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紫苑

作者: 甘月 撓折

あなたは覚えていてくれますか

忘れることは怖いこと

楽しかった記憶も

嬉しかった記憶も

どこかへ消えてしまう


忘れられることは怖いこと

最初からいなかったかのように

私という存在ごと

やっぱりどこかへ消えてしまう


忘れたいこと

忘れられたいこと

そればかりがいつまでも残って


忘れたくないこと

忘れられたくないこと

そんなのはすぐに消えてしまう


忘れることは怖いこと

自分のこと

友達のこと

使い古された鉛筆みたいに

何処にあるのか

わからなくなっていく


忘れられることは怖いこと

私の声

私の話

旧友からの手紙のように

何処にあるのか

不確実なものになっていく


忘れたかったこと

忘れられなかったこと

そればかりが私を苦しめて


忘れたくなかったこと

忘れられたくなかったこと

そんなのはもう


何処かへ消えてしまった

忘れたくないこと

それはきっと大切なこと

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