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週末、私は緊張の面持ちでワトソニア伯爵家の前に立っていた。
「ようこそおいでくださいました、ステラ様」
「お待ちしておりましたわ」
「ステラ様……」
待っていたのはフアナとイベリス、そしてエリーナ・コーレアだった。
エリーナは前回、コリンの婚約者だった。けれど、今回はまだ婚約していない。恐らく、伯母様がまだ私とコリンの結婚を狙っているのだろう。
ここに集まった四人に共通することと言えば、即ち、前回のルナマリアに婚約者を奪われた令嬢達。
「まさか、貴女達も……」
私があんな死に方をして過去に戻ったのなら、彼女達もまた同じような悲惨な目に遭って死に戻りをしたのかもしれない。
そう思って青ざめると、フアナは首を横に振った。
「やはり、ステラ様にも一度目の記憶がおありなのですね」
ここにいる四人とも、前回の記憶がある。
「ステラ様にお話しなければならないことがあります」
「ステラ様が捕らえられた後、もちろんすぐに国王陛下が駆けつけて、王子達は捕らえられそうになりました。ですが、その時、ルナマリアが正体を現したのです」
「正体?」
「ええ。ルナマリア・ムーンは、魔女だったのです」
魔女。
私達、人間は、誰もが魔力を持っていると言われている。
けれど、普通に生きている分には魔力が目覚めることはなく、大抵は魔力を使うことなく生を全うする。
ただ、ごく希に命の危機などにをきっかけに魔力が目覚めて、無意識に危機を回避する人も存在する。
ごく希に魔力を発現した者の中でも、特に自分の意志で自由に魔力を使えるようになった者のことを魔女と呼ぶ。
でも、そんなのは伝説に登場するぐらいで、本物の魔女なんて誰も見たことがない。
「ルナマリアは病で死にかけたのをきっかけに魔力が発現したようです。そして、その魔力を自在に扱えることを知った彼女は、その力を使ってこの国の王妃になろうと目論んだのです」
フアナがふうと息を吐いてカップを傾けた。
「将来、この国の王妃となると決まっていたのはステラ様です。なので、ルナマリアはステラ様の周囲の者がステラ様へ向ける好意を奪い取ったのです」
好意を奪い取る……
確かに、ルナマリアが現れるまでは、殿下達とは仲良くしていたわ。
「第一王子と側近方、ザフィリ嬢、シャイデン嬢は本来ステラ様へ向けていた好意をルナマリアへ向け、ステラ様を嫌うように操られたのです」
「それで、あのパーティーであんなことになったのね……」
私は呆然として呟いた。
操られていた、と知っても、やっぱりやられたことには腹が立つし、じゃあ許そうかなという気になれない。
だって、本当に怖かったんだもの。もしもあの時、ヒューがいなかったらと思うと、今でも足が震えてしまう。
心が狭いと言われるかもしれないけれど、やはり殿下達とは今後も距離を置いておきたい。ルナマリアが現れる前のようにはなれないわ。
ただ、ゴミ呼ばわりするのはやめてあげようかしら。




