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8話

挿絵(By みてみん)


 準備万端で洞窟の最深部へと足を踏み入れると、BGMが変調しボスモンスターが肩書きと共に姿を見せる。


『ストレイ洞窟の主

  ヒュージポイズンスライム』


 ヒュージ(巨大)ポイズン(毒持ち)なスライム、その名の通り僕の倍以上はありそうな体高で毒々しい黄緑色の粘液状のモンスター、こいつがこのダンジョンのボスか。

巨体を相手に戦うのに武術の経験は役立ちそうにないな、なんて思いつつ僕は後ろにいるパーティメンバーを振り向き戦闘開始の確認をする。


「じゃあ行っていいですか?」


「どうぞー」


「気楽にがんばって!」


「大丈夫、上手くやれるよ」


 3人の応援を受け、僕は意気揚々とヒュージポイズンスライムに向かって足を踏み出し【挑発】スキルを使った。

たちまちヒュージポイズンスライムは波立ち、僕に対して泡攻撃を始める。

この程度は剣を振るいながらでも避けるのは楽勝だ、冷静に対処しつつ教えてもらったタンクのコツを実行する。


「こっちだよ、っと!」


 ヒュージポイズンスライムの後ろ、洞窟の本当に奥の奥まで引き付けながら移動、それによってヒュージポイズンスライムは振り向き――僕以外のパーティメンバーへ背中を向けることになった。

つまり完全な安全地帯かつ攻撃を当てるポイントが出来たのだ。


「よく出来ました!」


 アルカナは僕へお褒めの言葉をを送りつつ【エンハンスファイア】を使用、前進し攻撃を開始する。


【魔法剣・アイン】


【魔法剣・ツヴァイ】Combo!


 アルカナの剣が振るわれるたびに現われる表示はコンボ――決まった順番に戦闘スキルを使用することで威力を高める効果が発動していることを知らせている。

それに倣って僕も【ソードスラッシュ】からレベル5で覚えた【ブレイブソード】に繋げるコンボを使いヒュージポイズンスライムのヘイトを維持する。

今はこの単純なものだけだが、レベルが上がって戦闘スキルの数が増えると複雑なコンボルートもあるから一つずつ馴染ませていくように、と秘ちゃんは言っていた。


 そしてもちろんシリウスさんとルピナスさんも休んではいない。

ルピナスさんは距離を取って銃を連射しているし、シリウスさんなんて僕のHPを【治癒法】で維持しつつパーティ全体の攻撃力を上げる補助魔法【祈祷法】も使いその合間に攻撃魔法【式打ち】まで使っている。

そのおかげでヒュージポイズンスライムのHPはどんどん削れ、もうすぐ3分の2といったところだ。


「そろそろ強打が来るよ、備えて!」


 アルカナからの警告から一呼吸後、僕の頭上に赤い矢印が現われる。

冒険者訓練所でも見た、回避不能の強力な攻撃が来る合図だ!

これが来たときは他のパーティメンバーを巻き込まないように位置取りを確認、そして防御力を上げる戦闘スキルだ。


「【プロテクト】!」


「いい感じ!【加持法】もどうぞ」


 加えてシリウスさんが防御力を上げる補助魔法も使ってくれた。

さあ来るなら来い!と思ったところで赤い矢印が消え、ヒュージポイズンスライムが僕にのしかかった。

二重の防御効果があるうえでも僕のHPゲージが4分の1ほど削れ、さらに毒状態が付与されてわずかながらHPが減っていく状態異常になってしまった。


「【厄払法】、回復はその次ね」


 だがシリウスさんがすかさず状態異常を解除する回復魔法で毒状態を解除してくれた。

さっきからずっと助けられっぱなしだ、すごいぞヒーラーさん!

