のカカソーラでもデフォルトでプレーンなドランくんを連れ歩けるはず」


「そうなの?やってみよう」


 メニューを確認して「使い魔一覧」の項目を見つけ出し、唯一選択できる「ドランくん」を呼び出す。

するとポンッとドランくんが現れて僕の周りをパタパタと飛び回った。


「かわいい……」


「かわいいね……」


 よし、このまま連れて冒険しよう。

こっそり決意してドランくんとたわむれる僕を見守りながらアルカナは説明を続ける。


「乗機の方はまあ乗り物だね。歩くのより早く移動できるし、メインクエストを進めると空も飛べるようになる」


「いいね、空を飛ぶ!じゃあそのためにもメインクエスト進めないと」


 意気込む僕に、アルカナが不敵な笑いを浮かべた。


「ふふふ、実はフライングで飛ぶことも出来ます。ちょっとついてきて」


 ?を浮かべながらついていき、ブレイブポートの外――フィールドまで移動するとアルカナは大きな鍵のようなアイテムを取り出した。

するとどこからともなく飛んできたのは……小型の飛行船だった。

アルカナは片手で飛行船を軽く叩き、自慢気に言う。


「スカイカッターMark II、二人乗りの乗機だから君も一緒に空が飛べます」


「マジですか」


「マジです。ほら、乗った乗った!」


 促されるままに後部座席に座り、操縦席に座ったアルカナの肩を掴む。

そしてアルカナが操縦桿を何やら操作すると、飛行船は空高く飛び立った!

風を感じながら地上を見渡す体験はVRとはいえ興奮を抑えきれないほどに楽しい。


「すっっっごいね!!」


「でしょ!まだまだDFOの楽しいところはたくさんあるから期待してて!」


「するする!」


 2人で空中飛行を楽しみながら、心の片隅でちょっとした目標が生まれた。

早く僕が運転する方になりたい、ってね。

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