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父上に呼び出されたので、やっと僕とステラの婚約が決まったのだと思った。
それなのに、僕の顔を見るや父上は深い溜め息を吐いて肩を落とした。
「なんという馬鹿な真似をしてくれたのだ、お前は……」
「なんのことです?」
「ステラ嬢へこんな無礼な手紙を送りつけおってからに」
父上が握り潰していたのは僕がステラに送った手紙だった。
返事が来たのか?
「父上。ステラからの手紙はどこです?」
「ステラ嬢からの手紙など来ておらぬ! この手紙はグリーンヒル公爵からわし宛に届けられたのだ! 恥をかかせおって!」
ええ? なんで公爵から戻ってくるんだよ。ステラの奴、どういうつもりだ?
「父上。僕はただステラが……」
「婚約者でもない令嬢を呼び捨てにするな! お前には婚約者を作るのはまだ早いようだ! しっかり学べ!」
父上はいったい何を怒っているんだ? 僕は第一王子だぞ。ステラは僕と結婚したがっているに決まってるじゃないか。
「父上が早く僕とステラを婚約させてくれないから……」
「黙れ! ステラ嬢とは婚約出来ないとあれほど言っただろう! それに、ステラ嬢には正式に婚約者候補が出来たそうだ!」
なんだって?
ステラに婚約者候補?
なんでステラに婚約者候補なんかが出来るんだ。おかしいだろ。
もしかして、グリーンヒル公爵がステラの意見もきかずに勝手に決めた婚約じゃないのか。
「相手は誰です!?」
「ふう……お前が馬鹿な真似をしないように教えてやるが、ステラ嬢が熱心に望んで婚約者候補に迎えたらしい。ヒューイット・グレイ。グレイ侯爵家の四男だ」
誰だそいつは。僕とステラの邪魔をするとは、きっとろくでもない奴に違いない。
「まだ候補なのでしょう? ステラはそんな奴より僕と結婚したいに決まっている」
「いい加減にしろ! もういい、下がれ!」
父上はいったい何をそんなに怒っているのか、さっぱりわからない。
まあいい。そんなことより、ステラの婚約者候補とかいう奴をどうにかしないと。
なんで僕がこんな苦労をしないといけないんだ、まったく。




