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メインクーン・ダンス〜異世界しっぽ冒険記〜  作者: オー
ブライダル・パニック
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1. みちばた の どげざ

よろしくお願いします。

こうして僕達はソマリ男爵の追手を振り切って、何事も無く無事にクロウ共和国に入国出来た……なんてことはあるわけもなく。



3人揃ってクロウ共和国の国境の町ズメの留置場に留置されて、そこで3日間取り調べを受けた後、簡易裁判で懲役1年執行猶予1日の判決が下されることとなった。


何分前例の無いことなので、どの程度の量刑が妥当か役所やら警備隊やらの上の方でだいぶ揉めていた様だ。



しかし食材については僕自身調理前に安全性と味について確認していたこと、一部地域では実際に食材として扱われている例もあること、食材についての説明をしようとしたところ男爵側が拒否したことなどが考慮。


なによりもこんなアホらしい話に厳罰も何もあるか、形だけ整えたらソマリ男爵から何か言ってくる前にさっさとどこかに追い払えという判断で、この判決結果となったらしい。


僕を取り調べた捜査官の顔が、吹き出しそうになるのを一生懸命我慢している表情だったのが印象深い。


後は取り調べの最中、僕達の釈放後はこの件に関する書類は全破棄だという話が、僕の猫聴覚にちょろっと聞こえてきていた。




実はこういうの、政治などではよくある話。


僕の実家でもやってたけど、書類の見られたくない箇所に『うっかり』インクを落としたり破いたり。


もしくはさっさと処分して形だけ「閣下申し訳ありません。書類を間違えて捨ててしまいました」「何、書類を捨てた?バカモン。よし仕事に戻れ」とか。


僕の時は書類に赤インクを垂らして「書類を受け取った時、目の前を誰かわからないけど水着姿で超美人のお姉さんが通ったので鼻血を吹きました」と言ったら兄上が呆れた顔をしてたっけ。


なんだかんだいって、綺麗事と正論だけでは世の中意外と成り立たない。


ただし、もしまた隣国の男爵にムカデを食わせた場合、今度は問答無用で終身刑の実刑に処されると捜査官の人からは言われている。


なんて恐ろしい、二度とやらないようにしよう。




そんなこんなで釈放されて、無事クロウ共和国に入国した僕達。


まずはズメの町の外に出て、そこでまず最初に行ったことが、


「本当に申し訳ございませんでした。お詫びに僕に出来ることなら何でもさせていただきます……」


町の外の道端で、アリサさんとユーナさんに土下座をすることだった。



そんな僕を、不機嫌そうに腕を組んで睨んでくるアリサさんが、思い切り低い声で言う。


「そうだな。さてどうしてくれようか」


うわあ、怒気と殺気が声と一緒になって押し寄せてくる。


死刑かなあ僕。


出来ますことならば三味線だけは平にご容赦……




聞いた話では、ソマリ男爵が倒れて僕が屋敷から逃げ出して間もなく、コモテの町には僕を捕らえるための非常線が張られたらしい。


男爵本人はその頃まだひっくり返っていただろうから、おそらくは家令のヘルマンさんの手配だろう。


その時には僕はもうコモテを出て、街道を逃げていたところだったので町中で見つかるわけもない。


続いて捜査の手が伸びたのが、僕をコモテに連れてきた人であるアリサさんとユーナさん。


アリサさんがソマリ男爵の屋敷で僕と別れた後、ユーナさんの滞在宿を訪ねて、2人で僕の渡した手紙を読んでいたところに男爵配下の兵士が押し寄せた。


「お前が連れて来たあの小僧が逃げた、今奴はどこにいる!?」と問答無用でアリサさんを捕らえようとする兵士に対し、アリサさんは最初は訳がわからないながらも彼らの言う通りに連行されようとした。


しかしここでユーナさんが、このまま兵士に付いて行けば絶対にろくでもないことになると直感。


兵士を蹴り飛ばし、アリサさんの腕を引いてその場から逃げ出した。


アリサさんが犯罪を犯すような人ではないことはユーナさんが良く知っている。


加えて、騎士であるアリサさんを逮捕するのに、兵士達は罪状を告げることもせずに有無を言わさず連れて行こうとしている。


これは間違い無く先方に何か後ろ暗いことがある、このまま行けば裁判も、釈明の余地なども与えられずに男爵の愛人コースか、下手したら処刑なんてことも有り得ると考え、咄嗟にアリサさんの腕を掴んで走り出していたのだそうな。


元々僕の話を聞いて、旅に出ることに気持ちが傾いていたユーナさん。


もういっそこれが良い機会かと、そのままコモテの町から逃げ出すことに決めたのだった。


ユーナさんもアリサさんも習慣として常に武器だけは携帯していたので一直線に町から飛び出して、さてこの後どうするかというところで思い浮かんだのが、事の元凶たる僕のこと。



奴のせいでこんなことになった以上ただではおけぬ。


あの兵士は確か逃げたと言っていた。


ならどこに逃げた?


抜け目のないあいつのことだから、逃げるとしたら他国ではないか。


他国なら捜査の手が伸びるまでには時間がかかる、もし見つからなかったら私達もそのまま隣の国へ逃げてしまえば良かろう。


と考えて、クロウ共和国との国境へ続く街道を走っていたところで、同じく街道を逃げていた僕を捕まえたということだ。




僕が地面に頭を擦り付けながら冷や汗を流していると、そんな僕を見かねたのか横からユーナさんが声をかけてくる。


「何でもするって言った?」


「で、出来ることでお願いしにゃす……」


僕がどもりながら返事をすると、ユーナさんは目の前にしゃがみ顔を覗き込んできて、そしてにやりと笑みを浮かべて言った。


「じゃあ、結婚して」

お読みいただきありがとうございます。


また、評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。



量刑については、あまり深く考えないでいただければ幸いです。

極論を言えば、役人の胸先三寸の世界ですので。



見られたら危ない書類の隠蔽については、政治関係の醜聞の他、「倍返し」で有名な人気ドラマなどがわかりやすいでしょうか。

そんなもの最初から無いのが1番良いことなのですが、中々世の中そうもいかない様です。

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