37
「来月にはステラとヒューイットは王都へ帰っちゃうんだよねぇ」
夕食後の暖炉の前での団欒の中で、ジュリエットがぽつりと呟いた。
春になれば私とヒューは学園に入学する。そのため、冬の間は入学準備に明け暮れることになる。雪が降る前に王都へ帰らなくてはならない。
「やっぱり私も学園に行こうかなぁ」
ジュリエットは前回は学園に入学していなかった。
「ほら、私ってこんなだから、王都の上品な令嬢達と一緒に通っても楽しくないよなぁって思って。でも、ステラとヒューイットがいるなら」
「えー。ジュリエットもいなくなっちゃうの?」
ジョージが声を上げた。
「僕だけ置いてけぼりになっちゃうよ」
頬を膨らませるジョージをヒューがつんつんつつく。
「お前が入学するのは俺らが四年になる年だな」
四年かぁ……。ルナマリアが編入してくる年じゃん。嫌なこと思い出しちゃったわ。
「でも、学園に通うと毎日ステラの「ヒューかっこいい!」を聞かされることになるのか……」
「うわあ、それは……考えちゃうなぁ」
なによ! 私だって「ヒューかっこいい!」以外のことも言うわよ! 例えば「ヒューが尊い!」とか「ヒューの横顔が芸術的!」とか「ヒューの足の長さがこの世のすべての基準!」とか。
「悪いな。俺もなんでこんなに好かれてるのか未だによくわからねぇんだ」
ヒューがそう言いながら、私の隣に腰を下ろして私の頭を自分の胸元に引き寄せた。
はわわ! ヒューの匂いと鼓動が!
「理由はわからねぇが、こんなに俺のことで頭がいっぱいの奴を放っておく訳にもいかないからな。学園では暴走しないようにちゃんと見張るからよ」
「そうしてくれよ、本当に」
「口さえ開かなければステラは完璧な令嬢になれると思うよ」
なんかジュリエットとジョージの私の扱いが最初の頃よりだいぶぞんざいになっている気がするんだけど気のせいかしら。
若干疑問に思いつつ、でもヒューがかっこいいのでなんでもいいわ!
そんな風に残りの日々を過ごして、私とヒューはとうとう王都へ帰る日を迎えたのだった。




