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4話

 銀髪碧眼、長身に漆黒の帽子とマントをまとったエルフの美青年剣士。

それがアルカナ――DFOにおける秘ちゃんの姿だった。


「わー……イケメン……」


「ちょっと、変な反応しないでよ!違う性別のキャラ使うなんて普通だからね!?」


「いや、全くの別人から秘ちゃんの声がするの新鮮だなって……」


 秘ちゃんの声は緒方恵美さんとか朴璐美さん系統なので困ったことに違和感はないんだけどね。

それどころか他のプレイヤーに普通に男と思われてモテてないか心配になるくらい似合っている。


「いっそカカソーラとお似合いな見た目の新規キャラ作るべきだった……?」


「そこまでしなくていいよ!?本当にちょっと驚いただけだって、それよりほら、早く戦闘やってみたいな!」



 ちょっともだもだしたけど僕達は最初の町・ブレイブポートを出て魔物(モンスター)が闊歩するフィールドへと足を踏み入れた。

遥か遠くまで広がるフィールドの景色の出来は素晴らしく、これからもシナリオを進めれば新しい景色が見られると思うとわくわくしてくるほどだ。

そしてマップが示すクエストの目的――退治しなければいけないモンスターがいる方向を見ると、そこには大きめのネズミが数匹うろついていた。


「あれを倒せばいいの?」


「うん。頭上に名前とレベル、クエストの目標を示す二重丸のマークが付いているでしょ?」


 頭上には確かにそれらの情報が赤い文字で記されている。


『◎ラット Lv1』


 一応現在のクエストも確認してみる。


『メインクエスト:初めての戦闘

  ポート街道でラットを3体討伐しよう』


「付いてるね。モンスターっていうよりマスコットみたいな見た目だけど」


「最初に戦う相手だもん、雑魚じゃなきゃ。で、敵に近づくか遠距離攻撃したら戦闘モードに入るんだけど……とりあえずわたしがやってみるのを見てて」


「うん!カッコいいとこ見せてよね」


「レベル1相手にカッコいいところって言われてもね」


 くすくす笑いながら秘ちゃん、もといアルカナはラットの方へ近づいていく。

そして2メートルほどまで近づいたとき、流れていたBGMが緊迫したものへと変わった。

同時に、ウィンドウが開き戦闘チュートリアルが始まった。


『戦闘について

  最初はセミオートモードになっています。

  敵をターゲットし、戦闘スキルを選択すると自動で技を使用します。

  実際にやってみましょう!』


 戦闘スキル、カカソーラが使えるのはレベル1の今は【ソードスラッシュ】というものだけのようだ。


「説明読んだ?じゃあ見ててね」


 こっちに確認を取ってから、アルカナは行動を開始する。

まず【エンハンスファイア】という文字が浮かびアルカナを赤いオーラが包む。

そしてラットに駆け寄りながら【魔法剣・アイン】の文字を浮かばせ斬り掛かる!

哀れラットは赤く光る斬撃に吹き飛ばされ消えていった。


「っと、カッコよく出来たかな?」


 アルカナはマントを翻してふり返り僕に尋ねる。

僕は目を輝かせてそれに答える。


「うん、カッコよかった!カカソーラもレベル上げたらそういうの出来るようになるの?」


「あー……剣士のままだと出来ない」


 あれっ?どういうことだろうアルカナは剣士じゃないの?


「剣士以外の職業の発展っぽくは見えないけど……」


「アルカナの職業は魔法士をレベル30以上にしたら転職できる魔法剣士(マジックナイト)、いわゆる上位職ってやつで、近接戦闘と魔法を使った遠距離戦闘の両方が出来る職業なんだ」


 なるほど、最初に職業は最初に選べる8つだけではないのか。


「へー……その上位職っていくつくらいあるの?」


「今のバージョンだと24個かな」


「そんなに!?えっ、じゃあそのうち覚えてるのは何個?」


「普通に全部使えるしレベルマだけど……はっ!?」


 彼女の声に焦りが混じる。


「全部レベルマくらい全然廃人じゃないよ!使いこなせるのは魔法剣士と今練習してる賢者(セージ)くらいだから!」


 言い訳タイムが始まった。


「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに……むしろすごいなって思ってるよ?」


「恥ずかしがってるんじゃないの、本当に廃人じゃないの!さあ、この話は止め!戦闘やってみて!!」


 彼女にとって譲れない一線らしかった。

なのでこれ以上追求はやめて、言われた通り戦闘に挑戦するためラットに近づいていく。

すると戦闘モードに再び突入、右手が勝手に動いて装備している剣を抜く。

目の前で威嚇しているラットに意識を集中することで「ターゲット」し、戦闘スキル【ソードスラッシュ】を選択。すると……


「うわっ!?」


 体が勝手に動き出しラットを斬り付けた。

ラットの頭上にHPゲージが浮かび、半分ほど削れているのがわかる。


「ならもう一回、【ソードスラッシュ】……わっとと」


 再び体が勝手に動き――すごい違和感だ――ラットにトドメの一撃を放つ。

ラットはその場に崩れ落ち、先程と同様に消えていった。


『ラットの爪をドロップ』


 いや、今度はアイテムをドロップしたようだ。


「初めての戦闘おつかれー。どうだった?」


「うーん……簡単ではあったんだけど、違和感がすごいっていうか……」


()()()()()()()()()()()()()()、って思った?」


 その通りだったのでこくりとうなずく。

そしてちょっとした期待を込めて聞いてみる。


「今のがセミオートモードってことは、『マニュアルモード』もある?」


「あるよ!」


「やったー!!」


 設定画面を開き、戦闘モードをマニュアルモードに切り替える。

するとまたウィンドウが開きマニュアルモードのチュートリアルが始まる。


『マニュアルモードについて

  自分でキャラクターを操作し戦闘を行います。

  敵をターゲットするのではなく、自分で狙いを定めて攻撃を命中させる必要があります。

  戦闘スキルはそれぞれに決まった発動条件を満たすことで効果を発揮します。』


 ふむふむ、【ソードスラッシュ】の解説を見てみるとこの戦闘スキルの発動条件はいわゆる剣道の面の動きをすればいいようだ。


「だいたいわかった!今度はマニュアルモードで戦闘してみる」


「がんばれー」


 僕は次の獲物となるラットを選び、今度は自分で剣を抜いて走り寄る。

ラットもこちらに気が付き戦闘モードに突入、僕にとって動きやすい動きで斬り掛かる!

命中、さらに畳み掛けるように二度、三度と斬り付け全て命中させる……が。


「HPがあんまり削れない!」


「通常攻撃だからね」


 なら戦闘スキルを使うまで!今度は発動条件を満たした動きでラットに攻撃だ。

すると【ソードスラッシュ】の文字とエフェクトが浮かびラットのHPゲージを大きく削る!


「トドメだ!!」


二回目なのでさっきよりも滑らかに発動条件を満たし【ソードスラッシュ】を叩き込む。

これでラットのHPは0になり、アイテムをドロップしながら消えていった。

さらにクエストコンプリートの文字とレベルアップの文字が続けざまに現れる。


「おめでとう!こっちの戦闘の感想はどうかな?」


「こっちは違和感全然なし!もうちょっとやってみていい?」


「もちろん!せっかくだから次のスキル覚えるまでやっちゃおう」


 その言葉に甘えて僕は愛らしいラットの駆逐に精を出したのだった。

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