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メインクーン・ダンス〜異世界しっぽ冒険記〜  作者: オー
デナエクスト家の一族
405/453

66. ゆうしゃ に ついて

よろしくお願いします。

説明回になります。

日記とディーンさんの話から、わかったことがもう1つある。


それは僕達が戦った、勇者ウーヴィン達のこと。



記述によればウーヴィンは、ある日ゴッドワルドが突然ザファーラン先代公爵の前に連れてきた少年とのこと。


猫の額のように狭いデナエクスト公爵領の片隅にある、住んでいる人は20人程の小さな名も無い集落。


ウーヴィンはその集落に生まれて、両親の元で木こりや野良仕事の手伝いをして暮らす、ごく普通の少年だった。


詳しい経緯は不明だけれど、そんな彼がある日、妖精ルルジナと出会った。


男女の恋愛感情とはまた違うものなのかもしれないけど、とにかくルルジナはウーヴィンを好きになり、そしてウーヴィンに加護を与えた。


妖精の加護を受けて身体は頑丈になり、力も以前よりはるかに強くなったウーヴィンは、当初は妙な野心などを持つでもなく、強くなった能力を活かして一層仕事に精を出していた。


そしてそんなウーヴィンに、デナエクスト家の家臣達は目をつけた。



領内パトロールの際にウーヴィンが住んでいた集落を訪れ、妖精の加護を受けた少年のことを知ったゴッドワルド達。


妖精の加護を受けた少年など、人類史全体から見ても超レアな存在。


しかも残されている伝説や言い伝えのどれもが、一騎当千の力を発揮して戦や魔物討伐などで大いに活躍したというもの。


これは鍛えれば皇家打倒の大きな力になることは間違いないと考え、ウーヴィンをおだててすかしてデナエクスト家に連れ帰ると、そこで教育と鍛錬を始めた。


ザファーラン先代公爵やディーンさんからは、これは誘拐ではないかと苦言を呈したものの、家臣達からは身分の問題や皇家打倒の大きな力になる可能性、そして何よりも強引に連れて来たわけではなく本人の望んだことであると反論されて、それ以上は強くは出られなかったのだそう。



そして実際、訓練を始めてからのウーヴィンのレベルアップは凄まじかった。


1年も経たないうちに、ウーヴィンの実力は家臣団の誰もが敵わない程に上達。


戦い方がややスペック任せで直線的なきらいはあるものの、彼が独力で編み出した斬撃波の威力と使い勝手の良さはまさに脅威の一言。


さらにはピンチになると、ウーヴィンを助けるために妖精のルルジナが前に出て強力な魔法をぶちかましてくるという、いつでも切れる強力な切り札まで付いている。


加えてウーヴィンのご機嫌取りにと、ちょうどその時領内に滞在していた強力な魔法使いの女子と、ウーヴィンに心酔気味だった家臣の厄介者の娘を愛人兼パーティメンバーとしてあてがってみたら、なんとその2人にもルルジナが加護を与えるという嬉しい誤算が発生した。


さすがに他の騎士達には加護はもらえなかったものの、史上まれな妖精の加護持ちを3人抱えているというのは、騎士団にとっては大きな強み。


さらにさらに、交易で得たツテを使ってウーヴィン達を暗黒大陸へ武者修行に出してみたところ、なんとアンデッドドラゴンを討伐してドラゴン数体分の骨を持ち帰るという大戦果まで挙げてきた。


そんなウーヴィンに、ゴッドワルド達家臣団は大感激&大絶賛。


彼こそデナエクスト家の希望の星、皇家打倒の勝利の鍵と褒めそやし、ついには彼を「勇者」とまで呼ぶようになった。



そして、彼らの望み通りにことが運んだのも、ここまでだった。


ほんの少し前まで、田舎の集落に住むごく普通の少年だったところにいきなり強大な力を与えられ、その上今までは雲の上の人だった騎士や貴族の人達からやれ勇者様よ当家の救世主様よとおだてられ、デナエクスト家の財力を元に欲しい武器も食べたい物もなんでも買ってもらえるという環境に放り込まれたウーヴィン。


ある意味当然の話として、そんな贅沢生活に味をしめたウーヴィンは日に日に増長する。


デナエクスト家への要求はエスカレートし、浪費も派手に、普段の振る舞いも傍若無人に、驕り高ぶったものになっていく。


咎めようにも、ウーヴィンはその時すでに騎士団の全員でかかっても敵わない程に強くなっていたので実力行使で押さえるということが出来ず、付き人のリレンやエーフィアにとりなしを頼むも、片や貴族の贅沢生活にしか興味なし、片や「ア゛ァン?勇者ウーヴィン様の決めたことに文句あんのかこの野郎ぶっ◯すぞ」という態度で話にならない。


しまいにはウーヴィン「勇者たる自分に下賤な親は相応しくない」と集落の実家に戻って、そこで静かに暮らしていた両親を斬り殺してしまった。


そんな所業に対しても、ルルジナやエーフィアは「ウーヴィンは正しい!ウーヴィンこそが正義!」と騒ぐばかり。


来客などに対してはまだ外面良く振る舞うものの、どんどん手のつけられなくなるウーヴィン達に困り果てるゴッドワルド達。



ザファーラン先代公爵は領民に被害が出ることを危惧する一方で、そんな家臣達には内心で「ざまぁ」と思っていたとのことだった。

お読みいただきありがとうございます。

また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。

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