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12. こうしゃくけ の そのご

よろしくお願いします。

長ゼリフがあります。

デナエクスト家の一族と家臣達の処刑は、先日執り行われた。


ザファーラン先代公爵の最後に残った側室であるカレンダ夫人は牢屋で毒杯、反乱を主導していたゴッドワルド達生き残った家臣一同は、ザシオーン市内で公開処刑となった。


僕達は特に見に行ったりはしなかったのだけれど、粛々と、というよりも、ほとんど反応を示さずに刑を受け入れたカレンダ夫人に対して、ゴッドワルド達は「我々には帝国内の貴族が味方についている!必ず援軍が来る!そうなっていざ泣きを見ても許してやらないからな!」などと刑場に引き出される間際まで主張していたらしい。


当然そんなものが来るわけもなく、家臣達は全員泣きわめきながら首をはねられたとのこと。


実際帝国政府の方でもゴッドワルド達が言っていたことの調査は行ったのだけれど、帝国貴族達は皆して『反乱なんて話聞いたこともない。仮に戦をするにしても、デナエクスト家みたいな弱小貴族を旗印にするなんてあり得ない。変な疑いをかけられるのは心外だ』と言っていたのだそうな。


なお、旧デナエクスト領周辺の貴族家には案の定というか、デナエクスト家から逃げた騎士の生き残りやら使用人やらが逃げ込んで来たという。


彼らは「連合の盟主たるデナエクスト家の緊急の時!」「今こそ決起を!」なんて叫んでいたらしいのだけれど、駆け込まれた家の貴族達には何のことやらわからない。


こんなのを受け入れて帝国から変な疑いをかけられるのはごめんだと、その場で全員捕まえて帝都に送りつけて来たのだそうな。


今この帝城にはそうした連中が続々と届けられており、後でまとめて処分する予定とのこと。



そして、ゴッドワルド達の処刑が決定したのと同じ日、謁見の場にてマリアネーラ様の公爵への臣籍降下の件と旧デナエクスト領を領地として受ける件が、無事正式に認められた。


マリアネーラ様は「殿下」ではなくなり、新たな家名として「『ヴィスライト』」という苗字を皇帝陛下から賜った。


これからはマリアネーラ様は『マリアネーラ・ホワイト・ヴィスライト公爵』ということになる。

 

ただ臣籍降下ともなればやっぱり色々と面倒な手続きが必要になるので、正式に新ヴィスライト領へ赴任するのは、もう少し先のことになるらしい。


その手続きの間、マリアネーラ様が宮廷内で集めていた新たに家臣となる人達を、引っ越しの準備が出来た人から少しずつ領地へ送っていく予定とのことである。




そして、デナエクスト家の長男であるディーンさんとその娘のタチアちゃんが、なんで処刑されずに生きてここにいるのかというと……


「まさか、替え玉を立てるとは……」


「言っとくけど、これ無茶苦茶力技だからね?陛下が協力してくださったから出来たことだからね?」



そう、簡単に言ってしまうと、もう処刑が確定してる騎士達の中から適当なのを1人見つくろって、そいつをジェイミル様として処刑させたのだ。


両陛下との面談の場で、ジェイミル様の処刑を口にした僕がアリサやユーナやマリアネーラ殿下、果てには皇后陛下にまでも「お前には人の心が無いのか」と責め立てられながら出した案がこれである。


ちょうど顔面陥没した若い騎士が1人いたので、陛下以下関係者の口裏合わせの下他の騎士達とは別の牢屋に隔離して、そこで毒を飲ませたというわけだ。


ディーンさんについては「デナエクスト家の長男?何馬鹿なこと言ってるんですか、この人は事態の解決に貢献してくれたクリクピナス市在住の一平民ですよ?滅多なこと言うと処罰されちゃいますよ?」とこういう体裁である。


