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6話

「ただいまー」


「おかえり天ちゃん、おじいちゃんはもう帰ってるから道場に顔を出しておいで」


「わかったよ、お祖母ちゃん」


 僕は帰宅後すぐに稽古着に着替えて、言われた通り家の隣の道場に移動する。

我が家の家業は江戸時代以来の古武術の道場なのである。

花果家の家族構成は祖父・祖母・母・僕に独立した兄一家と入院中の父、こちらも独立して遠くに住んでいる伯父となっていて、伯父も父も兄も家業を継ぐのを嫌がる中で僕だけが乗り気という状況だ。

生まれつき体を動かすのが好きだし、祖父が熱心に教えてくれるおかげで上達するのが楽しいから僕にとっては最高の状況である。


 そんなわけでしっかり稽古に励んでから風呂と夕食を済まし、それから翌日の早朝稽古に備えて眠るまでの時間が今後安定してDFOプレイにあてられる時間になる。

秘ちゃんみたいに廃人……じゃなくてがっつりやり込む予定じゃないからこれくらいでも十分だろう。

僕は秘ちゃんに今からログインできることを端末で送り、自室でDFOを再び始めた。


「おかえりー。もうちょっとで区切りのいいところまで行けるしメインクエスト進めていくのがいいと思うけどどうする?」


 アルカナに出待ちされていた。

おかえりとか言ってるし秘ちゃんずっとDFOしてたんだな……

まあそこはおいといて。


「そうだね、こういうゲームってメインクエスト進めないと出来ることも増えて行かないだろうし」


 彼女の提案を受けて、現在のメインクエストを確認する。


『メインクエスト:待ち構える試練

  ストレイ洞窟付近にいる冒険者ギルド指導員に話しかけよう』


 ふむふむ、そういえばお使いをこなしまくったから評価が上がったとか受付のお姉さんが言ってたな。

クエスト名と説明からしてもっと難しい依頼を任せられるかの試験があるのだろうか?

ストレイ洞窟は……マップによると現在いるブレイブポートからさほど遠くない場所にある。


「じゃあ張り切って、出発!」


「おー!」



「よく来たな、新米冒険者。お前にはこれからストレイ洞窟に広がる『ダンジョン』に『パーティ』を組んで挑んでもらう。ダンジョン攻略はこれまでの依頼とは一味違うぞ、さきに『冒険者訓練所』で訓練を受けてから挑むといい」


『ダンジョン:ストレイ洞窟が開放されました』


『冒険者訓練所が開放されました』


「おー、なんか開放されたしヘルプの項目も増えたよ」


「この辺重要だからわたしからもちょっと説明するね」


 そこからの説明を要約するとだいたいこんな感じだった。


・ダンジョンはプレイヤー4人でパーティを組んで挑戦するコンテンツ。

・パーティは職業が持つ役割(ロール)を3種類全て揃えて組む必要があり、タンク1人・ヒーラー1人・DPS2人で構成される。

・自分の役割に応じた基本的な動きは冒険者訓練所で練習出来る。

・パーティの人数が足りない場合、他のダンジョンに挑もうとしているプレイヤーとマッチングする機能がある。


「……それで、剣士の役割はタンク――敵のヘイトを集めて攻撃を一身に受けるポジションだね」


「せんせー!ヘイトってなんですか?」


「敵のAIが攻撃する対象を決める要素だよ。基本的に戦闘スキルを使うと上がるんだけど、タンク職は起動するとヘイトの上昇が大幅にアップする戦闘スキルを持ってるから敵に自分だけを狙わせることが出来るんだ」


 レベルが上がって増えた戦闘スキル一覧を確認すると、確かに【ガーディアン】という名前の説明通りの効果を持つものがあった。

さらに【挑発】というヘイトを上げるためだけのものもある。


「うん、多分わかったよ。それとヒーラーは名前からして回復する役割だとして、DPSって何の略?」


「確か『Damage Per Second』――一秒あたりのダメージの略で、敵にダメージを与える役割。わたしの魔法剣士はDPSだよ」


 盾役1人、回復役1人、攻撃役2人というわけか。

ふむふむ、なんとなくの感なのだが……


「タンクとヒーラーの責任が重大な気がする」


「間違ってはないけど、メインクエストのダンジョンはちょっとずつギミックが増えていって1つずつ覚えられるように設計されてるからそんなに気負わずにね?」


「そういうもの?じゃあ早速冒険者訓練所に行ってタンクの練習してこようかな」


「がんばって!アドバイスするから画面共有しておこう」


「よろしく!」


 冒険者訓練所は1人用コンテンツなので一旦パーティを解散して向かう。

場所はストレイ洞窟のすぐそば、ユーザーフレンドリーな立地である。

「タンクの師範」という名のNPCに話しかけると謎の原っぱに移動し訓練開始だ。


「よく来たな新人!まずはタンクの基本、【ガーディアン】を起動しろ!」


 言われた通り起動、視界に「OK」の文字が浮かぶ。


「よろしい、タンクはダンジョンに入ったらまず【ガーディアン】!次は【挑発】の使い方だ」


 そんな感じでひとつひとつ教えてくれる師範は厳しい口調ながらとてもわかりやすかった。

秘ちゃんとのチャットもアドバイスというよりほとんど雑談で済んだほどである。


「めちゃくちゃわかりやすいねこれ」


「DFOは小学生のプレイも想定してるからね。プレイヤー同士のいざこざを減らすためにいろいろがんばってるの」


「いざこざ?」


 僕の疑問に秘ちゃんは苦笑いしながら答える。


「ダンジョン攻略中にあいつのプレイが下手くそ、お前こそ下手くそでギスギスするの、MMORPGではけっこうあってね……DFOは治安良い方だからあんまりないんだけど……」


「ゼロではない?」


「ほとんどいい人だよ?万が一変な奴と当たってもわたしがついてるし、運営に通報すればいいんだから」


 画面の向こうに人がいるゲームの宿命か、プレイヤー人口が多いからか。

ゲーム内の治安についてはDFOも苦慮しているのだろう。

とはいえあまり不安がらず、治安が良い方だという秘ちゃんの言葉を信じるとしよう。


「じゃあ冒険者訓練所もクリアしたことだし、ダンジョン前の確認行くよー」


「はーい!」


「装備は?」


「冒険者訓練所でもらった一番いい装備!」


「ダンジョンに入ったらまず?」


「【ガーディアン】起動!」


「パーティメンバーには?」


「よろしくお願いします!」


 装備もスキルもマナーもばっちり!

カカソーラとアルカナのダンジョン初挑戦、行ってみよう!!

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