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第3話 時空滑走

「おかしいおかしいおかしい、私はこんなに苦労しているのに、なんでエレメナの奴はあんなに簡単に殿下と仲良くなってしまうのかしら、こんなことが許されていいはずがありません。恨みますはこの世界を、おかしいおかしいおかしい」


 またしても私の感情が大きく揺れ動く、その時崩壊ループの兆候が発生することになるのだった。


「これは、またやってしまいましたね」


 次の瞬間、全ては崩壊のように崩れ去り、目の前には白い砂の砂漠だけが広がるのだった。


「この力は扱いが難しい、もう少し自身の感情を抑制する術を学ばなくてはなりませんわね。ですが私にとってこの世界はあまりにも嘆かわしいことが多すぎるのです。幾たびの世界のパラレルワールドがあるとしたら私はいくつの世界を崩壊へと至らしめたのでしょう。世界はなぜ醜い私なんかにこのループの力を与えたのですかね」


 砂漠の上で一人たたずむ私は、ただそんなことを頭の中で反芻するしかなかった。



「侵食していきます。最初自分の中で衝撃を受けた殿下との出会い、それは時間とともに瞬間的なものではなく緩やかに当たり前のものになっていた」


でもあの女が現れたことにより何気ない当たり前もなくなってしまった。ここからの再び浸食が始まる。


最後の当り前だった時間、殿下が自分に寵愛をくださったあの最後の日を境に時間が侵食していく。


私にとってのその時間がすべてであったはずなのに、それが徐々に侵食していく。私にとっては時間が固定されていて、そして世界はそれがあたりまえではないように知らぬ間に進んでいく、私だけがあの日の中にとどまらされているかの如く。


こんなつらいことがあっていいのかしらね。


「嘘でしょこの状況普段のわたくしではありえないシチュエーションではありませんの。ならばこれから先はどうすることもできません。ただ体を引き裂く思いで突入するのみ、としか言いようがないわけですからね。一気に終わらせてもらいますよ!」


 私は血の雨が降るような道の中をループしながら走り抜けた。体を動かすのは自身の意思だけ、いったん走り出せばもう止めることはできない。体の感覚が抜けて周囲の物理現象も自身には関係のないものとなっているといえたのである。


今が好きなだけにそれが変わってしまうのがつらい。


あとどれくらい走り抜ければ目的地にたどり着くことができるのだろうか。わからないけど、とにかく私は走り続けたのだった。


「はあ、はあ、はあ」


 足がきしむように痛い、体の倦怠感が凄い、無理を押して突き進んだ結果私の体にはじわじわとそのダメージによるむしばみが発生することになったのだった。


「こんなはずじゃなかった」


 それに進んだ先に殿下はいなかった。ここまでの精神的疲労を負ったのに対価はゼロ、こんなことが許されるのだろうか。


「全く……実にくだらないことですわね」


 私の心は萎えと、無気力に襲われた。リスクを負ったのにそれがすべて無駄になったからである。それでも帰り道で拠点に戻らなくてはならない。


 幾多の鮮血が織りなされる中で何度もループしながら歩く、しかし今回違うのは意志が折れているのだ。


 行きでは殿下に会うという強い念の元動き、それによって何度ループしても耐え抜いた私であるが、帰り道はその念というものは消えていた。


全く進まない足、ただループ回数が積み重なる、まるでループができる私にとって外面的ダメージなどは全くの問題とはならない。これは心との戦い、そして私の精神は確実にえぐり取られていくのだった。


「ここはどこ」


 気付けばけば私の自我は消え去った。


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