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フアナによると、ルナマリアは病で死にかけて魔力に目覚めた可能性があるらしい。
病か……病……?
あれ? なんか思い出しそうな気がする。
うーんと……
あ、思い出した!
二年生の冬、平民街でたちの悪い風邪が流行っているとかで、外出が制限されたことがあった。
貴族にまでは広がらなかったからあまり詳しくは知らないけれど、念のため学園も二、三日休みになったのだったわ。
もしかして、ルナマリアが死にかけたのって、その時の流行病?
だとしたら、病の流行を防げばそもそもルナマリアは魔女にならないんじゃあ……
でも、来年の冬に平民街で病が流行るなんて言っても信じてもらえないだろうし、そもそも、病気を事前に防ぐなんてことが可能なのかしら?
病気になったらお医者様に診てもらって栄養のあるものを食べて、温かくして休むのが普通だけど、病気を防ぐ方法なんて知らないわ。
「ステラ? どうした、難しい顔をして」
食堂で昼食をとっている時もつい病のことを考えてしまって、ヒューに心配された。
いけないわ。ヒューと一緒にいるのに彼に集中していなかっただなんて。
駄目よ。何をしているのステラ。
ルナマリアのことも重要だけれど、ヒューを疎かにしては本末転倒だわ。
貴女はヒューを讃えるために戻ってきたのよ、ステラ。もっとヒューに集中しなさい。
「ちょっと考え事をしていたの。ごめんなさい、ヒュー」
「いや。何か心配事でもあるのか?」
「強いて言うなら三つ隣のテーブルからこちらを睨みつけてくる殿下がウザいけれど、大丈夫よ」
お昼はいつも誘ってくる殿下に活性炭を投げつけて追い払ってからヒューと一緒に食堂に来ている。たまにジュリエットも同席するんだけど、「ステラのヒュー賛歌を聞いていると疲れちゃうから」と普段は同じクラスの令嬢達と昼食を共にしているみたい。
そういえば、詩の授業でヒューを讃える詩を詠んだら先生に再提出を命じられたんだけれど、納得がいかないわ。
ヒューを讃える言葉が足りなかったのかしら?
そうね。もっと彼の輝きにふさわしい言葉があるはずよ。私、頑張る。




