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乳搾り体験(意味深)



 とある恋愛ゲームを例に出せば、複数人いるヒロイン達と一通り親睦を深めてから誰か一人に絞って攻略しようとしても、爆弾なるものが大爆発を起こしてヒロイン全員の好感度が爆下がりするというシステムもある。それが嫉妬心によるものなのか単純な悲しさによるものなのかはわからないが、もしそのシステムがネブスペ2にも実装されていたら、今頃俺はスピカやワキア達を始めとした第一部、第二部のヒロイン達から空爆されて骨も残っていなかっただろう。


 そして第三部のメインヒロインであるローラ会長は第三部が始まると同時に一番先輩を無理矢理恋人にして、段々話が進んでいくと嫉妬心が激しくなって暴れ出すからかなり取り扱いが難しい。他三人のヒロインのルートに入ってちょっと失敗するとすぐにローラ会長が殺しにくるからね。

 だから俺はローラ会長のご機嫌を伺いつつ、ロザリア先輩達三人のヒロインがちゃんと一番先輩とのイベントを起こしているか適度に観察しなければならない。まぁ対策は簡単で、観察するだけなら夢那に手伝ってもらえばいい。何故か俺がイベントに巻き込まれてることもあるが、それは原作通りなのでしょうがない。


 さて今日は、放課後にワキアや夢那と一緒に葉室市の郊外にある牧場を訪れていた。牛や羊など様々な動物が飼育されているが、そういった動物と触れ合いに来たわけではなく、今日は無事元気になったワキアが久々に乗馬したいとのことで俺や夢那も一緒にジャージに着替えて乗馬体験をさせてもらえることになった。


 「ど、どうどう、どうどう」


 馬の鞍に跨ることは出来たが、この独特の揺れの感覚はすぐには慣れないし、突然馬が暴れるんじゃないかという恐怖心も若干あって俺はかなり体を震わせながら手綱を握っていた。

 そんな俺を見て、側にいた係員さんだとかワキアや夢那は大爆笑していた。


 「だいじょーぶだって烏夜先輩。この子達は大人しいからさ~」


 久々に乗馬したというワキアは全然余裕そうで、何か芦毛の馬に乗ってるから様になってるんだよなぁ。


 「どうかな? もしかしてボク、結構乗るの上手い?」


 一方で夢那も俺と同様に今日が初の乗馬体験のはずなのだが、少し練習しただけで手綱を握り牧場内を馬に跨って駆け回っていた。

 何なのあの妹。


 「凄いよ夢那ちゃん! まるで戦国時代とかの女武将みたい!」

 「敵に捕まった兄上を助けるためにボクが駆けつけるんだね」

 「僕が捕まってる側なんだ」

 「兄上……必ずその首を取りに行きます……」

 「僕の首を取るんだ」


 その後も練習を続けていると、何とか俺も怯えずに馬に乗れるようにはなった。まぁ暴れん◯将軍みたいに駆け回っていた夢那には遠く及ばないが。

 そして何より、ワキアが今も元気そうで良かった。望さんが作った薬で本当に治るのか少し不安なところもあったが、無事治ってくれたらしい。元気な生活を満喫しているワキアの姿を見られて俺も幸せだ。



 そんなこんなで一時間程が経ち、乗馬体験を終えて厩舎の前で馬を眺めていると、突然馬の嘶きが周辺に響いた。

 見ると、何やら興奮してしまった様子の馬が暴れ出して、係員さん達の制止も振り払って厩舎から飛び出してきた!


 「ゆ、夢那!」


 そして暴れ馬が向かう先には夢那がいた。俺は慌てて夢那の元へ向かおうとしたが、夢那と衝突する前に突然馬が立ち止まった。

 見ると、どこからかやって来た白馬に跨った誰かが暴れ馬の手綱を間一髪で握って止めてくれたようだ。そして白馬に乗っていた青髪のショートカットで、俺達と同じく月学のジャージを着たボーイッシュな雰囲気の女性は地面に降りると、驚いて尻もちをついてしまった夢那の元へ向かい、しゃがみ込んで夢那に手を差し伸べた。


 「大丈夫ですか、お嬢さん」


 その様子はさながらお姫様を助ける王子様のような光景で──。


 「エンダアアアアアアアアアアアア」

 「いやワキアちゃん、そのBGMじゃない」

 

 俺もワキアもその幻想的な光景を見て舞い上がっていたが、夢那は戸惑いつつもちょっと頬を赤く染めてモジモジしていた。


 「あ、えっと……あ、ありがとうございます」


 何か妹が恋に芽生えそうになってる。すると夢那を助けてくれた青髪の人は夢那の手を引っ張って立ち上がらせて、夢那に優しい笑顔を向けてさらにはウインクなんかもしちゃって口を開いた。


