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女医と女刑事



 俺が風邪を治している間に修学旅行は終わり、十八日の振替休日、俺は大星達と一緒に海岸通りにある喫茶店ノーザンクロスに集合していた。


 「これが二条大橋を渡りながらイチャイチャしてる大星と美空ね」

 「鴨川でデートすると別れちゃうみたいなジンクスあるらしいけど大丈夫?」

 「でもその後金閣寺の前でキスとかしてたから」

 「神聖な寺院でイチャイチャするなんて中々の不届き者だね」

 「待て、なんで殆ど俺と美空の写真しかないんだ」


 俺は生憎風邪を引いてしまったため大星達と修学旅行に行くことは出来なかったが、こうして思い出を共有するために色々な写真を俺に見せてくれていた。殆ど大星と美空がイチャイチャしてる写真なんだけど、修学旅行をハネムーンと勘違いしてやいないか?



 「こっちは奈良の大仏ね」

 「ムギちゃんが大仏のモノマネしてる……」

 「んでこっちは奈良公園のシカに執拗に追いかけられてたスピカね」

 「写真を撮る前に助けてあげなよ」


 何かスピカが数頭のシカに追いかけられて逃げ惑う姿が写真に収められている。俺はもっと和やかな光景を想像してたんだけど。


 「一体何でこうなっちゃったの?」

 「私も普通に鹿せんべいをあげてただけなんですけど……」

 「スピカが何か独特のフェロモンを発していたに違いないね。スカートをめくられたりしてたし」

 「逆に大星は鹿せんべい持ってたのに逃げられてたからね」

 「美空は鹿せんべい食ってたけどな」

 「結構美味しかったよ」


 京都、奈良と続いて最後は大阪だ。まず大阪市内を散策して本場の粉ものを堪能している写真がいくつかあったが……美空だけちょっと盛り方のスケールが違う。一人だけどか食いチャレンジしてるじゃん。

 そして最終日はいよいよU◯Jだ。某大作ファンタジー小説に登場する魔法学校の学生達みたく黒いローブを羽織った大星達が楽しんでいる姿が写真に収められていたが……そんな写真の片隅に洋風なファンタジーには似合わない日本人形の姿があった。


 「え、何この日本人形」

 「あぁそれ、禁じられた呪文をずっと唱えてたやべー人形だよ」

 「最初はこういうキャストなのかと思ってたけどいつの間にか消えてたよね」

 「MPが切れたとかどうとか喚いてたな」


 ……。

 ……え、それってこの前俺のことを助けてくれた謎の日本人形じゃない? あいつも禁じられた呪文を連発してネブラ人の過激派をぶっ倒していって、MPが切れてま◯うのせいすいがほしいとかどうとか言ってたけど、あいつデフォルトだとU◯Jにいるの?

 そして大星達からは関西のお土産も貰った。全員揃って木刀だったため、俺の家には謎の四本の木刀が飾られることになった。無駄すぎる。



 その後はノザクロのマスター達とも談笑しながらスイーツを食べて過ごしていたのだが、そんなノザクロに来客が。


 「やぁマスター、久々ね」

 「オー、これはドクターにポリスメンじゃないか!」

 「私をポリスメンと呼ぶのはやめてほしいね」


 やって来たのは長身で茶髪ショートに黒い眼鏡をかけた、葉室総合病院に勤める医師であり初代ネブスペのヒロインであるアクア・パイエオンと、もう一人……赤毛混じりの長い黒髪に赤いカチューシャをつけた、背中にデカデカと『正義』とかかれたライダースジャケットを着た女性が。

 いや、何そのクソダサいジャケット。背中に正義を背負うのが許されてんの海軍大将ぐらいだろ。


 「あ、朧君とその愉快な仲間達じゃない」

 「朧っちの病院にいた美人女医の人だ!」

 「A◯のパッケージに載ってそうな雰囲気だよね」

 「いつぞやはお世話になりました、アクアたそ」

 「今度その呼び方したらホルマリン漬けにするわよ」


 なんで俺は頑なにアクアたそ呼びを許されないんだろ。レイさんとか初代ネブスペのヒロインの面々は結構アクアたそって呼んでるはずなんだけどなぁ。

 にしてもアクアたそが着ているシャツに目が行ってしまう。だって白地にデカデカと『命』って書かれてるんだもん。いや確かに医師という職業は患者に命を託されているかもしれないが、そのデザインはダサすぎるだろ。

