前作ヒロイン大集合
ネブスペ2の登場人物の名前が宇宙の天体をモチーフに名付けられているように、初代ネブスペの登場人物は太陽系の惑星をモチーフに、モブキャラはその惑星の衛星をモチーフに名付けられている。
主人公である天野太陽はその名が表す通り太陽モチーフのキャラで、まぁ物語の中心である主人公=太陽系の中心みたいな考え方なのだろう。見た目は好青年っぽい和やかな雰囲気で、ちょっとナヨナヨしさも感じられるかもしれない。いかにも人畜無害そうな人間だが、作中でヒロイン達が理不尽な目に遭うとかなりの憤りを見せて強大な相手に立ち向かおうとする。月学の在籍時は成績も良く品行方正で、それほど目立ちはしないが良く出来た人間だった。
まぁ、それは表向きの長所だけ見ればの話だが。
初代ネブスペもネブスペ2同様に美少女ゲーム、もといエロゲである。そんなゲームの主人公として生まれてきた天野太陽は一見優等生っぽく見えて実は中々のスケベ野郎で、例えば演劇部に所属していたコガネさんから衣装の採寸を手伝って欲しいと頼まれたときにはドサクサに紛れて胸やお尻を揉んだり、病床のナーリアさんの性欲処理を手伝おうかと提案して実際に手伝ったり、レギナさんから写生に行こうと言われたときにはその同音異義語である愚かな行為をレギナさんに見せつけたり……あんな人畜無害そうな見た目からは考えられないぶっ飛んだ行為を、プレイヤーの選択関係なしに実行してしまう野郎だ。
ある意味エロゲらしい主人公だが、初代ネブスペの時系列はビッグバン事件の直後ということもあり、大変な境遇にあった。
そんな天野太陽にはカグヤという天真爛漫なネブラ人の幼馴染がいて、交際関係にあったのだが……月学の三年次にビッグバン事件が発生し、太陽は助かるもののカグヤは彼を庇って死んでしまう。
カグヤを失った太陽が悲しみに打ちひしがれている中で月学に転校してくるのが、死んだはずのカグヤに瓜二つの少女、ブルー・マーブルだ。カグヤに瓜二つのため太陽は彼女が幽霊になって現れたと驚くのだが、ブルーは天真爛漫なカグヤと違って誰にも心を開かず孤独な学生生活を送っていた。
そんな中、地道にブルーとのイベントを進めていくと、ブルーはカグヤと生き別れの双子の姉妹ということが明かされるのだ。ブルー本人の攻略はそこまで難しくないが、どうしても彼女とカグヤを照らし合わせてしまう太陽の苦しみっぷりがヤバく、彼の方がダメージを負っていた。
「へぇ~あの月面基地のロケットの開発に携わってるなんて凄いです!」
「別に責任者ってわけじゃないけど、誉れ高い仕事が出来て光栄だよ」
「のぞみん所長にも手伝ってもらったけどね」
「私はロケットの作り方とかわかんないけど、ちょっとした計算を手伝っただけよ。あとのぞみんって呼ぶな」
この世界でコガネさんやレギナさんと出会った時は感動したが、その時から世界観を共有している初代ネブスペのキャラ達もどこかにいるのではと思っていた。中々会えなかったが、こうして主人公である太陽……太陽さんと呼ぶべきか。そしてメインヒロインであるブルーさんと出会えて感動している。
「ちなみにお二人って結婚されてるんですか?」
「そうだよ、月学で出会ってね」
「私も結婚式行ったわ。なんか有名人がいっぱいだったけど」
「私達の同級生、目立ちたがり屋が多いから……」
そう言って太陽さんとブルーさんは苦笑していた。確かに同級生の中に女優と世界的芸術家とシンガーソングライターとコスプレイヤーと医者と警察官と霊能力者がいるからな。霊能力者だけ異質過ぎるだろ。
望さんは二人の大学の先輩らしいが、結婚式に呼ばれるぐらいには関係性あるのか。全然知らなかったし意外だ。
俺達が談笑している中、ローラ会長はニコニコと微笑んでいるだけで会話に混ざろうとしなかったが、そんな彼女に太陽さんが声をかけた。
「そちらは……エレオノラさんだね。お久しぶり、ティルザさんはお元気?」
「父は今も目を覚ましませんが、お気になさらず。博士達は仲睦まじいようで何よりです」
「ハハ、それほどでもないよ」
そう言ってローラ会長と太陽さんはニコニコと笑っていたが、そんな和やかな雰囲気は感じられなかった。
初代ネブスペにおいてシャルロワ家は太陽さん達にとっては敵のような存在で、かなり嫌っていたはずなのだが……よくこんな笑顔で話せるものだ。まぁ今も怨恨があるわけではないだろうが、初代ネブスペもプレイした俺にとってはかなり違和感のある光景だった。
そんな場面に俺が一人怖がっていると、月見山の展望台へと向かう登山道の方から、サングラスやマスク、帽子で変装しているが隠しきれない芸能人、いや目立ちたがり屋のオーラを放っている三人の姿が。
「……え、天野君!?」
「ブルーもいるじゃん!?」
「まさかこんなところで会えるなんて……」
サングラスを外して太陽さん達の姿を見て驚いたのは、コガネさん、ナーリアさん、そしてレギナさんの三人組。彼女達も初代ネブスペのヒロインで、太陽さんやブルーさんと同級生だ。
「あぁ久しぶりだね、コガネにナーリアにレギナ。サイン頂戴」
「サインが欲しけりゃ同窓会しようや」
「そーだそーだ」
「どうして天野君は同窓会に来ないんだい?」
「いや忙しいんだって」
「ブルーと[ピーー]するのが?」
「シラフでそういうことを平気で言える連中と酒を飲みたくないんだよ」
いや太陽さん、アンタもシラフの時にやべーこと言える側の人だろうが。確かに酒に酔ったコガネさんはかなり面倒くさそうだけども。
