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問い 恋を10字以内で説明せよ。

作者: 夜兎

夜兎です。

読みきりでとても短いです。

嘔吐表現や奇病設定などがありますが読んでいただけたなら嬉しいです。

恋することは素敵だと思っております。

自分は恋する皆様の幸せを願っております。

最近視界にあなたがよく入ってきます。

知らない人に絡まれた所を助けて貰った恩はありますが、流石に毎日視界に入ってくるのはどうなのでしょうか。

同じクラスだとしてもこんなに毎日視界に入ってくるとは。

そろそろ視界に入ってこないで欲しいのですが‥‥。


時々、あなたと目が合います。

そしてあなたと目が合う度に喉に何かが絡まります。

あ、吐きそう。

急いでトイレに駆け込みます。

「ぉぇ」

‥‥綺麗なピンク色。

‥‥どうしましょうか。花が体内から出てきました。

教室に戻りスマホで調べてみました。

「ポピー‥?」

調べてみるとポピーでした。

くるりと花を回すとキラキラと輝いてるように見えます。

「なーにしてんの」

「‥‥こんにちは、見てください、花です」

友達の葵です。この人はいつも楽しそうです。

「‥‥花だねぇ、えなになに!誰かにあげんの~?」

‥‥脇腹をつつかないでください。

地味に痛いです。

「‥‥吐きました」

「‥‥ん?」

「‥‥吐いたんです、そんなもの人様にはあげれません。」

「‥‥ん?」

‥‥日本語では通じないのでしょうか。

「‥vomited、 flowers‥‥?」

で、あってますかね。

「‥‥おっけ。いやわかった、わかってたよ、でもさ吐いたってそれ‥」

‥‥?なんでそんな顔するんでしょうか。




帰り道。

夕日が沈んでます。綺麗だなと思いながら葵に言われたことを思い出します。

『それさ、花吐き病じゃない?‥‥なになにあんた好きな人いんの?』

『‥?好きな人‥‥ですか?』

『そ、花吐き病って片想いを拗らせるとなる病気でね‥』

『なら花吐き病ではないですね』

『‥‥え?なんで?』

『好きな人なんていませんから』


そういうと葵は頭を抱えていたけど大丈夫でしょうか。

好き、恋というものでしょうか。

なるほど、これはまた。

なんと難しい。


自分でいうのもなんですが、頭は良い方です。

学年で一位になるくらいは。

しかし葵の問いには答えられそうにありません。

恋には方程式も何もかもないと聞きます。

条件が不十分な状態で答えるなど不可能。


問い 恋とは何か

解答 解なし。


こういうことでしょうか。


‥考えるだけ無駄な気がします。






また朝が来ました。

相変わらずあなたは視界に入ってきますね。

‥‥また目が合いました。

小さく手を振られました。

口をパクパクしています。

あれは、

お は よ う は し も と さ ん

「‥‥おはよう橋本さん」

自分に向けた口パクでしたか。

手を振り返すと嬉しそうに笑いました。


‥‥どうしましょう、心臓が痛いです。

跳ねるようにバクバクと音がします。

‥‥これは間違いない。



「病気です、葵。」

「うん、だからそう言ってる」

「‥なんということでしょう、恋ですか」

「‥君が恋するなんてねー‥んで誰なの?」

「‥‥分かりません。」

「‥え」

「ただ最近よく勝手に視界に入ってくる人がいます。」

「‥そいつじゃん」

「そうなんですか」

「そうでしょ」

また葵が頭を抱えてしまいました。

「‥‥んでどーするの?」

「‥?どうとは?」

「それ!治さなきゃでしょ!花吐き病ってのはね、両思いにならないと治らないからさ」

「‥‥なんですかその無茶苦茶な治療法」

「‥‥それしかないんだよー。」

「‥‥なら、行ってきます。」

「‥は?」

「?行った方が良いんでしょう、この病気を治すためです」

「まてまてまて、え、ちょっと本気?今好きかどうかもよく分かってなかったよね??」

「‥今、好き、だと分かりました、」

ぎぎぎと音を立てながら葵から視線を外します。が‥‥恐らく葵にはバレています。

「嘘へったくそだなおい」

‥‥葵は昔から嘘を見抜くのが上手いです。

「‥‥君がそれでいいなら。」

葵はそう言いながら微笑みました。