 さて、それにも負けない正義のジャケットを羽織っている女性がアクアたその隣にいるわけだが。


 「そちらの方は?」

 「あぁ、君とは始めましてだね。私はマルス・クライメイト、しがない刑事だよ」

 「け、刑事!?」

 「女刑事とは、またA◯のパッケージに載ってそうな職業が……」

 「ムギちゃん、それも風評被害になるからやめときな」


 まぁ俺は彼女の容姿で何となく誰かはわかってたけどね。

 マルス・クライメイトはアクアたそ達と同様に初代ネブスペのヒロインの一人で、確か火星がモチーフのキャラだ。月学在籍時には薙刀部に所属しており、そして風紀委員長として恐れられていた中々の武闘派。まぁ初代ネブスペをプレイした紳士達からはムッツリ風紀委員マルちゃんって呼ばれてたがな。


 「葉室警察署に勤務されてるんですか?」

 「いや、今は都心の方の警察署にいてね。刑事と言っても私はまだまだひよっこだよ」


 ネブスペ2の作中では月ノ宮、葉室、そして修学旅行の行き先である関西ぐらいしかはっきりと地名が明らかにされないが、まぁ都心というのは東京を指していて警視庁に勤務してるって認識で良いのか?

 風紀委員がそのまま警察官になるってことあるんだ。まぁ背中に正義背負ってるぐらいだし正義感が強いのだろう。


 「今日は休暇なんですか?」

 「アクアは休みだけど、私は仕事で月ノ宮に帰ってきたんだよ。もしかしたら君達にも関係する話かもしれないね」


 余っていた椅子を持ってきてアクアたそとマルスさんは俺達のテーブルに向かい、マスターからブレンドコーヒーを貰って一息ついてから話し始めた。



 「実は最近、都心の方でネブラ人を主体とした怪しい組織の摘発が続いていてね。もっぱら反社会的勢力とやっていることは変わらないけれど、どういうわけか彼らはビッグバン事故の真相について追っているらしいんだ」


 ビッグバン事故。

 その言葉が出てきただけでこの場の空気が引き締まる。俺や大星達ネブスペ2の登場人物だけでなく、初代ネブスペの登場人物であるマルスさんやアクアたそもあの日の大爆発に巻き込まれているからだ。

 大星達の表情には多少の動揺も見られたが、そんな中スピカが口を開いた。


 「し、真相とはどういうことですか? あれは宇宙船のエンジンの故障が原因だったのでは?」

 「公にはそう処理されているけれど、どうしてもそこに陰謀めいたものを考える連中もいるということさ。全部を疑う人生なんて生きづらいからね」


 悲しいことに、六月にこの月ノ宮で広まっていたビッグバン事件の真犯人の噂について誰もが忘れてしまっている。その真犯人と噂されていた秀畝さん含め朽野一家がこの世界から消失してしまったからだが……。


 「ただ、私達がしょっぴいた連中の言い分を聞いていると、それが与太話に聞こえなくなってね。こっちの所轄は信用できないから私達が馳せ参じたという次第さ。どこもかしこもシャルロワ家の息がかかっているからね、私の同僚もシャルロワ家に消されるんじゃないかと怯えているけれど、私は学生時代にシャルロワ家に喧嘩を売ったから怖いものはないよ」


 初代ネブスペにおけるシャルロワ家の立ち位置って完全に敵役だったからな。ネブスペ2が発表された時にシャルロワ家のヒロインが登場すると判明して大層驚かされたものだ。

 まさかビッグバン事件の調査にわざわざ遠くから刑事がやって来るとは驚いたが、マルスさんが言うように月ノ宮周辺はほぼほぼシャルロワ家の支配下にあると言っても過言ではない。ビッグバン事件にシャルロワ家が関わっているのではという噂も出回っているが、それを語るのは月ノ宮ではタブーだ。


 「君達もあの事故で辛い経験をしたかもしれない。でももし何か知っていることがあれば私に教えてくれると助かるよ。連絡先は伝えておくし私もこの冬の間はここら辺で仕事をしているから気兼ねなく呼んでくれたって構わない」


 マルスさんは俺達と電話番号やLIMEの連絡先を共有してくれた。LIMEのアカウントの写真がパトカーなんだけど、どんだけ正義感強いのこの人。



 マルスさんは一先ず聞き込み調査を続けるため、アクアたそを残してノザクロを退店した。その後はアクアたそを混じえて時折月学に出没する謎のロリババアこと理事長のシロちゃんについて談義していたが、俺は何となくマルスさんのことが気がかりだった。

 


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