35
邪魔者を追い払ってステラを救ったぞ!
これでステラが僕と婚約するのに何の問題もないな! ステラも僕に感謝しているに違いない!
さて、それじゃあステラを呼んで……と思っていたら、父上に呼び出された。
「なんですか、父上?」
「……ステラ嬢のことだがな」
「あ、婚約の申し込みが来たんですか? すぐにステラを王宮へ呼んでください!」
僕は胸を張ってそう願った。しかし、父上は何故だか疲れたような表情でふっと息を吐いた。
「ステラ嬢は今は王都にいない。学園に入学するまでの間、辺境伯領に隣接する子爵領に滞在するそうだ」
は?
子爵領? なんだそれ。
「表向きの理由は領地経営を学ぶためだそうだが、実際はステラ嬢が冷え性な上に偏頭痛持ちで夢見が悪いせいで骨粗鬆症になりこのままでは複雑骨折の恐れがあるので胃潰瘍の治療のために空気のきれいな田舎で療養するということだ」
「そんな満身創痍っぽい理由で!?」
なんぼ田舎のきれいな空気だって胃潰瘍や骨粗鬆症を治す効果はないと思うのだが。
「なんでも「やっぱり田舎がいい」みたいに持ち上げる風潮は良くないと思います! 田舎暮らしにもそれ相応のデメリットがあることを理解すべきです!」
「それについてはわしも同意見だが……まあ、とにかくステラ嬢は王都にいない。学園入学までは戻ってこない。そして、グレイとの仮婚約も破棄しないということだ」
なんということだ。運命の女神は何故、僕とステラを引き離そうとするのだろう。
まさか、あのグレイ家の四男が、ステラを手に入れるために黒魔術に手を染めているのでは?
そうだ。そう考えれば納得がいく。ステラの心を操り、自分の都合のいいように運命を操作しているに違いない。
なんと卑怯な奴だ。そんな奴にステラを渡すわけにはいかない。
そうわかれば、僕のすることはただ一つ。
魔術に詳しくなってグレイの黒魔術を打ち破るのだ!
そうと決まれば早速、今日から勉強だ!
待っていてくれ、ステラ! 僕は必ず君を救ってみせるよ!