なんだかお母さんみたいです。


あの人の所へ行く前にひとつ気になることがあります。

「葵、ひとつ聞いてもいいですか」

「‥‥なぁに?」

「‥どうして葵はそんなに花吐き病について詳しいんですか」

葵はへにょりと眉毛を下げました。

そんな顔見たことないです。

「‥‥さぁ、なんででしょーな。知らなーい。」

葵も嘘が苦手なようです。



あの人を探してみます。

‥‥いました。

友達と話しているようです。

今行くのは得策ではないですね。

少し待つことにしましょう。


「んで、恋人とはどんなかんじ?」

‥‥声が大きいですね思いっきり聞こえています。

‥‥恋人‥ですか。なるほど。確かに。あなたになら恋人の一人や二人‥‥はおかしいか。

‥‥あれ、でも治療するなら両思いじゃないといけないのでは‥‥?

‥‥そもそも両思いってなんでしょうか。


「‥‥まぁね、めっちゃ好きだよ」

あの人の声が静かに響きます。

‥‥チラリと顔を見てみると凄く良い笑顔。

初めて見ました。

‥‥あなたはそんな風に笑うんですね。

チクりと何かが刺さりました。


気がついたらいつもの帰り道でした。

「‥‥??」

よく分かりません。あの人と話さないといけないのに。

‥‥心臓が痛いです。

走ったせいか、喉が乾いてツンとしたように鼻の奥が痛いです。

視界がぼやけて見えます。

地面に雫が落ちます。


「っお゛ぇ」


これは知ってます。

マーガレットですね。

あぁ、そうだ昔、葵が言ってましたね。

恋占いと。

ひとつ、ふたつとちぎって占います。

「好き、嫌い、好き、‥‥‥」

花弁多いですね。

「‥嫌い。」

‥‥葉っぱもカウントしていいんでしたっけ。


いやいや、そもそも何故嫌いで終わると悪いのですか。

‥‥そう、嫌いなだけ。

そこで終わりなんです。

物語のように上手くはいかない。

「‥‥好き‥だな」

‥‥知らない方か良いことがあるなんて初めて知りました。






~数年後~


いつからか花は吐かなくなりました。

きっとあなたが視界に入らなくなったからでしょうね。



数年振りに皆が集まる同窓会。

わいわいと盛り上がる会場で一人お酒を楽しんでいました。

‥‥あなたが来るまでは。


「橋本さん‥?だよね久しぶり。」

あぁ、またあなたはそうやって視界に入ってくる。


「橋本さんは今、何してるの?」

「‥学校の先生です。」

「そうなんだ!凄いね、橋本さん!」

「‥そう、ですか」

お酒が回ってふわふわする。


あれから恋人ができたり、なんてことはない。

恋人いない歴=年齢 

という式が成り立ってしまった。


「‥‥あなたは‥どうなんですか」

やっとのことで声を出す。

聞かない方がいいって分かってるけど。

でももしかしたらって、

くだらない夢を見る。


「実はね、結婚を決めた人がいるんだ。これ内緒だよ。式はね外国であげようと思ってて。ね、橋本さんも来てくれる?来てくれたら嬉しいな。」



いつから期待していたのでしょう。

来るはずのない未来に、訪れることのない幸福に、自分はいつまでも酔いしれていた。

「‥‥失礼します。友達が待っていることを思い出したので。」

ぐらりと視界が揺れる。

違うでしょ、分かっていたでしょう。

「‥‥どうかお幸せに、」

なんとか絞り出した声はがさがさで、みっともないなと思いました。


トイレに駆込み嗚咽する。

数年振りに自分から生まれた花はとても綺麗でした。

「っふふ、マリーゴールド。あはは‥」

醜い。なんておぞましい。

まだ、まだ好きなんですか。

もう、わかったでしょう。

もう、十分でしょう。

恋い焦がれるのはこんなにも‥‥

「‥‥痛いです」


「‥あなたはいつまでも変わらない。」

その笑顔も優しさも強さも。

あなたが好きみたいです。

告げることのないこの思いは、この花のように枯れてくれますかね。






問い 恋を10文字以内で説明せよ。

解答 叶わないもの。




そんなものでしょう。恋なんて、




花言葉

ピンクのポピー→恋の予感

マーガレット→恋占い

マリーゴールド→変わらぬ愛

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