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「ステラの元気がない?」


 俺の相談に、ジュリエットは目を丸くした。


「ああ。こないだ平民居住区に行ってから、少し様子がおかしいんだ。頻繁に溜め息を吐いていたり、何か考え込んでいたり……昨日は俺が中庭で剣の稽古をしていたのに見学に来なかったんだ」

「なんだって? ステラが? ヒューが剣を振るう度に「斬られる空気になりたい」だの「画家を八人雇って東西南北右上右下左上左下からヒューの姿を画布にとどめたい」だの叫ぶ習性のあるステラが!?」


 ジュリエットが驚愕した。俺自身にも何故かはわからないのだが、ステラは本当に俺のことが大好きなのだ。賞賛を浴びせる機会は絶対に逃さないとでもいうように息するように俺を讃えてくる。


「確かにそれはおかしいな……ヒューに関すること以外でステラがそんなに悩むなんて……」

「どうも、平民の暮らしというか、平民の間で病が流行るのを心配しているようなんだ。「清潔と栄養」が大切らしいんだが、平民の暮らしではそれが実現できないと嘆いていた」


 心優しいステラは平民の暮らしを見てショックを受けていたようだ。

 なんとかしてやりたいが、俺には何も……


「ふふふ……話しは聞かせてもらったぞ」


 突如、不気味な声が響いた。


「誰だ!?」


 振り向くと、教室の壁の一部が不自然に動いた。


 白い壁に張り付くように立っていた王子が、全身を隠していた白い布を横にずらして姿を現したのだった。


「ふふふ……気づかなかっただろう。これぞ、王家に伝わる『姿隠しの術』!」

「な、何故そんな……」


 今は休み時間だが、Aクラスの王子が何故Bクラスの壁に隠れているんだ。なんのために?


「心優しいステラが悲しんでいても貴様には何も出来まい! やはりステラにふさわしいのは僕だと証明する時が来たようだな!」


 王子は自分の身を隠していた白い布をマントのようにばっさぁぁっと翻して去っていった。


「指をくわえてみているがいい! はははははっ!」


 俺はぽかんとして王子を見送った。ジュリエットもぽかんとしている。何しに来たんだ。第一王子って暇なのか?


「ステラもだけど、身分の高い方ってちょっとおかしいよね」


 ジュリエットの呟きにうっかり同意してしまった。





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