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5話

「VRゲームの戦闘、結構楽しいねぇ」


「気に入ってもらえて良かった。今日は午後も一緒に遊べるんだよね?」


「うん、5時までには家に帰らなきゃだけど」


 あれから僕達はラットを狩りまくったり少し進んだ先にいたキラービー(レベル2)を狩りまくったりして操作の練習をする内に12時を過ぎていたことに気づき、一旦休憩を取ることにした。

二人でおしゃべりしつつ居間に行くとちょうど(ひそか)おじさん――秘ちゃんのお父さんが昼食の準備をしており、僕達に気がついた(しずか)ちゃん――秘ちゃんの3歳になる妹がこちらに駆け寄って来る。


「天くんだー!」


「ちょうどいいときに来たな、今昼飯が出来たところだ」


「はい、いただきます」


 飛びついてきた閑ちゃんを抱き上げてテーブルにつかせ、僕と秘ちゃんも席につく。

昼食のメニューは閑ちゃんの大好物の密おじさん特製パンケーキ、僕も好きなやつである。

三千院家はお母さんの夜空(よぞら)さんが社長として働き稼いでいるので家のことは密おじさんが主夫として切り盛りしているのだ。


「天くん、天くん、今日はお姉ちゃんとなにして遊んでたの?」


「ゲームだよ。秘ちゃんが好きなやつを僕も買ってもらったんだ」


「食べたらまた一緒にやるんだから、閑は邪魔しに来ないでよね」


「えー!お姉ちゃんばっかり天くんと遊んでずるい!!」


「ずるくない、わたしは天の彼女だから当然」


 年の離れた妹に対しても一切譲る気のない秘ちゃん、かわいいよね。

見慣れた光景であるためこの程度では密おじさんも怒らず、放置して僕に対して話を切り出す。


「お前もあの……DFOだったか、ゲーム始めて()()の時間は大丈夫なのか?」


「もちろん稽古はおろそかにしませんよ。今日はお祖父ちゃんが用事で元から休みだし、これからだって暇な夜しかやらない予定です」


「そうか。進路は家業を継ぐって言い出したのはお前なんだから、そこをちゃんとしないと秘はやれんぞ」


「わかってますよー」


 僕達の交際は両親公認をとっくに通り越して高校を卒業したら結婚する前提でもう具体的な相談がされているのだった。



 昼食が終わって、再び秘ちゃんの部屋。

閑ちゃんはあっさりとテレビの中のあんぱんのヒーローに夢中になってしまったのでゆっくり二人で遊べる環境である。

僕達はDFOにログインし、天と秘からカカソーラとアルカナへと姿を変える。


「じゃあもう操作には慣れてきたからメインクエスト進めようかな」


「そうだね、ぶっちゃけ調子に乗ってモンスター狩り過ぎた感じもあるし……でもその前に、君にプレゼントがあります」


「プレゼント?」


 聞き返したところでトレードの申請が来たというシステムメッセージが表示される。

申請はもちろんアルカナから、内容はこちらからはなしであちらからは頭に「ホープトラベラー」と付いた装備アイテム一式となっていた。


「そのまま『受諾』を選択して」


「うん……っと、装備アイテム受け取れたよ!」


「OK、特選オシャレ装備一式になりまーす」


 アルカナは親指を立てる動作をした。

アイテム欄を確認すると今の初期装備とは一味違う、カッコいい見た目の装備アイテムばかりだった。


「わあ、ありがとう!こういうのってどこで手に入れるの?」


「これは課金かな」


 ……課金?

今課金と言いましたか?

僕は急いでトレード申請を送り、貰った装備を返す準備をする。


「流石にまだリアルマネーのかかるものはホイホイもらえないよ!?」


「あ、ごめん落ち着いて!あげるために課金したんじゃなくて、わたしが昔使ってたやつでお下がりだから!!」


 彼女からのフォローに僕はトレード申請を引き下げる。


「びっくりした……そうだよね、レベルマックスにしてる秘ちゃんなら課金装備でも昔のやつはいらなくなるか……」


「まだちょっと誤解があるね、このゲームの課金装備ってただのオシャレ装備だから元から強くないよ。性能欄を見てみなよ」


 言われるままに装備アイテムの性能欄をよく見てみる。


『ホープトラベラーシャツ

  装備Lv1 アイテムLv1

  防御 1 効果:なし』


 強くないっていうか、弱!?初期装備でも防御2あるのに!


「……これ、なんに使うの?」


「だからオシャレ装備だって。冒険者ギルドのチュートリアルで『マジックスキン』の説明あったでしょ?」


「あー……なんかあったね。確か、装備アイテムをマジックスキン登録すると実際の装備の見た目を変更できるとか……なるほど、登録するだけだから性能はいらないんだ」


「そうそう、実際にやってみて。きっとカカソーラに似合うから」


 そう言われると悪い気はしない。

僕はマジックスキン機能を起動し、もらったばかりの装備一式を登録して『現在の装備の見た目を変更』を選択する。

すると地味な初期装備からシャキンと見た目が切り替わり、アニメやゲームの主人公の衣装といっても通用するカッコいい見た目になった。

自分で少し確認したあと、軽くポーズを決めて聞いてみる。


「どう、似合うかな?」


「すっごく似合う!気に入ってくれた?」


「気に入りました!ありがとね。そういえばアルカナのその装備も課金装備の見た目なの?」


「これは制作装備、副職業で裁縫師のレベル上げると作れるようになるんだ」


 副職業……?

その用語はマジックスキンと違ってまだ聞いた覚えがなかった。

秘ちゃんは僕がぽかんとしているのにすぐ気がつき、解説を始めてくれた。


「副職業は剣士とかの職業を15まで上げたら覚えられるようになる戦闘には関係ない職業で、裁縫師で装備アイテムを作ったり、漁師で釣りをしたり出来るんだよ。わたしはあんまりやってないけどこっちを中心にレベル上げてアイテムの商売してるプレイヤーもいるんだ」


「へー、釣りはなんか楽しそうだからやってみたいかも。そのためにはまず……」


「レベルを上げるためにメインクエストを進めていかなきゃ、だね」


 そう、プレゼントをもらう前はそうしようと思っていたんだった。

というわけで僕は見た目がカッコよくなった装備のおかげで心躍りつつ、メインクエストを進めるために次の依頼を求めて冒険者ギルドに戻るのだった。



 が、そのメインクエスト。


「あっちに荷物届けろ、そっちのモンスター倒して素材をあっちに戻って届けろって、お使いばっかりなんだけどー!?」


「まだチュートリアルの続きみたいなところだから……この辺のフィールドに面した町の位置関係は覚えられたでしょ?」


 何回も行ったり来たりしたからね、嫌でも覚えられたよ!!

結局家に帰るまでに進められたメインクエストの内容はひたすらお使いクエストばかりでしたとさ。

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