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「ヒューイット様の躾は我が公爵家が責任もって行います。今後、ビルフォード様や他のお兄様方にはヒューイット様をお諫めいただかなくて結構ですわ」


 すっと笑みを消したビルフォード様に重ねてお願いする。


「もしも、我が公爵家の教育が不十分だと思われたなら、正式にグリーンヒル家に抗議していただきたく思います。当主とともに検討致しますわ」


 グレイ侯爵家の上三人は優秀で、一番下の四男は無能な出来損ない。


 前回はそんな風に噂されていた。その理由の一旦は、このお兄様達がヒューをこうやって馬鹿にして抑えつけていたからじゃあないのかしら。

 他のお兄様がどうかは知らないけれど、少なくともビルフォード様はヒューを馬鹿にしている感じがする。


 前回のヒューはそんな兄達に囲まれて窮屈な思いをしていたんじゃあないかしら。

 今回は我が家で伸び伸びと育って欲しいわ。


「では、これで失礼させていただきます。行きましょ、ヒュー」


 私はヒューの腕を引っ張って歩き出した。

 人の流れから外れて西の通りへ入ると、二人してほっと息を吐いた。

 どうやら、ビルフォード様の前で緊張していたのは私だけではなかったようだ。


「……悪いな」

「え?」

「俺は、いつも兄達にああやって言われている。俺が頭の悪い乱暴者なのは事実だから、言い返せもしない。お前の婚約者候補はそんなろくでもない奴だ」


 ヒューはふっと目をそらして口を尖らせた。自嘲するような表情を見るに、ヒューは本気で自分のことを「頭の悪い乱暴者」だと思いこんでいるようだ。

 私は足を止めてヒューの真正面に立った。


「ヒューはろくでもない奴なんかじゃないわ」


 私は琥珀色の瞳を見つめて言った。


「貴方はとても勇敢で優しい人よ。いつかきっと、私の言っていることが正しいってわかるわ」


 誰もがヒューを馬鹿にしたとしても、私のヒューへの恩が消えることはないわ。

 誰がなんと言おうと、今回の私の人生は貴方へ捧げるのだから。


 ド外道共に復讐したいって気持ちもちょっとはあるけれど、今回は婚約者にならなくて済んだのだし、関わりたくないという気持ちの方が大きい。

 私以外の令嬢が前回の私と同じ目に遭う可能性もあるけれど、学園の卒業パーティーの時はお父様に会場の近くで控えていてもらって、何か事が起きたら即座に対応してもらえるようにしておけば安心だ。


 だから、私はヒューのために全力を尽くす。

 ヒューに意地悪するお兄様方なんて蹴散らしてやるわ!




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