表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰も死なない国  作者: 夜月闇
2/4

監視塔の兵士


      神と奇跡が造れないのなら、科学とは不完全なモノである。





奇跡の人がいる。


その噂は国中を駆け巡った


その王城には、毎日多くの人が殺到した。


王城までは群衆の長い長い行列が続いていく


それも、そのはずである


どんな傷でも、病でも、失調も、死ですら

たちどころに治ってしまうのだから…


今この時、最後尾の者が城の中に入れるようになるには、あと10日はかかるだろう


構わない

たった10日で奇跡が手に入るのだ。



そんな行列を、城を取り巻く城壁につくられた砦造り

その監視塔から、気だるげに覗く2人の男がいた


「は~、人ってのは集まるとホント蟻みたいだね 蟻より規則正しくは歩けねえから 黒い塊がウネウネと、気持ち悪ぃや」


「下で、列の整理に駆り出されてる連中に同情するよ 人に酔いそうだ…」



この2人、なんてことはない


ただのこの城の一般兵である。


雇われであり、生まれも貧しい、騎士としては認められず

雑用ばかりさせられている、武勇からは程遠いふたり


「王様がパレードした時より、圧倒的に人が多いぜ この国にこんだけ人が居たんだな」


「隣国からも駆け付けた人々もいるようだ、難民の大移動を思い出すよ…」



姫様復活のパーティーや城下町での祝祭も盛大に行われたが

その時から、奇跡の賢者様を求める行列は出来ており、こんにちまで膨れるばかりである。



「あれじゃあ、行列の中で人が死ぬぞ まったくウチの王様は無能とまでは言わないが、先が読めてねえ凡人だな」


「馬鹿!誰かに聞かれてみろ、首が飛ぶぞ!!!」


兵士ふたりの中で、マジメな方の男が周囲をキョロキョロと見渡した。


「なあに、そん時は奇跡の力で蘇らせてくれよ」


どちらかといえば不真面目な兵士は飄々と言った


「ああ、行列の中で死んでも一緒か そのまま復活させて貰えるんだから~」


「ん? 城門の辺りの様子が変だぞ 何かあったのか?」


門まで貫いていた行列、しかし そこを界に何やら揉めているようだ

人だかりがそこから分裂し、ふくらみ始めた。


「ようやくか、ったく気付くにしても3日は遅えぜ 我らが王様は姫のことで相当浮かれてたみたいだな」


「どういう事だ?」



「あの王様の事だ、中途半端にまず城門から区切って そこからは有料にしたんだろ 奇跡をよ」


「まさか!」


背が高い方の兵士は、もう一度城門の方を見る

兵士に詰め寄っている者達が、泣きそうな顔で何かを抗議している。



「あのお方は金品など要求しなかったはずだぞ…」


「その力を、実質王様が手に入れた 当然だ、幾らとってもお釣りが来る力だ。 まあ、判断遅いし中途半端だがな、ここはいっきにあの力は民衆には与えない、と独占するべきなのに…」


どちらかといえば、目が鋭い方の兵士がそう言った。


「王は寛大なんだ、お前と違って民衆の事を考えている 優しい人さ」


「そういう問題じゃねえよ、まあ いずれそうなるだろうが…」



そう、王は優しいお人なのだ 金を取られるのは可哀想だが、仕方がないのかもしれない

あの行列が、この先ずっとでは

こいつの言う通り、確かに無料のままでは人々が無限に殺到してしまう

致し方ない…



『おい!お前達!!下に来てくれ! 民衆が騒ぎ始めた! 応援に来い!!』


応援要請だ、これもいずれ来るのは判り切っていた。





悲劇と絶望の足音は、ヒタヒタと

ゆっくりと、確実に迫って来ていました。



「おい、さっきの話だがな…」


「ん?」



「俺が死んでも、絶対に蘇らせるなよ…」


アーオタは、しっかりと俺の眼を見つめて

そう言った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