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人形は町を迂回する
どれだけの時間を歩いていたのでしょう。いつの間にやら辺りの木々は野原に変わり、小さな町が見えてきました。
見た事は無くても、聞いた事のある町でした。床に伏せた彼女が時々苦しそうに漏らす話の舞台、そのひとつです。
人形には心などありません。だから怒りを覚えたりすることも、不快に思ったりすることも、そんな事は決してありません。
ある筈が、あっていい筈が無いのです。だって、"ソレ"は彼女に作られた人形なのですから。
「…………………」
でも何故か、町の明るい様相を眺めると、思考が揺さぶられてモヤモヤと霧がかった違和感を覚えます。
これは、何だろう…不思議そうに悩む人形は、結局その不具合について考える事を止めました。彼女に教えて貰っている事以外には、何も知らないのです。
人形は何となく町を迂回する事にしました。