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「グレイ侯爵家の……ヒューイット様に、ですか?」


 お嬢様からお手紙と贈り物を託されて、私は目を丸くしました。


「ええ、そうよ」


 お嬢様は照れくさそうにはにかんでいらっしゃいます。日々、お側にお仕えする私の目から見ましても、大変愛らしいお嬢様でいらっしゃいます。

 そんなお嬢様が、どうやら初恋をなされたようで、ここ数日でお嬢様の雰囲気ががらりと変わりました。

 以前も愛らしいお嬢様でしたが、最近はそこにある種の思慮深さが加わり、輝くばかりの美しさの片鱗が垣間見えるのです。

 恋をすると女は綺麗になると申します。お嬢様もこれから更に美しくなっていくでしょう。


 しかし、その恋のお相手がまさか……グレイ侯爵家のヒューイット様だなんて!


 噂によるとひどく乱暴な御方で、その上あまり出来がよろしくないとか。

 そのような方に何故、お嬢様が……


「何? グレイ侯爵家の四男だと!?」

「あらまあ。意外ですわ……」


 旦那様と奥様も驚愕しておられます。


「何故なんだ? いや、四男であれば我が家に婿入りすることも可能だし、侯爵令息ならば身分的には釣り合うが……」

「あまりいい評判は聞かないわ」

「旦那様、奥様。お嬢様はもしや、「ちょっとワルい男」がお好きなのかもしれません。深窓の令嬢ほどそのような男に夢中になる傾向があります」

「なんてことだ!」


 ああ。大切なお嬢様がまさか、ワルい男に引っかかるだなんて。

 お嬢様が早く目を覚ましてくださればいいのだけれど……


「ねえ、アニー。私もっといろんなことが出来るようになりたいわ。何があろうとあの方のお役に立てるように……」


 お嬢様が窓の外を眺めて独り言のように呟きます。

 お嬢様……っ、そんなにもヒューイット様のことを……? 


「お嬢様。いったいお茶会で何があったのですか?」

「お茶会じゃないのよ……それよりも前なの。私があの方に、救われたのは」

「救われた?」

「そうよ。あの方は知らないけれど、私は確かにあの方に救われたの……」


 お嬢様がヒューイット様とお会いしたことはないはずですが、お嬢様のお言葉には確信が込められております。

 理由はわかりません。

 ですが、お嬢様がそれを望むというのであれば、私はいくらでも協力しましょう。

 アニーはお嬢様の恋を全力で応援いたします!




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