表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/453

1. しょくどう の うちあわせ

よろしくお願いします。

ホウロからドーヴに続く山道で、突如として高ランクモンスターに遭遇し、色々頑張った末にやっとこさで倒すことに成功した僕達。


それから丸1日、山道を歩きに歩いてようやくのこと、僕達はクロウ共和国の首都ドーヴにたどり着いた。


城門の衛兵さんに鳴きついておすすめの宿を教えてもらうと、脇目も振らず一直線に宿へ直行する。


『ペンペン屋』という名前の宿屋に転がり込んだ僕達は、カウンターに金貨を出して3人部屋を泊まれるだけ予約。


そのまま食事も摂らずに部屋に上がって布団に潜り込み、そこから3人で寝ることまた丸一日。


朝寝て目が覚めたら翌日の朝だった。


寝過ぎで痛む頭を抱えて、そこからさらに1日呆然としていた僕達3人。


ようやく動き出したのは、ドーヴに着いた翌々日の朝になってのことだった。




その日の朝起き出した僕とユーナは、顔を洗ってまだ少しぼんやりした頭を目覚めさせた後、宿の庭先で軽く体をほぐす。


それからユーナを先に食堂へ行かせて、僕は未だ寝ているアリサを起こしに部屋へ戻った。


シーツにくるまって寝息を立てるアリサを揺さぶって、


「アリサ朝だよ。もうそろそろ起きようよ」


「……」


「朝ご飯も出来てるよ」


「……」


「……その時彼女はハッと気がついた。『そっ……そうかこいつ、この世の者じゃないんだ!』どうやらその声の主は、彼女を探して部屋の中を歩き回ってるらしいんだ。声は名前を呼びながらだんだんだんだんだんだんだんだん近づいて来る。でも彼女はそんな名前じゃない。もう彼女は布団の中で必死に祈った。『うわーお願いです神様助けてください助けてください許してください』思いつく限りのお祈りの言葉を唱え」


「……止めろ」


「え~ラストの一言がインパクトある話なのに」


「いいから止めろ」


「はい」



実はアリサとユーナ、2人揃って怖い話が大の苦手。


以前夜の暇潰しで、トイレに入ったら服を着せようとする変な声が聞こえてくる話をした時などは、危うく2人がかりで絞め落とされかけた。


アリサ曰く「お前は自然な会話の流れで怖い話を始めようとするから質が悪い」らしい。


それくらい良いじゃないか。『恐怖』という感情を楽しむことが出来るのは、人間だけが持つ特権だよ?


まあ2人が嫌だっていうことはやらないけど……出来るだけ。



不機嫌そうな顔で起き上がったアリサを連れて、僕達も食堂へ。


食堂で先に席に座っていたユーナから「宿の人、私達がいつまでも起きてこないから心配してたってさ」と言われたので、厨房にいる従業員の人に軽く頭を下げた。


朝食を食べながら、僕達3人今後のことについて打ち合わせをする。



「それじゃ、今日は冒険者ギルドに行って町に到着した報告と、例のアレの解体と査定を頼むということで。それが終わったらそれぞれ装備の新調と調整と、それで良いかな?」


例のアレとは当然、ここに来る途中で仕留めたブラッドレクスと、タイタニックアダーの死骸のこと。


「うん、それで良いよ。ただ……ギルドは相当な騒ぎになるだろうけどね」


「うう……やっぱり?」


「まあ、物が物だからな……」


なにしろ1級と2級の魔物の死骸である。


あんまり大事にはなってほしくないんだけどなあ。


かといってこんなかさ張る物、いつまでも持ち歩いてなんかいられないし。



「……道端にでも落ちてたのを拾って来ましたって言い張ってみようか」


僕の提案に、アリサとユーナが呆れた眼差しを向けてくる。


「つまり歩いていたら、たまたま1級と2級の魔物の死骸が横たわっているのを見つけて、周囲にはそれを仕留めた冒険者や軍隊の姿も一切見当たらなかったので持って来ましたというわけか。一体どんな奇跡だ」


「じ、じゃあ2頭が戦ってるところに出くわしたから観戦していたら、相討ちになったので拾って来ました、とかは……」


「解体する時にバレるよ。タイタニックアダーはともかく、ブラッドレクスの目を抉って毒流し込んで口に何か爆発する薬を叩き込んだのはキミじゃない。タイタニックアダーがどうやってそんな殺し方するの」


「タイタニックアダーが出ました→ブラッドレクスが出ました→死にました。とか」


「まあ……信じてくれたらいいね」


2人の呆れた顔が次第にジト目に変わる。


これ以上ごねたらそろそろ怒られそうだ。



「お前が逃がしたあの魔獣車も、いずれこの町に来るわけだからな。乗って逃げた彼らから報告が上がれば、どのみちわかることだ」


確かにアリサの言う通り。


「覚悟を決めようコタロウ」


「コタ……ここまできたらもう隠すのとか無理だって」


「うう……それじゃせめて査定の時に、大事にはしないでくれるようにお願いするってことでいいかな?2人だって騒ぎになるのは嫌でしょ?」


「まあそれは」


「確かに」



そういうわけで僕達は今後待ち受ける展開にかなりの不安を抱えながら、首都ドーヴの冒険者ギルドへと向かうことになったのだった。

お読みいただきありがとうございます。


また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。



今話でコタロウがアリサを起こすのに使った話につきましては、稲川淳二先生の名作怪談になります。

ある程度ぼかすようにはしたつもりですが、もしも問題があるようでしたらご指摘いただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