「相変わらず元気ね、コガネ達は。この前のドラマ見たよ、あんな純粋そうな女の子の役出来るんだ」
「そりゃ女優だからね」
「コガネは普段気丈に振る舞ってるだけの処女だよ」
「そうね」
「そうねじゃないよ! 天野君が私を振ったからでしょーが!」
「貴方は私に負けたってわけ、コガネ」
「うがーっ! ブルー! アンタだけでも今日はホテルに連れてくわ! 天野君をハブって同窓会しましょ!」
元気だなこの人達。何だか月学を卒業してそれぞれが別の道に進んでいても、こうして再会すれば昔のようにバカみたいな話を出来る関係、ちょっと羨ましい。俺も初代ネブスペをプレイしたことがあるから、こういう光景を見られると感慨深い。
と、太陽さんやコガネさん達は久々の再会で話が弾んでいるようで、そんな光景を望さんやトニーさんが仲睦まじく眺めている中、やはりローラ会長は貼り付いた笑顔を作って黙っていた。
「あ、夢那ちゃんも元気してる?」
「はい。その説はありがとうございました。今は兄さんと一緒に楽しく暮らしています」
「へ? アンタ達ってコガネ達と知り合いなの?」
「うん、そうだよ。望さんも知ってるの?」
「いや有名人だから知ってるってだけで、会うのは初めてよ」
「どうも所長さん。朧君達のお姉さん?」
「あらやだ、お姉さんだなんて上手ね」
「じゃあお母さん?」
「誰がお母さんよ、私はそんな年いってないわよ!」
「急にキレるじゃんこの人」
コガネさんとナーリアさんは、両親が事故死した直後の元気を失っていた夢那を励ましてもらったこともある恩人だ。一流芸能人のはずなのに何だか接しやすいんだよな、この人達。
「ちなみにコガネさん達は何かお仕事で?」
「いや、昔の知り合いに呼び出されてさ。まだ来てないけど……」
すると、月研の敷地の入口の方からこちらへやって来る人影が三つ。コガネさん達と同じ初代ネブスペのヒロインであるレイさん、アクアたそ、そしてミールさんの三人だ。レイさんとアクアたそは普通の私服なのにミールさんだけ風貌が完全に魔女なの、世界観が狂ってる。
「あれ、レイにアクアに……き、君はミール!? ミールなのかい!?」
「生きてたの!?」
「前に霊山の奥地で行方不明になったって聞いてたのに……!?」
「いや、テレパシーで送ったでしょ、私が無事だっての」
「テレパシーで送られてくるから怖いんでしょ!?」
テレパシーとか送れるんだ、ミールさん。普段は何か霊山の奥地に住んでるらしいから、ほぼ音信不通なんだろうなぁ。
コガネさん達はミールさんがやって来たことにかなり驚愕していたが、太陽さんは笑顔を崩さずに彼女達に語りかけた。
「久しぶりだねぇミール。昔はシャーマンみたいな格好してたのに今は魔女っ子になったの?」
「ちっちっち。違うよ天ちゃん。今のウチは魔法少女ミールちゃんってわけ。ウチも有名になったコガネっち達にあえて感謝感激飴甘いって感じ~」
「レイは今もコスプレしてるの? 今は誰のコスプレ?」
「ネレイド・アレクシスのコスプレだよ~ん」
「アクアも今はお医者さんなんだろう? 懐かしいね、昔一緒にお医者さんごっこしたの」
「私は貴方にされたことを一生忘れないけどね」
いやアクアたそに何したんだよ太陽さん。
それはさておき、なんと初代ネブスペの主人公やヒロインがほぼ勢揃いしているという状況で、俺としてはかなり圧倒されているというか、一種の感動すら覚えている。
惜しくもあと二人ほど来ていないが、それに気づいたのかブルーさんが残念そうに口を開く。
「それにしても、せっかくこれだけ集まったのだからマルス達も来たら良かったのに」
前にノザクロで出会った警察官、マルスさんともう一人、俺がまだ出会えていないヒロインがいる。本当はその二人を含めてあと三人残っているが、一人は死んでいるからノーカンか。
するとアクアたそが周囲をキョロキョロを見回しながら口を開いた。
「いえ、私達はマルスに呼ばれてここに来たのよ。でもイベントは終わってるみたいだし、どうしてここに……」
マルスさんが、この面子をここに集めた?
なんだろう、久々に同窓会でもしたかったのかな。なんて俺が軽く考えていると……彼女達を呼び出した張本人がやって来た。
どこからともなく流れてくる、メガネをかけた某少年迷探偵のテーマと共に、月研の入口の方からいかにも探偵っぽいブラウンのコートと帽子も身につけた女性がスケボーに乗ってやって来た。
「私はジュリエット・アレクサンダー、探偵さ!」
ひと目見てわかった。
この人バカだ。
「見た目は探偵、頭脳も探偵、その名は──」
いやアンタ最初に名乗ってたでしょ。
彼女は決めポーズを取りながら華麗にスケボーを乗りこなしていたが、コンクリで舗装されているわけでもない月研の敷地にあるちょっと大きな石に乗り上げてしまい、俺達の元へ辿り着く前に盛大にずっこけた!
「わああああああああああああああああああっ!?」
ギャグ漫画かってぐらいわかりやすくこけた彼女の元に、後ろからマルスさんが慌てた様子で彼女の元に駆け寄った。
「じゅ、ジュリエット!? 大丈夫か!?」
「し、真実は、いつもひとつ……うぐっ」
「ジュリエットおおおおおおおおおお!?」
……。
……俺達は一体何の寸劇を見せられているんだ?
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