7. きんきゅう の いらい
よろしくお願いします。
オークとは、ランク4級認定の人型モンスター。
大きさは成人男性と同じかもう一回り大きい程度。
黒や茶の体色の醜悪な姿をしていて、ゴブリンなどと同じく非常に好戦的で残忍な性格。
力も強く、剣・棍棒・槍・弓矢など武器の扱いにも長ける。
繁殖力が非常に強く、樹の根からも同族を増やすことが出来るとされるが、人間や他種族の女も積極的に襲い、子を産ませようとする。
上位種にハイオーク、オークジェネラル、オークキングなどがおり、通常のオークよりも知力・戦闘力において大きく上回る。
魔法を使った個体も報告されており、また上位種に率いられた群れが軍事行動を取り国を襲った記録も残されている。
発見次第積極的な討伐が求められる。
(冒険者ギルド所蔵 魔物図鑑人型編より)
「オークか……」と呟くユーナに受付嬢さんは話を続ける。
「この町のかなり近くで集落が発見されたようです。女性には嫌な魔物でしょうけど、3級のユーナさんであれば十分勝てる相手だと思います。あと15分程で、2階の会議室でギルドマスターによる説明会が始まりますので、是非」
「この町って確か2級のパーティが滞在してたよね。彼女達は?」
「『白鷹の翼』は真っ先に討伐への参加を表明されてます」
『白鷹の翼』はユーナが言ったとおり、この町に滞在する2級の冒険者パーティ。
女性のみのパーティで、全員がランク2級の凄腕らしい。
僕達は遠目には見たことがあるけど、直に話したこととかは無い。
話を聞いて頷いたユーナは僕達にちらりと目を向けた。
お互いに軽く目配せをして、一緒に頷く僕とアリサ。
放っておけばこの町にも被害が及ぶ。
討伐に参加することに異存は無い。
ただ現在ランクの低い僕とアリサが、この討伐に参加出来るのかというのがちょっと気になるところ。
まあそれは説明会の時にでも確認すればいいだろう。
「わかった。とりあえず説明会に行って話を聞いてみるよ」
「ありがとうございます!会議室へはそちらの階段からどうぞ」
こうして僕達は彼女に示された部屋へ向かった。
2階に上がって会議室に入ると、そこは通常の部屋2つ分くらいの広い空間だった。
部屋の中には10人掛けくらいのちょっと大きめのテーブルがあって、並べられた椅子には4人の若い女性が腰掛けている。
席に着いているのは彼女達だけだけど、この人達が確かランク2級の冒険者パーティ『白鷹の翼』だ。
4人共白を基調とした軽鎧を身に着けているけど、パーティのイメージカラーみたいな感じなのだろうか。
室内には他に15人程の冒険者がいて、皆立ったままそれぞれのパーティなんだろう4つのグループに別れて話をしている。
僕達が入っていくと、皆一瞬こちらに目を向け、そしてすぐに話に戻っていた。
ユーナに促されて部屋の隅に移動して、そこで少しの間待っていると、やがて部屋の扉が開いてがっしりした体格の初老の男性が1人、若い女性を伴って入ってきた。
皆が見守る中彼はテーブルの前に立ち、軽く僕達を見回してから声を発する。
「ホウロの冒険者ギルドのギルドマスターのカルガンだ。知っている者もいると思うがよろしく頼む。まずは今回の緊急依頼に、こうして集まってくれたことを感謝する」
彼がこの町のギルドのギルドマスターか。
コモテの町のとは違って変な人ではなさそうかな。
カルガンギルドマスターは一拍置いて話を続ける。
「今回の討伐対象がオークだというのは聞いてるだろうが、順を追って説明する。まず昨日の夕方、ここから西に半日程行った所の、森の中にある集落の住民10人程がこの町に助けを求めて来た。彼らの話では集落がオークの群れに襲われたという。突然の襲撃で対応が間に合わず、集落はそのまま占拠された。住民達はバラバラに着の身着のまま逃げ出して、生き残りがこの町にたどり着いた」
「あそこか……!」「近いな……」などといった声が冒険者達から上がる。
「そう、集落はこの町から目と鼻の先だ。荷車が走るための道も通っている。放っておけばこの町にも被害が及ぶ可能性がある。この事態にギルドは、一刻も早い討伐が必要と考え緊急依頼を出した」
ギルドマスターはここで一旦言葉を切った。
すかさず冒険者達から矢継ぎ早に質問が上がる。
「オークの数は?」
「住民の証言では10体という話だが、仮にも集落1つ落としたとなればもっといるだろう。30か、それ以上と見た方がいいかもしれん」
「上位種は?」
「これも見たという話は無いが、可能性はある」
「あそこは3級パーティの『地割れ蛇』が常駐していたはずでは?」
「『地割れ蛇』は先日、もう歳だからということで解散と引退が決まった。代わりを選んでいたところにこの事態が起こった」
「州軍は動くんですか?」
「州府に使いは出したが、すぐに出動したとしてもここに着くまでには時間がかかる。ギルドが1番早く動ける。まあいつも通り、冒険者での対応だ」
「報酬は?」
「後で詳しく説明するが、まず参加者全員に金貨2枚。これにオークの討伐数によって上乗せがある」
この報酬額に冒険者達が軽くざわめいた。
「金貨2枚か」「悪くないな」などという声が聞こえる。
「今後の段取りは?」
「集落までの足として、運輸ギルドから大型の荷馬車を3台借り上げた。正午過ぎに北門から出発するので、皆はそれまでに準備を済ませて集合してくれ。それから今回の討伐には俺も同行する。状況の確認と、場合によっては指示を出すこともあるからそのつもりで頼む。……他には何かないか?」
確認したいことはあらかた訊いたのか、冒険者達の声が途切れた。
せっかくなので僕もちょっと質問してみようか。
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