 「ごめんね、私のせいでちょっと馬が驚いちゃったみたいなんだ。君の名前は?」

 「か、烏夜夢那です」


 以前の夢那は十六夜姓を名乗っていたが、望さんの養子になったことで俺と同じ烏夜姓になっている。

 そしてその名字に聞き覚えがあったのか、彼女は驚いた表情で俺の方を見た。


 「え、もしかしてこの子、君の妹なの?」

 「はい、そうです。最近妹に復活しました」

 「ど、どゆことなの?」

 「これには深いわけが……」


 夢那を助けてくれたのは、月学の三年生でありネブスペ2第三部の登場人物である碇先輩だ。俺達と同じジャージ姿のはずなのに、なんでこんな王子様っぽい雰囲気があるんだこの人は。男装の麗人ってそれはそれで趣があるし。

 なんて話していると、碇先輩の後ろの方から同じくジャージ姿で馬に跨ったオライオン先輩と、彼女の従者である銀脇先輩がやって来て馬を降りた。


 「あ、烏夜君にワキアちゃん。こんにちは、貴方達も来てたんだね」

 「ベラお姉さん達も来てたんだ~さっき夢那ちゃんも馬に乗ってたんだけど凄かったんだよ~」


 そうか、そういえばオライオン先輩って一応乗馬も趣味だったな。ゲームしてるイメージしかなかったけど、これはこれで様になってるのが何ともお嬢様感がある。


 「先ほど碇先輩に妹を助けてもらったんですよ」

 「そうなの?」

 「私がちょっと他の馬を驚かせちゃってさ。まさか彼の妹ちゃんだとは思わなかったよ」

 「へ~可愛い妹さんだね」

 「一年生の烏夜夢那です。何だか先輩方、お姫様みたいですね」

 「それほどでもないよ~」

 「いやワキア、君先輩じゃないだろ」


 まさかオライオン先輩達と出会える気はしてなかったが、何となく出会うような予感はしていた。ロザリア先輩、クロエ先輩と立て続けにイベントが起きていたから。

 だが今回は一番先輩が一緒にいないし、たしか原作だとこんなイベントはまだ起きていないはずだ。一番先輩がオライオン先輩と一緒に乗馬に行くの、結構後になってからだったし。


 「オライオン先輩はよくこの牧場にいらっしゃるんですか?」

 「乗馬が好きってのもあるし、お父様が馬主をやっていて、引退した競走馬の子がこの牧場で乗馬になってるからお世話しに来るんだ~」


 そうか、お父上が馬主なんですね。そんな道楽が出来るレベルって相当だぞ。


 「あ、そうだベラお姉さん、この後一緒に乳搾りとかどう?」

 「お嬢様のですか?」

 「こらっ、リゲル。でもごめんね皆、この後ちょっと明星君と用事があって……」

 「乳搾りの!?」

 「ゆうちゃん、だから違うって!」


 一番先輩がこの後オライオン先輩の……いやいや、オライオン先輩と乳搾り!? 

 いやネブスペ2にそんなイベントはない。多分オライオン先輩と一番先輩が一緒にゲームするイベントかこれは? 俺の知らない所でちゃんとイベントが進んでいるようだ。

 あの人がゲームをしている姿なんて全く想像つかないが。


 

 その後オライオン先輩達と別れて、俺は夢那と一緒にシャルロワ家の車で家まで送られた。今日もやはり望さんは家に帰ってきていないが、夕食や入浴を済ませて二人きりのリビングで夢那が口を開いた。


 「ねぇ兄さん、今のところは順調と考えて良いのかな?」


 夢那が言っているのは第三部のシナリオの進み具合という意味だろう。


 「うん、そうだね」


 今のところ一番先輩は着々とロザリア先輩達とのイベントをこなしている。原作だったら恋人となっているローラ会長からの妨害もなく、一番先輩視点だとかなり平和だろう。

 一方でローラ会長に振り回される俺はこの先どうなるかわからないし、順調というのはあくまで第三部のシナリオ単体でという意味だ。

 まだ、乙女やベガが消失した理由は究明できていないのだから……そんな不安もありながら、二年生としての一大イベント、修学旅行が間近に迫ってきていた。



 少しでも面白い、続きが読みたいと思ってくださった方は是非ブックマークや評価で応援して頂けると、とても嬉しいです!

 何卒、よろしくお願いします!

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