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生徒会長としての思い出


 

 十二月十一日、今日は月学の生徒会選挙の日だ。今まで生徒会役員という肩書を持っていたローラ会長や一番先輩達がその重責から解放される日でもある。


 本来ネブスペ2原作だとローラ会長関連の中々に難解な選択肢が立て続けに出てくる日でもあるのだが、そんな今日を迎える前、昨夜は再びテミスさんやミールさんが俺や夢那の元を訪れた。原作で朧が死亡するイベントが起きる十二月二十四日までとうとう二週間を切ってしまったのだ。

 しかし、結局事故の被害者になりうるメルシナをひたすら足止めするしかないという力技しか出てこないまま昨夜はお開きとなった。


 『二年一組の烏夜朧さん。至急生徒会室に来るように』


 昼休みを迎えた直後、突然一番先輩の校内放送が響いた。クラス全員の目が俺の方に向いたが、俺にとってはちんぷんかんぷんという感じだ。

 え? 俺何か悪いことしたか? ちょっと思い当たることが多すぎてどれかわからない。


 「朧っち、何か悪いことしたの?」

 「どれのことだろう……」

 「こいつ一度警察にしょっぴいた方が良いだろ」

 「これはあれだね、朧のことが恋しくなった会長さんが呼び出したんだよ」

 「は、白昼堂々お戯れを……!?」

 「いやだとしても校内放送で呼び出さないでしょ」


 なんて冗談を言い合っていたが、俺は内心ビクビクしながら生徒会室へと向かった。今日は午後に生徒会選挙もあるし、それに関係した話でもあるのだろうかと想像しながら生徒会室の扉を開いた俺は──そこに集合していた面々を見て息を飲んだ。


 「早かったわね」


 まず、入口から正面奥にある席に座るローラ会長。両脇には副会長である一番先輩とオライオン先輩が。

 しかし今集まっている生徒会役員はその三人だけで、他に集まっていたのが──。


 「なぁローザ、お前ってケーキばかり食べてるから汗とかも甘いのか?」

 「ドセクハラやめなさいよ」

 「ロザリアの髪の毛は甘い味がしたよ」

 「アンタ、食ったことあんの!?」


 ローラ会長から見て右手の縦に並んだテーブルの席に座って談笑しているレギー先輩、ロザリア先輩、クロエ先輩の三人。そしてその向かい側には──。


 「ねぇ、いい加減リゲルの作ったおにぎり、私にも食べさせてよ。メチャクチャ上手いってベラが言ってたし」

 「私が作ったおにぎりを捧げるのはお嬢様だけです」

 「おにぎり程度で? 何味でもいいからさ」

 「では泥団子味で」


 オライオン先輩のゲーム仲間である碇先輩、そしてオライオン先輩の従者である銀脇先輩が座っていた。彼女達の前のテーブルには、ここが学校の生徒会室とは思えない程の豪勢な料理が並んでいて、各々が思い思いに好きな食べ物を食している。

 同じく三年生であるシャウラ先輩の姿こそないものの(今日登校しているかも怪しいが)、ネブスペ2第三部の登場人物の殆どがこの生徒会室に集結していた。この壮観な面子に俺は圧倒されていたが、そんな俺を見てローラ会長はフフッと微笑んで口を開いた。


 「何を素っ頓狂な顔をしているの? ほら、私の隣に座りなさい」

 「へ? これ何の集まりですか?」

 「見てわからない? 皆でただ昼食を食べようと言うだけよ」


 もうすぐローラ会長は生徒会長という肩書を失う。それは一番先輩やオライオン先輩も一緒だ。

 どうも三年生として何か思い出を残したかったようで、わざわざシャルロワ家やオライオン家の料理人を呼んでちょっとしたパーティーをしているらしい。

 最近はスピカ達からのお弁当も貰うのを断っていたため昼食は自分かあるいは夢那が作った弁当とかたまに購買で何か買っていたぐらいだったが、今日も冷え込んでいるし温かい料理を食べられるなんて贅沢だ。いや、でも何で俺?


