エピローグ
2章エピローグになります。
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アト王国ソマリ男爵領コモテの町にて、後々の語り草となる珍事が立て続けに発生した。
事の発端は領主ゲープハルト・カル・ソマリ男爵が、原因不明の病により突如倒れるという事態から始まる。
幸い男爵の病状は重いものではなく、数日の療養を経て無事回復となった。
後日、病床から回復した男爵から、クロウ共和国政府及びソマリ男爵領を隣とするハクチ州の州知事に対して、緊急の要請が出された。
要請の内容は、クロウ共和国に逃げ込んだ犯罪者3人の指名手配及び引き渡し、というものである。
しかしクロウ共和国側が、その3人が犯した罪の詳しい内容とその証拠について問い合わせたところ、なぜかソマリ男爵側からの回答は無し。
結果、罪状が明確でないことを理由に、クロウ共和国側はソマリ男爵の要請を拒否した。
「我が国は罪が確定していない者、ましてや犯した罪が明らかでない者を罪人扱いすることなどしない」と使者に対して毅然と言い放ったクロウ共和国のユーカン外交官とイノ州知事の姿勢は、クロウ共和国内においては高く評価されている。
ただその場に居合わせた者の証言によれば、外交官と知事両名、それから彼らの護衛に着いていた兵士一同の顔は、なぜか皆必死に笑いを堪えているように見えたという。
また同時期、コモテの町の冒険者ギルド支部からも、ラネット神聖皇国の皇都イアスにある冒険者ギルド本部へ、ギルドマスターグレオンの名前で冒険者2名の指名手配及び、大陸内全ギルドの使用停止の申請が出された。
しかしギルド本部は申請書に罪状の記載が無いこと、それについて問い合わせても回答が無いことなどを理由に申請を却下。
その一方でしばらく時を後にして、コモテ近隣の町や村の冒険者ギルドから、コモテの冒険者ギルド支部及びグレオンギルドマスターについての大量の苦情が冒険者ギルド本部へ寄せられた。
どれも正式な手続きを経ての申立であったこと、件数が多量であったことから、ギルド本部はコモテ市のギルド支部への監査を実施。
苦情内容にもあった依頼者・冒険者に対する暴言の他、依頼料上乗せの強要、不当な理由による依頼の受付拒否、新人冒険者に対する不当な扱い、更には粉飾決算及び横領の疑いも出てきたことから、本部はグレオンギルドマスターの謹慎後解雇、及び冒険者登録から現在までの全功績の抹消という処分を決定。
コモテのギルド支部には本部から職員が派遣されることとなった。
冒険者ギルド本部へ特定のギルド支部の苦情が、しかも一度に大量に寄せられるということは非常に珍しい事例であったが、苦情を出した人の話によれば「小柄でタヌキみたいな色の髪をした冒険者風の少年が、苦情を出すやり方を懇切丁寧に教えてくれた」とのことであった。
ソマリ男爵領コモテの町の商業ギルドに、ヨーナス武器店のオーナーヨーナスとボウガン職人ルッツの連名で『安全装置付きボウガン』という新作商品が登録された。
このボウガンは不使用時には引き金を引いても発射されない仕組みで、従来の物よりも格段に安全ということで、冒険者を中心に爆発的な人気を博す。
これによりヨーナス武器店は元祖の店として、ルッツ職人は考案者として一躍その名を知られることとなる。
そしてその数年後のこと、アト王国王都トラネオにおいて開催されたオークションにて、『安全装置付きボウガン・ルッツ職人最初の試作品』なる品が出品された。
当時既に王都トラネオに自分の店を構えていたルッツ職人が本物であると認めたこと、かなり使い込まれてはいたものの、手入れはしっかりとされており状態も良好だったことから貴族のコレクターに金貨5枚で落札となった。
さらにその1ヶ月程後、王都トラネオの武器屋街の一角にあるルッツ職人の店から、最新モデルの新品のボウガンを抱えてほくほく顔で出てくる、小柄でタヌキ色の髪をした冒険者風の男の姿があった。
既に1年先まで予約の入っているルッツ職人が、その予約を後回しにしてまでボウガンの作成に取りかかったという彼。
一体何者だろうと店の職人や店員達は噂し合ったが、ルッツ職人はただ苦笑いを浮かべるだけだったという。
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