10. いっきゅう の ちから
よろしくお願いします。
「アリサ、ユーナ、ごめん、ちょっと時間稼ぎに付き合ってくれる?」
「時間稼ぎって、この化物相手にか!?……っ何か、思いついたんだな?」
大剣を構え、冷や汗を流しながらアリサが了承。
「……他に手は無いもんね、分かったよ。っていうか、キミの悪知恵で駄目なら、もう何やっても終わりだろうさ」
ひきつった笑みを口元に浮かべてユーナが首肯。
2人の了解は得られた。ありがたい限り。
僕はマジックバッグから取り出した毒の入った小袋をユーナに投げ渡し、後ろにいるガンユさんに声をかけた。
「ガンユさん、僕達がこいつを引き付けてる間に、彼女達を連れて魔獣車に走って下さい。合流したら車の皆さんと一緒にそのままホウロへ逃げて」
突然言われて呆気に取られるガンユさん。
「い……いや、だが」
「あの車を守るのがガンユさんの仕事でしょう。なんとか5……いや3分もたせます。早く」
「それじゃ、お前らが……」
「僕達が生き延びるためにも、さっきの場所に車があったら邪魔なんです!急いで!!」
僕の剣幕に、ガンユさんもどうやら僕達が諦めたわけではないことを察したようで「わかった。死ぬなよ」と頷いた。
その後ろではアリサがリヴさん達の手を引っ張って「いつまでも呆けてるんじゃない!死にたくなければ立て!動け!!」と立ち上がらせている。
震える足でなんとか立ち上がった彼女達は、ガンユさんに促されて1度だけこちらを振り返りながら、やがて皆で道の先に向かって全速力で走り出した。
それに気付いて、スピードを上げて彼らを追おうとするブラッドレクス。
僕はその頭に赤ボトルを着火し投げ付ける。
顔面に命中して爆発が起こり、炎に包まれるブラッドレクスの顔面。
しかしどういうわけか、あっという間に火は消えてしまった。
ブラッドレクスは一瞬嫌そうに顔を背けたものの、すぐに僕達に向き直る。
妙だ。
いくらなんでも火が消えるのが早すぎる。
これは何かあるのか?
僕が考えを巡らす間も無く、ブラッドレクスは次の瞬間咆哮を上げながら、その巨体からは考えられないような速さで襲いかかってきた。
僕はその突進を横に転がってかわしながら、マジックバッグから赤ボトルと、オレンジのラインが入ったボトルを取り出し着火する。
さあいくぞ、今日は大盤振る舞い飲み放題だ!
「あの巨体を支える足を狙うぞ!」
「「了解!」」
アリサの指示を受けて、僕達は散開し攻撃を開始。
僕はブラッドレクスの足下に、オレンジのラインが入ったボトルを投げる。
地面に広がる炎と同時に立ち上る煙。
ボトルの中身は油と唐辛子。
辛い煙が出るので、煙幕プラス催涙弾みたいな効果を期待している。
煙に突っ込んだかと思うと、嫌がるように頭を振って軽く後退るブラッドレクス。
唐辛子が効いた?
そこを狙いブラッドレクスの足首に、ユーナの弓が放った矢が命中。
ウロコを貫き、肉の一部を抉り取って突き刺さった。
痛みに咆哮を上げるブラッドレクスにアリサが突進。
自分の胴程もある太い脚に大剣で斬りつける。
が、剣はある程度食い込みはしたものの、切断とまではいかない。
やっぱり硬いか。
ブラッドレクスが脚に気を取られた隙に、僕が敵の顔目掛けてダッシュ。
その大きく開いた口の中に赤ボトルを投げ込……もうとしたその時、ブラッドレクスの目がぎろりとこちらを向く。
僕と、ブラッドレクスの目が合った。
次の瞬間ブラッドレクスの鼻面が、僕の投げた赤ボトルを弾き飛ばす。
ボトルは力無く地面に落下し、炎と爆発が巻き起こった。
なんだ?今の変な感じは。
今の動き、あいつまるで……
と僕が戸惑っていた僅かな間に、ブラッドレクスに蹴飛ばされるのを警戒したアリサが相手から距離を取る。
そこに再びユーナが足首を狙い矢を放つ……も、ブラッドレクスはひょいと足を避け、ユーナの矢は空を切った。
今の動き……やっぱり、僕達の攻撃が読まれてる!?
僕はブラッドレクスの足下に2本目のオレンジボトルを叩きつけ、視線がそちらに向いたところを狙い通常の火炎ビンである無色ボトルを投げる。
残念ながら赤ボトルはさっきので弾切れだ。
ブラッドレクスがすぐさまボトルに気づいた次の瞬間、空中に突然ボトルの火を包むように水の塊が発生した。
ボトルの火が消えてそのまま力無く落下し、地面に破片と油が飛び散る。
今のは、あいつがやったのか?
水の魔法まで使えるのか!
まずい、こんなのいよいよ打つ手が無い!
敵が一瞬ボトルに意識を向けたところへ、ユーナが頭を狙い矢を放つ。
けど、ブラッドレクスはあり得ない程の敏捷な動きで、その矢の下をくぐり抜けた。
そのまま僕の方へ突進してこようとする巨竜の脚にアリサが再び斬りつけようとするも、今度はジャンプで剣をかわされる。
僕は体勢を崩したアリサに向かってダッシュ、そのまま体当たりで彼女を突き飛ばした。
一瞬前までアリサが立っていた場所に、ブラッドレクスの巨木のような尾が叩きつけられる。
2人抱き合ったまま地面を転がって追撃をかわしているところへ、ユーナがブラッドレクスの頭へ矢を三連射。
でもブラッドレクスは3本の内1本を身をよじってかわし、2本を頭から生えた紅角で叩き落とした。
その隙に僕達は急いで立ち上がり、ブラッドレクスの足下、先程無色ボトルの油が飛び散った場所めがけてオレンジボトルを投げ、相手が火と煙を避けている間にユーナと合流。
「2人共、あいつ……!」
「ああ、私達の攻撃を学習してるな!」
「それだけじゃない。あいつの脚!さっきアリサが斬った傷も、私が撃った矢の傷も無くなってる!」
「再生してる!?」
冗談じゃない、こんなのさっきのタイタニックアダーよりも反則じゃないか!
これが1級モンスターか。
もしかしたらだけど、僕達まだ手加減されてる可能性だってあるな。
大した相手じゃない、その気になればいつでも殺せると遊ばれてる。
だとしてもさすがにこれ以上は厳しいぞ。
ユーナの矢は見切られてる。
僕の火炎ビンにいたっては、もう残り少ない上にほぼ封じられた。
アリサの大剣で切れないものに僕のククリやボウガンが通るわけもない。
これ以上の時間稼ぎはもう無理。
ガンユさん達ちゃんと逃げられたかな。
……てか、もうそろそろ3分経ったんじゃないか?
経ったよね!?
よしもう経った!
決定!!
「よし……アリサ、ユーナ、撤退!!」
僕は2人に叫ぶなりブラッドレクスの足下に最後のオレンジボトルを投げ、相手が水魔法で火を消している間に、3人でホウロの方向に向かって全速力で走り出した。
お読みいただきありがとうございます。
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コタロウのボトルキープシリーズ
No.3:オレンジボトル
オレンジ色の塗料でラインの入った火炎瓶。中身は唐辛子の油漬け。辛い煙が発生。煙幕および催涙弾。




