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いよいよ今日! ヒューイット様が我が家にいらっしゃるわ!
「アニー。どこかおかしなところはないかしら?」
「バッチリです、お嬢様! 大変に愛らしいです!」
何故かお母様とアニーの力の入れようがすごくて、私が口出しするまでもなくお茶会の準備が完璧に整えられていた。お茶会用の新しいドレスまで用意してもらえて、私は薄緑色のふわふわしたドレスに身を包んでいる。
緊張するけれどしっかりしなくちゃ。我が家にヒューイット様を招くのだから、決して失礼があってはならないわ。
今日のところはヒューイット様に何か困ったことがあったら私がなんとかするので相談して下さい、と伝えるだけにしておこうと思っている。下僕とか召し使いとか言うとヒューイット様が戸惑ってしまうだろうから。
内心は今すぐにでも平伏したいんだけど、いきなり公爵令嬢が足下に跪くのはマズいわよね。もちろん、「頭が高い!」とか言われたらいつでも地面に頭を擦り付ける覚悟はできているけれども。
少しずつ一緒にいる時間を増やして、ヒューイット様が自然に私を使えるようになるのが理想だ。頑張る。
侯爵家の馬車が到着して、侯爵夫人とヒューイット様が降りてきた。
「本日は、お招きに預かりましてありがとうございます」
「いいえ。ようこそおいで下さいました」
お母様と侯爵夫人が挨拶をかわす横で、私はヒューイット様へカーテシーで挨拶した。
「ようこそいらっしゃいませ。どうぞ遠慮なくおくつろぎ下さい」
ヒューイット様はそっぽを向いていたが、私は気にせずに庭へ案内した。
「なんでも、ご子息に野犬から助けていただいたとか……」
「私は何も知りませんで……驚きましたが、ステラ様がご無事で何よりですわ」
お母様と侯爵夫人が微笑みあう。
お母様には野犬に襲われて云々はヒューイット様をお招きする口実だと説明してある。ちゃんと理解して乗ってくれたので良かったわ。
しかし、和やかに会話する母達の横で、ヒューイット様はひたすら居心地悪そうにしている。
お茶を一杯飲み干したところで、私は提案した。
「あの、ヒューイット様に庭をご案内させていただいてもよろしいですか?」
侯爵夫人のお許しを得ると、ヒューイット様も黙ったまま立ち上がった。