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「お嬢様、王妃陛下からお茶会の招待状が……」
「グリーンヒル公爵の娘は病弱で陣痛がひどくて心臓発作な上に痛風ですって断っておいて。そんなことより、ヒューにお揃いのノートを贈るのだけれど、リボンぐらいかけた方がいいかしら？」
振り向きもせずに答えると、アニーが深い溜め息を吐いた。
「体調不良で、とお断りしているのに何度もお誘いがあるのですから、もうお嬢様が行かないことには収まりませんよ」
そうなのよね。何度もお断りしているのに、王宮への誘いが懲りずにやってくる。迷惑だわ。
そういえば、前回も王妃様はド外道殿下に甘かったわ。
正直、顔を見るのも嫌だけど、一度ガツンと言ってやった方がいいのかしら。
「お嬢様、顔が凶悪になっております」
凶悪にもなるわよ。お茶会なんかに行ったら私の一日の「ヒューのことを考える時間」が減ってスケジュールが狂うじゃない。世の中にはヒューのことを考えることでしか得られない心の栄養というものがあるのよ。
「しょうがないわね。不本意だけれど、王宮で私の本気を見せつけてやるしかなさそうね」
「ほどほどにお願い致します」
王宮のお茶会などでヒューとの大切な勉強時間を減らすわけにはいかないので、ヒューが実家へ戻っている日ならば参加出来ますと返事をした。
そうして、嫌だけれど、ほんっとーに嫌なんだけれどっ！ 私は王宮のお茶会に参加して王妃様に拝謁した。
「ステラ！」
お茶会、と言っても、招かれているのは私だけで、あと何故かゴミがいる。
ゴミは馴れ馴れしく私の名前を呼び捨て、あろうことか抱きつこうとしてきた。
「ゴミ……第一王子殿下、ご機嫌うるわしゅう」
後ろに下がって避け、顔の前で扇を広げる。触るな、と視線に込めて牽制するが、ゴミはへらへら笑っているだけで理解していないらしい。
「やっと僕に会いに来てくれたんだね。もっと早く来てくれればよかったのに」
ゴミがそんなたわ言をほざくので、私は耳を疑った。
「私、ゴミ……第一王子殿下にお会いしなければならない理由などありませんわ」
「君は僕の婚約者になるんだから、これからは僕が呼んだら必ず来いよ！」
はあ？
何ほざいてんだこの小僧エピソード２である。
「エピソード１～クソ従兄弟の勘違い～」より遙かに腹立つ「エピソード２～ゴミクズ殿下の妄言～」である。
「……私は将来婚約する相手が決まっております。第一ゴミ殿下の婚約者になどなれません」
はっきり拒絶したというのに、ゴミ殿下は「ちゃんと僕が婚約者になってやるから安心しろ」などとほざいている。
今すぐそこの池に叩き落としたい。
私は凶暴な衝動を必死に抑えつけて、この苦行の時間に耐えようとした。
ああ。さっさと帰りたい。
ヒューに会いたい。
