奇跡の来訪者
『その奇跡は、ある日突然 齎された_。』
マキニの書 第三章 1節
その者は、突然 その王国領に現れる。
人々の傷を、手をかざすだけで癒し 金色の美しい髪を靡かせながら
颯爽と、金品も受け取る事もなく…
それは、美しい顔立ちをしていた。
白く清らかな、だがボロボロの衣を纏いながら
病気の子供を次々と元気にした
そして、三日前に亡くなっていた その村の長を
蘇らせたのである。
死者の蘇生は、多くの国、多くの世界、多くの宇宙、多くの魔法体系
そして、多くの神々が禁忌として 固く禁じている。
それは一つの真理であり、深理であり、真相であり、呪いであった。
しかし、その者は いともたやすくそれを行ったのである。
それの噂は、瞬く間に国中に広まる
国王に謁見が許されるまで、時間は掛からなかった
国王には、つい先日亡くなった最愛の姫君がいたのだ。
王が、「可能か」
と、問われると
その者は 「はい」
と、答えた。
◇
姫君はその愛らしい姿のまま、棺の中に沢山の花たちと一緒にいました
死化粧で美しく整った、その白い肌に生気が戻っていきます。
長い睫毛がゆっくりと開いていき、一粒の涙が零れます
姫君は、復活されました。
その金色の髪の流れ者は、奇跡の賢人として
王国に、そして王城へと迎えられました。
国中では祭りが催され、人々は祝福しました
それが、この世界の悲劇
始まりの一欠けら、だとも知らずに…