7. だいじゃ の こうげき
よろしくお願いします。
「バ、ダメーーーーッ!!」
思わず全力で叫ぶ僕。
とぐろを巻いたヘビに真っ正面から向かう奴があるか!
ヘビがとぐろを巻くというのは、要するに防御の姿勢を取ったということ。
言い換えればカウンターの体勢とも言える。
全身をバネに、稲光のような速さで突っ込んで来る。
タイタニックアダーは突撃に反応して軽く身構えたかと思うと、その巨体からは思いもよらないスピードでキョウさんに襲いかかった。
大剣を振り下ろす間もなく、肩口から胴体に噛み付く。
大蛇の牙が金属鎧をやすやすと貫き、顎から響くバキボキゴキと骨の砕ける鈍い音。
「いやあぁぁああ!キョウ!!」
言わんこっちゃない!
リヴさんの悲鳴が周囲に響き渡り、その声に反応してタイタニックアダーの目がこちらを向く。
その無機質な目と身体が発する気配は警戒ではなく、殺意。
やばい、完全に敵認定された!
タイタニックアダーは力の抜けたキョウさんの身体を森に放り投げ、次の瞬間猛然とこちらに向かって突っ込んで来た。
狙いは……声を上げたリヴさんか!
「ひっ……!」
息を飲んでその場に固まるリヴさん。
その目前で、タイタニックアダーはその大顎を目いっぱいに開く。
頭に一瞬浮かんだ「彼女を見捨てて襲われている隙に逃げる」という考えを振り払いながら、僕は身体強化を最大に大蛇の頭の横から回り込む。
マジックバッグから取り出すのは、コモテの町に滞在していた頃から開発していた特殊火炎ビンの1本。
現状の武器ではまだまだ力不足と考えていた僕が、攻撃の威力とバリエーションを増やせないかと、頭をひねりながら作っていた物。
今大体5種類程完成させていて、数本ずつ作ったものをマジックバッグの中に入れている。
僕は新作の、緑の塗料でラインの入ったボトルを取り出し、その大きく開いた口に投げ込んだ。
中身は乾燥させた毒キノコの油漬け。
採集してきた毒キノコを使って、薬屋で薬師と相談しながら作ったもの。
効果として、着火して投げれば毒性のある煙が発生する。
……ってしまった!火を付けてない!!
突然口内に飛び込んできた異物を大蛇の顎は苦もなく噛み砕くと、口からボトルの油を滴らせながらその巨大な頭部がじろりと僕の方を向いた。
素早くとぐろを巻き直したタイタニックアダーの姿が一瞬ブレたように見えたその時、背筋に物凄い寒気が走る。
咄嗟にその場を飛び退く僕。
一瞬前まで僕が立っていた場所で、ばちぃんとネズミ捕りのような音を立てて大蛇の大顎が閉じる。
僕はジャンプした体勢から、腰のボウガンを引き抜いて大蛇の顔に向けて発射。
放たれた矢は見事タイタニックアダーの頭に命中……するも、呆気ない音を立てて弾かれた。
こいつ、硬い!?
これは、この間戦ったシャドウタイガーとは違う。
おそらくはあのウロコが、予想以上に頑丈なんだ。
てことは、僕がククリで斬っても多分通らない。
大きくて速くて硬いとかいくらなんでも反則だ。
なんでこんな奴がこんな街道のすぐ側にいるんだか!?
そんな今はどうでもいいことが頭を過っている間に、再び大蛇の目がこちらを睨み付け……次の瞬間呼吸音だけの声で絶叫が上がった。
見ると、タイタニックアダーの尾にガンユさんが剣を突き立てている。
流石3級冒険者だけあって剣は良いものを使っているらしく、硬いウロコを貫いて大蛇の皮膚に突き刺さっている……けど、残念ながら刺さった以上のダメージは与えられていない。
このヘビに致命傷を与えるには、剣の威力も軽戦士であるガンユさんの力も足りていないのだ。
タイタニックアダーは頭を捻って一瞬後方を睨みつけると、身を捩らせてその長大な尾で、剣を引き抜こうとしていたガンユさんを撥ね飛ばした。
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コタロウのボトルキープシリーズ
No.2:緑ボトル
緑の塗料でラインの入った火炎瓶。中身は油と、乾燥させた毒草や毒キノコなど。毒性のある煙が発生。




