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 平民居住区に行きたいと言うとお父様に滅茶苦茶心配されてしまった。


 説得して何とか許して貰ったけれど、腕利きの護衛をたくさん連れていくことになってしまった。


 もちろん、護衛は連れていくつもりだったけど、そんなにぞろぞろ連れ歩きたくない。

 けれど、あんまり心配をかけてお父様が「血まみれ公爵」化したら大変だし……仕方がないわね。



 という訳で、私とヒューは平民居住区へやってきた。

 私はアニーに用意して貰った質素なワンピース、ヒューも平民が着る服を身につけている。

 質素な格好をしていてもヒューの輝きは止められないわ!


 護衛達も平民の格好で少し離れてついてきている。

 平民居住区は貴族の家が並ぶ中心街よりも人が多くて、慌ただしく人が駆け抜けていくと土埃が舞い上がった。

 んー。見た感じ、家と家が密集していて、庭がないから草木も見えなくて全体的に空気が乾いていて砂っぽい気がする。

 平民が住む場所はこんな感じだったのね。知らなかったわ。


 家の扉が開いて、その家のおかみさんがバケツの中身を道にぶちまけた。掃除に使った水かしら……人が歩く道にまいちゃうのね。道にはゴミもたくさん落ちているわ。林檎の芯が落ちていて黒い虫がたかっている。


「ステラ。大丈夫か?」

「ええ……」


 なんだか色々と混ざった臭いがして、少し気分が悪くなった。心配してくれるヒューの腕にすがりついて歩みを進める。


「お医者さんはどこかしら……」


 探し回ってやっと見つけた町医者は、床屋と兼業している年寄りだった。

 病が流行ったら、とても彼一人で患者を診ることは出来ないわ。


 中心街に住む医者は貴族のお抱えになっている者が多く、平民を診るためにここまでやってきたりはしないらしい。


「普段、病気になったらどうしているのかしら?」


 首を傾げていると、護衛がすっと近づいてきて耳打ちしてくれた。そもそも平民は滅多に医者にかからないらしい。彼らの多くは医者にかかる金がなく、大抵の場合、医者が喚ばれた時にはもう手遅れだという。


 知らないことばかりだ。


 初めて平民の暮らしの一端を知った私は打ちのめされて帰宅した。


 病気になったらお医者さんを喚んで、栄養のあるものを食べて温かくして眠れるのは当たり前のことじゃなかったのね。


 いったいどうすれば病が流行るのを防ぐことが出来るのかしら。町を清潔にするのも十分な食料を行き渡らせるのも、私の手には余ることだわ。


 質素なワンピースを脱いで普段着のドレスに着替えながら、私はため息を吐いた。どうすればいいのか全然思い浮かばないわ。

 病を防ぐことって出来ないのかしら。うーん。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 活性炭を投げつけられても喜ぶ、中二病殿下に、お色気攻撃に屈する側近、魔女さえいなかったら平和な国だったんでしょう。 [一言] 悲壮感があまりなく、楽しく読めます。更新楽しみにしています。
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