順調に攻略が進んでいることもあって、つい雑談を始めてしまう。


「ヒーラーって忙しそうですね、すごい助かってます!」


「どういたしまして、大変だけどやりがいあって楽しいよ」


 そう答えるシリウスさんは既に回復・補助・攻撃のマルチタスクを再開しており、しかも余裕の口ぶりだ。


「DFOのゲームバランスだとヒーラーも攻撃に参加して敵を削る方がタンクのHP維持できるからね。攻撃は最大の防御ってやつだよ!」


「もちろんタンクもガンガン攻撃に参加しなきゃいけないから、コンボ連打がんばれー」


 DPS組も余裕そうで、ルピナスさんの解説とアルカナのアドバイスが飛んでくる。

攻撃了解、ガンガン行こうぜ!だよ。


「ピキャァァァァァ!!」


 ヒュージポイズンスライムの叫び声……いや、口がないから声じゃない何かが響き渡る。

いつの間にかそのHPは残り4分の1まで減っていて、最後の大技を使おうとしているのだ。

それは戦いが繰り広げられている少し広めの空間の中心に移動し、プルプルと震えだす。


「今度は全体攻撃、攻撃地点は――?」


「オレンジ色のゾーン!」


 アルカナが声をかけて僕にその避け方を思い出させてくれる。

その直後ヒュージポイズンスライムが弾け、肉体の破片が空高く舞い上がる。

落ちてきた破片にぶつかると大ダメージと毒状態を受けてしまうのだ。


「ゾーン、ゾーン……いっぱい出た!」


 落下する地点にオレンジ色に光るゾーンが現われる。

空間内に所狭しと広がるそれの合間を見つけ出し、急いでそこまで移動した。

僕以外の3人は余裕綽々で安全地帯に移動、そして先程の強打と同様にオレンジ色のゾーンが消えた瞬間ヒュージポイズンスライムの肉片が着弾する!


「よし、避けれた!」


「おみごとー!」


「上手!」


「じゃああと少し、全力で削るよ!」


 ノーダメージで範囲攻撃を乗り越えた僕達は、再び攻撃を開始。

ちゃんと僕以外のパーティメンバーにヒュージポイズンスライムの背中を向けさせる位置取りも忘れずに、僕は戦闘スキルのコンボを連打する。

そしてアルカナの赤い光を帯びた剣が閃いたその時。


「プシュゥゥゥゥゥ……」


 ヒュージポイズンスライムは溶け落ち、その姿を消していった。

空中に浮かぶ「CLEAR」の文字と流れる軽快なファンファーレ、ボスを倒したのだ!

大量の経験値が入りレベルアップの知らせも表示される。さらにはいつの間にか戦っていた空間の中心にキラキラ光る宝箱も現れている。


「お疲れ様」


 アルカナが微笑みながら声をかけてくれる。


「お疲れ様、この調子でがんばって」


「おつかれ!上手だったよー」


 シリウスさんとルピナスさんも温かい言葉をくれた。


「ありがとうございます!みんなもお疲れ様でした」


 僕もみんなに挨拶をし、初めてのダンジョン挑戦が大成功したことが確認できたのだった。

だが僕が浮かれてそわそわしている間にもうアルカナは宝箱を開けて中身を確認し始めたらしく、ドロップ品の分配開始を伝えるウィンドウが開く。

並んでいるのは胴・腕・指輪の装備品で、どれも僕のものより性能がいい。


「ボク達は辞退するからカカソーラさん全部もらっちゃっていいよー」


 ルピナスさんがありがたいけどそれでいいのか不安になる提案をする。


「えっ、いいんですか?」


「うん!もっといいやつ持ってるからね。いいでしょ、アルカナさん?」


「うん、2人がいいならお言葉に甘えよう」


「わー、ありがとうございます!」


 うきうきで3つのドロップアイテム全てに「希望」の選択を選ぶと、全て僕のアイテム欄に入った。

シリウスさんとルピナスさん、本当にいい人だ。


「じゃあそろそろ退出しようか。出るときはあの光ってるところに……」


「あ、ちょっと待って!」


 ダンジョン攻略を終えようとするアルカナをルピナスさんが静止する。


「もし良かったらフレンド登録しない?」

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