言うまでもなく、皇帝陛下やその他関係者が皆して口裏を合わせたから出来たことだ。



一応、表には出ない裏取引の世界においては、これにてディーンさんのジェイミル氏としての過去は完全に抹消。


完全に平民となったディーンさんとその娘タチアちゃん、そしてプレセアさんについては、心ならずもこの度の反乱計画に関わっていた(正確には、知っていながら通報しなかった)罪で、帝都ザシオーンからの追放処分となった。


この追放処分というのは、単に出て行けというだけではなく、生涯このザシオーンに入ることを許されない、というものであるのだけれど、ディーンさん達にとっては別段それで困るものではない。


ともかく、ディーンさん達も無事だったということで、なんとか一息吐けたというところである。



ただこの一件で僕達、噂では帝国政府内の、デナエクスト家完全断絶を主張していた一派からはかなり嫌われてしまったらしい。


実際城の中を歩いている時、廊下で前から来た官僚風の人から氷のような目で睨まれたり、すれ違う際に聞こえよがしに舌打ちをされたりといったことはある。


今はまだその程度ですんでいるとはいえ、いずれそうした人達から何かしら嫌がらせのようなものを食らう可能性が無いとも言い切れないので、僕達も出来るだけ早くにこの城を退去した方が良いのかもしれない。




ディーンさんとプレセアさん、タチアちゃんについてはもう数日間だけこの帝城に滞在し、その後クイイユへ向けて発つとのこと。


僕達もそれに同道してクイイユへ行くのが良いだろうか。


マリアネーラ殿下にその旨を相談すると「ならばディーンさん達の護衛をして、一緒にクイイユへ戻るのが良いでしょう。今旧デナエクスト領を治めている代官には手紙を書いておくので、クリクピナスの館に滞在して建物の管理をしておいてほしいですわ」とのことだった。


であれば僕達、これまでは遊び呆けるだけだったけど、これから出立までに色々と準備を整えておかなければならない。


今後は僕達、あのクリクピナス市を拠点とすることになるんだな。



「ゴッドワルド・ピニデン他デナエクスト家が家臣一同。畏れ多くも皇帝陛下に対し反乱を企てし罪により、ただ今より刑を執行する。神妙にせよ」


「援軍……」


「何?」


「援軍が、必ず来る!帝国全土の皇家に不満を持つ貴族達の連合軍が、我らを助けに今にもここへ押し寄せる!貴様ら、よく考えるのだ!数十万の大軍が帝都を包囲してから我らに命乞いをしたとて遅いのだぞ!」


「まだ言っているのか……政府でもそのことについては調査を行い、結果そのような大規模な反乱計画などは存在せぬと既に判明している。事ここに至っても帝国内に挙兵の気配などは無いし、ザシオーンの周辺にも未だ反乱軍など一兵の姿も無い。援軍などは来ぬ」


「援軍は来る!我らが真なるエクスト家の大義、腐敗した皇家などに負けはせぬ!」


「その真なるエクスト家とやらも、この度の貴公らの短絡的な行動の結果完全に滅ぶこととなったわけだが、それが貴公らにとっての大義だったのか?元々デナエクスト家には、グレイシャーシルクの交易で得た莫大な富があったのだ。それを利用して帝国内に影響力を広げていくことも、いずれは貴族として大きく勢力を増やすこと、場合によっては功績を認められて皇家の一員に返り咲くことも出来たかもしれん」


「そんなもの……そんなもの!真なるエクスト家の大願は!」


「しかしこの度の一件にて、それも叶わぬこととなった。もう既に、ザファーラン公爵の側室並びに子息の処刑は執り行われた。貴公らの行いの結果、デナエクスト家は完全に終わるのだ。それが本当に、デナエクスト家の祖アジナバル殿下の願いだったのか?大願とは、アジナバル殿下の血筋が生き延びていくことではなかったのか?」


「だ、黙れ……黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇっ!!我らの……我らの大義は……」

お読みいただきありがとうございます。

また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。

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