 「ローラ会長。どうして二年の僕をお呼びになったんですか?」

 「私の恋人だからに決まってるでしょ?」

 「そうですか」


 ネブスペ2原作でもこういうイベントは起きるのだが、その場に朧は同席していなかったはずだ。この三年生がワイワイしている空間に二年生が一人だけいるのおかしいでしょ。

 これもやはり、俺がローラ会長と付き合ったことによる影響か。


 

 俺はお言葉に甘えて料理を小皿にとって、まるでホテルのビュッフェのような豪華な洋食を頂いていたが、やはり何だか落ち着かない。

 つい先日、ローラ会長やロザリア先輩達の叔父であるトニーさんが警察に連れて行かれ、彼がネブラ人の過激派のリーダーでありビッグバン事件の真犯人だという噂はこの生徒会室に集まっている面々も耳にしているだろうが、一番先輩やレギー先輩達はそんな噂なんて気にしないのだろう。

 少なくとも、今ここでそれを話題にしようとする人はいないはずだ。


 「ローラももう会長じゃなくなるのかー。大学とか行ったら学長とかになんのか?」

 「いや下剋上過ぎるだろ。コイツは当然のように首席にはなってるだろうが」

 「あ、なら寮のある大学に行って寮長とかになれば良いんじゃない?」

 「じゃあベラは一日ゲームは一時間までね」

 「うそー!? ……って、いや別にわわわ私には関係ないけどね!?」


 レギー先輩がローラ会長達とワイワイしている姿を見ると安心できるが、やっぱオライオン先輩、ゲーマーなのバレてるじゃん。多分一番先輩はまだ知らないだろうけど。

 

 「お嬢様に会長という肩書は似合いませんね。勇者パーティーで例えるならば、パーティーのお荷物の幼馴染で実は両思いだったけれどハイスペック勇者に食われるヒロインポジですね」

 「ひどくない?」

 「その場合、リゲルも勇者に食われるのかい?」

 「私は勇者に幼馴染を寝取られたお荷物側ですね」

 「君はそれで良いのかい?」


 いやそれ実はお荷物扱いだった奴が縁の下の力持ちで、そいつが抜けたパーティーがどん底に落ちるやつじゃねーか。


 「オレをそういうのに例えたらどうなるんだ?」

 「レギーはカジノとかにいるバニーガールじゃないかな」

 「うそだろ」

 「そして恋愛にはウブと」

 「ウブは余計だ!」


 レギー先輩って結構顔が広い。第一部だとヒロインの一人として登場するが、第三部だと舞台が三年生に映るため、こちらでも登場回数が多い。何なら全員と知り合いだし、ローラ会長の親友という中々に貴重なポジションだ。

 前は結構俺にラブコールを送ってくれていたが、レギー先輩自身は舞台や映画の稽古に忙しく結構疎遠になってきたし、何より俺とローラ会長が交際関係にあることを知っているから以前の関係に戻ったような気がする。少し寂しく感じられるが、後腐れもないようで良かった。むしろ俺の方が未練タラタラかもしれない。


 

 「ロザリア。アストルギーだからこのアワビ食べて」

 「アワビなんてあるのね」

 「ロザリアのにそっくり」

 「何言ってんのアンタ」


 さて、一方でこの空間に残る二人。ローラ会長の腹違いの妹達であるロザリア先輩とクロエ先輩は隣同士で普通に食事している。前にこの姉妹間で言い争いをしていたのも見たから俺は気が気でなかったが、流石にシャルロワ家に関係ない人間がいるところではやはり口論なんかはしないようだ。二人共、ローラ会長に話しかけようともしないし、ローラ会長もまるで彼女達が存在しないかのように振る舞っているが。


 「ちなみにロザリアとレギーってどっちが大きいの?」

 「急に何の話よ」

 「オレだな」

 「待ちなさいレギー。いくらなんでも貴方に負けているとは思ってないわ」

 

