13. もりのなか の そうぐう
よろしくお願いします。
翌朝、目を覚ました僕は朝食を済ませると、責任者の騎士さんに1週間程出かける申請をする。
庭先で軽くククリの素振りとボウガンの抜き撃ちの練習をしてから、旅の準備を整え宿舎を出た。
まずは武器屋に向かって手入れを頼んでいたククリを受け取り、次に馬車の停車場に行って南の方に向かう馬車を探す。
ちょうど乗り合い馬車に空席があったので、森まで乗せてもらうことにした。
ランク的には1番下だけどそこは問題無い。
乗り合い馬車にランク?と思われるかもしれないけど有るんですこれが。
ただランクといっても、冒険者ランクみたいに明確に分けられてるものではなく、料金と乗客の待遇に応じて大体3段階に自然に分かれてる形になっているというもの。
今回僕が乗る1番下のランクは、本当にただ乗って移動するだけ。
道中の食事などは全部自分で用意になるし、護衛なども無いので何かあった場合自分の身は自分で守らなければならない。
なのでこのランクの馬車を使うのは本当にお金の無い人か、基本的には冒険者になる。
その上のランクになると馬車に護衛が付く。
護衛は依頼を受けた冒険者だったり、乗り合い馬車を運営する運輸ギルドや商会が雇っている用心棒だったりと色々。
食事などについては、こちらのランクの場合も自分で用意になる。
ただし道の途中で町や村などを通ることがあれば、そこにある食堂によってくれたりなんかもする。
一般の人が移動をするのに好まれるのがこのタイプ。
更に上のランクになると、荷馬車が同行して護衛と食事が付くようになる。
あとは料金に応じて、車と護衛と食事の質がピンからキリまでといった感じ。
ついでに言うと、一概に馬車とはいっても馬が牽いているとは限らない。
ゴウヌロンやコクルージアン、ロウレンバールといった牛や馬や、ヒョウの形をした魔獣が牽いているものもある。
そういうのは魔獣車と呼び、普通の馬車よりも格段に移動スピードが速い。
ただしその分、乗車賃が非常に高額だったりするのだけど。
僕が乗るのは領都シンカ行きではなく、ワイバーンと遭遇した例の森の手前で方向を変えて、別の町に向かう馬車。
森の側で下ろしてくれと言ったら御者さんは不思議そうな顔をしていたけど、僕の冒険者姿を見て薬草採集か何かだろうと納得してくれた様だった。
コモテの町を出発してから、馬車に揺られて1日と少し。
頼んであったとおりに森の近くで降ろしてもらう。
ここでもう一度ククリとボウガンの状態をチェックし直してから、僕はコモテに向かう時も通った森の奥へ続く道を歩き出した。
まず最初にワイバーンの襲撃があった場所を確認に行く。
森には相変わらず魔物も、獣の気配も無い。
鳥の声、虫の声も1つとして聞こえてこない。
改めて見てみると、これはやっぱり異常な状況だ。
この森で何かが起きているのは間違いなさそう。
実際僕自身も、首の後ろあたりにチリチリとした僅かな違和感のようなものを感じている。
ただどういうわけか、命の危険のような嫌な感じはしていない。
1日森の中の道を歩いて襲撃現場に着くと戦闘の跡はもうある程度片付けられていて、布を被せて置いてあった騎士さんの遺体も無くなっていた。
どうやら既に回収が終わってたみたいだ。
そういえばこの森に来る途中で軍用馬車とすれ違ったっけ、多分あれが回収部隊だったんだろう。
さてここから森の調査に移ろうと思うのだけど、まずは何処から調べたらいいものやら。
ワイバーンの痕跡を辿れればと思っていたのだけど、来た方向がわかるような跡はざっと見た感じ無い。
考えてみればワイバーンは空を飛んでいるのだから、当然といえば当然だ。
それにしても参ったな、いきなり手がかりが無くなってしまったぞ。
さてどうしよう。
とりあえず来ては見たものの、ちょっと考え無しではあったかな。
え~と……確かワイバーンって普通なら、森の奥とか山の上とかに住むって話だったよな。
ここは取り敢えず、山の方に向かって進んでみるか。
ここからだと近い山は……東の方角だな。
さて、それじゃあ行ってみよう。
こうして今後の方針を思い切り適当に決めた僕。
道を逸れてから木々に布などで目印を付けながら、森の中を歩くこと半日程。
襲撃地点から1番近い山の麓に差し掛かった僕の前に、それは現れた。
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