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「こちらは少し日陰になっているので涼しい場所を好むカンパニュラを育てております。初夏の今頃が見頃です」


 小さな釣り鐘形の青い花が咲く庭を紹介して、隣に立つヒューイット様を見上げた。ヒューイット様は真剣な表情でカンパニュラを見下ろしている。

 日陰だとダークブロンドと琥珀色の瞳が暗く陰って見えて……ジュリアス殿下みたいに無駄にキラキラしてなくて素敵!

 お兄様達と比べて凡庸な容姿だと言われているのを聞いたことがあるけれど、そんなこと言った不届き者の口をしつけ糸で縫いつけた後で一気に糸を引き抜いてやりたい。


 そんな想いで横顔をみつめていると、ヒューイット様がふとこちらを見た。


「あーっと……あのさ、これ返すわ」


 ヒューイット様が私が贈ったハンカチをそっと差し出してきた。


 がーん。


「も、申し訳ありません! ご迷惑だったのですね?」

「いや! 迷惑とかじゃねぇよ! ただ、アンタが人違いしてるんだと思って」


 ヒューイット様は決まり悪げに頭を掻いた。


「野犬から助けたとか、俺は覚えがないんだよ。だから……」

「それはヒューイット様を我が家へお招きするための口実ですので。野犬というのは嘘です」


 私がそう言うと、ヒューイット様はぽかん、と口を開けた。


「野犬については嘘ですが、ヒューイット様が私を助けたのは本当です。貴方様に覚えがなくとも、私は知っております」


 あの時、あの状況で私が助かる道はなかったと思う。

 王城の西の広間で行われた卒業パーティ。学園を卒業する生徒達だけが集まるため、会場に入ってさえしまえば中の警備はさほど厚くなかった。会場の外には近衛騎士がいただろうが、殿下に命令された兵士達は数の力で近衛を振り切って私を地下牢へ放り込んだ。

 近衛騎士や使用人達はすぐに報告へ走ったはずだが、東の執務室にいたであろう陛下の元へ情報が伝わる頃には、私は淑女の誇りを汚されていたはずだ。

 陛下やお父様が駆けつけてくれた時には全てが手遅れになっていただろう。

 だから、ヒューイット様は自らの守り刀を私に与えてくれたのだ。


「私がどれだけ貴方様に感謝していることか……ですから、私は貴方様のお役に立ちたいのです」


 私の言葉を聞いたヒューイット様が眉をしかめた。


「公爵令嬢が軽々しく役に立ちたいなんて言ってんじゃねぇよ」

「軽くなんてありません!」


 私はこのやり直しの人生をヒューイット様への恩返しに捧げると決めたのですから。


 ヒューイット様は怪訝な表情を浮かべた後で、ニヤリと笑みを浮かべて視線を横に滑らせた。

 視線の先には、少し離れた場所に控えているアニーの姿が見える。


「お前、俺の役に立ちたいってことは、俺の言うことなら何でもきくってことか?」


 目線を私に戻してヒューイット様が言う。


「ええ」

「そんなら、俺をお前の「婚約者」にしろよ」


 私は目を見開いた。




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― 新着の感想 ―
ニヤニヤが止まりません!
[良い点] 『しつけ糸で縫いつけてやりたい』くらいは普通の表現ですが、『後で一気に引き抜いてやりたい』まであるのが面白いです
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