 何の話だこれ。クロエ先輩、絶対アワビから変なの想像してるだろ。部位が上に行っただけで。


 「ね、ねぇリゲル。あれ何の話?」

 「少なくともお嬢様は大きいので大丈夫ですよ。私には劣りますが」

 「何かはわからないけどリゲル、貴方私に失礼なこと言ってない?」

 「はて、一体何のことでしょうか。お嬢様は何のことだと思われます?」

 「……それは言わないけど」


 まぁこの際俺も何が大きいのかあえて伏せておくが、確かにオライオン先輩か銀脇先輩のどちらかだとは思う。次いで碇先輩やクロエ先輩で、後は熾烈な争いが……ローラ会長も含めて。


 「じゃあ明星に決めてもらおうぜ。明星、オレとローザのどっちが大きいと思う?」

 「まぁ器が大きいのはレギーだろうな」

 「わかったわ明星、今日帰り道に気をつけておくことね」

 「フッ、辻斬り程度に負ける気はしない」

 「何だその自信」


 何か一番先輩が軽く回避してる。結構猥談とかするんだなこの人達。ローラ会長はただ微笑ましそうに眺めているだけだけど。


 

 何か変なことが起きないかと俺はヒヤヒヤしていたが、普通に皆でワイワイしながら昼食の時間はあっという間に過ぎていった。結局緊張であまり美味しい料理を食べることは出来なかったが、シャルロワ家の使用人達が料理を片付けて集まって面々も各々帰っていった頃、生徒会室には俺とローラ会長だけが残っていた。


 「私がここを自由に使えるのも今日までよ。来週にはただの部外者になるわ」


 今日の午後に生徒会選挙が行われ、土日を挟んで月曜日に新たな生徒会長の就任式が行われるはずだ。

 その時には俺もローラ『会長』ではなくローラ『先輩』と呼び方を変えるだろう。前世の俺にとっては殆ど生徒会長だったからそのイメージが抜けないが。

 

 「名残惜しいですか?」

 「そうね。ベラや明星君を顎で使うことが出来たのは楽しかったわ。でも生徒会長という仕事自体は嫌いだった」

 「そうなんですか?」

 「えぇ。疲れるじゃない、こういうリーダーという責務は」


 チームをまとめるリーダーという立場にある人間は部下の面倒を見ないといけないし、その失敗の責任を取ったり尻拭いをしなければならない。社会においても上の立場になればなるほど部下が増えるから、何かの失敗でボーナスも減っていくもの。

 ローラ会長にはトップという地位は相応しいように思えるが……彼女自身はそんなに強くない。


 「さて、いよいよ選挙ね。貴方のお友達が出るのでしょう? 彼女達がどんな話をするのか興味があるわ」

 「は、はは、そうですね」


 今回の立候補者は二人。第一部のヒロインであるスピカとムギだ。まぁ原作通り進むならばスピカが次期生徒会長となるのだが、選挙前の演説でムギが語る内容はちょっとなぁ……ローラ会長に聞かせたいものではない。


 もうそろそろ昼休みが終わるというタイミングで俺もローラ会長と一緒に生徒会室を出ようとしたのだが、扉を開けようとしていたローラ会長の体が突然ふらついた。


 「あっ……」


 彼女は頭を押さえてフラフラとよろめくと、そのまま力なく床に倒れそうになっていた。


 「ろ、ローラ会長!?」


 俺は慌ててローラ会長の体を支えてローラ会長の名前を呼んだが、彼女の顔色は悪く頭を押さえて苦しそうにしていた。

 

 「ご、ごめん、なさい……」

 「す、すぐに保健室に行きましょう!」


 そのままローラ会長をお姫様抱っこのように抱えると、俺は階段を駆け下りて大急ぎで保健室へと向かったのだった。



 少しでも面白い、続きが読みたいと思ってくださった方は是非ブックマークや評価で応援して頂けると、とても嬉しいです!

 何卒、よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ヒロイン最胸はいったい。 普通にベガ? [一言] スピカたちが演説しているシーンとかほしかったです。
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