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メインクーン・ダンス〜異世界しっぽ冒険記〜  作者: オー
ブライダル・パニック
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11. てきち の かくにん

よろしくお願いします。

騎馬なんていうと、まるで自動車かバイクみたいに1日走り通して数十km数百kmを駆け抜けるなんてイメージを持ってる人がいるけど、実際は馬というのはそんな頑丈なものではない。


当然の話、生き物なんだから走れば疲れるし、ずっと歩いてても疲れる。


人間とか馬車みたいな、重い物背負ったり引っ張ったりしてれば余計に疲れる。


ダッシュなんてやるのは基本、緊急の伝令とか戦場での突進くらいで、馬が人を乗せて走れるのは大体30分程度と言われている。


馬での移動というのは乗って歩きか、もしくは人が馬を引いて共に歩くのが基本。


急行の場合は歩きの中でたまに駈け足。


軍馬や馬車を引く力持ちな馬はレース用のサラブレッドみたいにガラスの脚ってわけではないけど、それでも定期的に休ませて水を飲ませて汗を拭いて脚をマッサージって風にケアをしないと、へたばるどころか場合によっては脚が腫れ上がって歩くどころではなくなってしまう。


加えて歩きならともかく、走ってる馬の乗り心地なんてはっきり言ってそんな良いもんじゃない。


慣れない人が馬に乗って走ったらほぼ確実に振り落とされるし、慣れてても今度は馬が走りやすいように、馬の動きに姿勢を合わせてやる必要があるのでけっこう体力使う。


まだ乗ったことがない人は、機会があったら是非お試しあれ。




それはさておき、そんな感じで休憩を取りながら僕達は、日が落ちて辺りが暗くなってきた頃合いに集落の近くに着いた。


朝のギルドの会議で、討伐隊は大型の馬車3台で集落に向かうといっていたけど、あの場にいた20人程が分乗して移動するとなれば移動時間もそれなりにかかるだろう。


僕達はホウロの町を正午の1時間程前に出たので、現場への到着から討伐隊の攻撃開始までには多少の余裕があると考えられる。


そんなわけで僕達は、まず馬車を隠してから集落に近づき過ぎないように注意して、避難者に聞いた話を基に周辺の地形を確認。


続いて出来る限り集落に接近。


3人で手頃な木に登って、上から葉っぱに隠れて集落の様子を探る。



集落は中央に広場があり、その周囲に建物が10数軒。


その中で1番大きな家が村長宅で、捕まった人達もそこに監禁されているのではないかというのが、避難者達の話だった。


ほとんどの家は中が暗いままで、村長宅を含む数軒には明かりが点いている。


明かりのある家の中にはオークがいるのだろう。


集落の東側には、ホウロへの街道に続く入口。


西側は小高い丘になっていて、そこに見張り台の櫓と作業場。


なんでもこの集落は森の木の切り出しが生業だったらしいので、その仕事場だろう。


オークの様子はというと、集落の入口に見張りが1体と櫓の上に2体、それ以外は外を出歩いている様子は無い。


もう暗いから寝ているのか、捕まえた女性達と行為にでも励んでいるのか。


人質の様子は残念ながらここからでは分からない。



実際の集落の地形と地図にほぼ差異が無いことを確認した僕達は、そのまま木の上で地図を囲んで作戦の最後の打ち合わせをする。


「それじゃ、作戦の内容はほぼ変更は無しってことで。用意ができたらアリサが入口の1体、ユーナが見張り台の2体を仕留める。それに合わせて僕が集落に侵入して、生存者の確認と救出。ユーナは見張り台の上から集落全体の監視と僕の援護。アリサは荷馬車の側で待機して荷馬車の守りと脱出の補助。ユーナはオーク2体だけど大丈夫?」


「大丈夫。今の眼とこの弓ならやれるよ」


そう、今僕達3人は汗よけと暗闇に紛れるためにシャドウタイガーのバンダナを身に付けているのだけど、このバンダナを顔に巻き付けたところ2人から言われたのが「今夜ってこんなに明るかったっけ?」というもの。


僕は元々夜目が利くのですぐには気づかなかったのだけれど、なんでも闇の中でやたらとものが良く見えるようになったらしい。


確かに今夜はわりと月の明るい夜ではあるけど、それにしたって不自然な程にはっきりと周囲が良く見える。


近くであれば木の葉っぱも数えられるくらいだ。


おそらくはこれがシャドウタイガーの装備品の効果。


おかげで僕達は暗い中でも地図を見ながら打ち合わせが出来たし、これから始める作戦も格段に楽になるだろう。




作戦の最後の確認を終えた僕達は、木から降りてそれぞれの持ち場に向かった。


臭いと顔隠しでホウロの肉屋でもらってきた豚の血を顔に塗り付け、腰のベルトにはラヌルの町で買ったナイフと、あらかじめ作っておいた木の杭を数本刺す。


木の杭というのは、買ってきた薪をナイフぐらいの長さと剣の柄ぐらいの太さに切り、先端を削って刃物みたく鋭利に尖らせたもの。


剣などで敵を刺したらその後どうしても「抜く」という一動作が必要になって、場合によってはそれが大きな隙になったりすることがある。


でもこういうのだったら使い捨てで刺したらそのまま手を離してしまえば良いので、素早く次の動きに移れて多数相手の戦いの際には良いんじゃないかと思って作ってみた。


まあ作ったら作ったで「刺したらねじって即座に手を離す」という動作の練習に手間を食うことになったのだけれど、はてさて役に立つかな?



準備を整えた僕は、見張り台の近くの森の中に潜んで集落の中の様子を窺う。


僕の横ではユーナが長弓に矢をつがえて見張り台の上のオークを狙っている。


集落の入口では、ホウロの町を出る前に買った黒い布を被ったアリサが、立ち番のオークに接近しているはず。


作戦開始の合図は、ユーナの矢の一撃から―――

お読みいただきありがとうございます。


また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。



今回の騎馬についての解説ですが、私自身の体験の他、故・池宮彰一郎大先生の著作を一部参考にさせていただいております。


この場をお借りしまして、天国の池宮大先生に御礼申し上げます。

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