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8. ぎるどと の けんか

よろしくお願いします。


今回はヘイト回収に続いてのヘイト回になります。

「何が低ランクじゃ!誰だって最初は下積みからじゃろうが!わざわざ歓迎しろなどとは言うておらん!この町に着いたという報告をしに来ただけじゃ!それを何の話も聞かず!いきなり帰れとはなんじゃ!これがこの町のギルドの対応か!?それ以前に良い歳をした大人のすることか!?一体何じゃこのイカれたギルドは!」


「てめえ!何騒いでやがる!」



どやどやと集まってきた野次馬を前に大声でギルドを罵っていると、ギルドのドアが勢いよく開いてギルドマスターが飛び出してきた。


ドアの奥には唖然とした受付嬢の姿も見える。


「黙りやがれこの野郎!」


掴みかかってきたギルドマスターをひらりひらりとかわす。


この人あんまり動きが速くないな。


昔は冒険者だったらしいけど、ブランクで動きが鈍ったかな?


悪いけどこちとら身の軽さには自信があるんだ。



腕を振り回して襲ってくるのをあしらいながら、思いつく限りの言葉でギルドとギルドマスターを罵っていると、野次馬の中からも「そうだ!その通りだ!」「依頼しに行っても態度悪いぞ!」「依頼料だってぼったくりだ!」という声が上がり出す。


僕はしばらくの間、そんなあまり褒められたものではない声援を受けながら、ギルドマスターから逃げつつ大声を張り上げ続けた。




「わかった!わかったからもう止めろ!」


10分程も鬼ごっこを続けた結果、遂にギルドマスターがダウン。


ぜえぜえと肩で息をしながら音を上げてきたので、そこで僕も叫ぶのを止めた。


へたり込んでいるギルドマスターの前にしゃがんで、その顔を覗き込む。


「わかったというのは何が?そしてその上で何をどう対応してくれるの?」


「お前の依頼の受注を拒否したり、追い返したりするようなことはしない!」


忌々しげに僕を睨み付けながら、吐き捨てるように言うギルドマスター。


あんまり反省しているように見えない。


「僕だけにじゃなくて、今後低ランクだろうと他所の人だろうと、ギルドに来た皆にその態度を改める。それからさっきの僕に対する暴言の謝罪」


「ぐ……てめえ、調子に「ここのギルマスは鬼……!」わかった悪かった謝る!ギルドに来る奴全員にもだ!」


ここにいる皆が証人ね、と僕はギルドマスターに言い置いて、そして立ち上がって野次馬の人達の方を向く。


後はこの騒動の収拾。


すーっと息を吸い込んで、皆に向かって叫んだ。


「今後は改めるそうで〜〜す!!」




僕の声を受けて周囲に拍手の音が響き渡り、野次馬達は笑いながら解散していった。


なんか歩き去った人達の中に、衛兵さんの姿もあったような気がする。


さて、と僕は再びギルドの中に入った。


へたり込んだままのギルドマスターは……まあいいや、放っとけ。


そういえばあれだけ騒いでたのに、この町の冒険者とか、誰もギルドマスターを助けに来なかったな。



カウンターの前に行き、慌てて戻った受付嬢の前で、マジックバッグから取り出したシャドウタイガーの爪を10本程カウンターに並べる。


「シャドウタイガーの爪です。買い取りお願いします」


「シャドウタイガー……ですか?あの2級の?」


受付嬢は驚きの表情を浮かべ、それがすぐに訝しげな顔に、そして疑いの眼差しへ変わる。


「嘘を吐くならもう少しましなものにしたらどうですか。なんで6級の低ランク冒険者が2級の魔物の素材を持っているんですか。虚偽の申告は罪になることだってありますよ」



ハナから信じられてない。


いや確かに駆け出しの冒険者が町を壊滅させるような強力な魔物の素材持ってるとか、信じられないのはわかるけどさ。


でもそんなの鑑定すれば一発でわかることだよね。


ギルドなら鑑定魔法使える人いるはずなんだから、そんなすぐバレるような嘘なんか吐かないって。



「いや、本物です。鑑定してもらえればすぐに………」


「しつこいですね。シャドウタイガーとか言いましたがどういう魔物かわかってるんですか?忙しいので法螺話に付き合っている暇は無いんです。いい加減にしないと衛兵を呼びますよ。わかったらお引き取り下さい」


カチン。


低ランクの次は詐欺師扱い。


あのギルドマスターにしてこの受付嬢ありか。


いい加減頭きた、もうこのギルドに期待なんかするもんか。


僕は、じゃあもういいです、とだけ言ってシャドウタイガーの爪をマジックバッグに仕舞うと、汗だくで入って来たギルドマスターの脇をすり抜けてギルドを出た。




あ〜腹立つなあもう。


僕は公園のベンチに腰掛けて、近くの市場で買って来た瓜をがつがつと食べていた。


やけ食いですよもう。


僕は瓜の汁で濡れた口元を拭って、7個目の瓜に手を伸ばす。


はあ……あんなギルドで依頼なんか受けたくないな。


今度顔なんか出したらどんな嫌味を言われるか。


この町ではギルドに行くのは必要最小限にしよう。


今持ってる素材をどこかに売れば、当面のお金は作れるだろう。


後はシャドウタイガーの皮を服に仕立ててもらって……ああ服といえばアリサさんが、職人のいる店を紹介してくれるって言ってたな。


もう宿舎に戻ってるかな?


宿舎に戻ることにした僕はベンチから立ち上がると、近くにあったゴミ捨て用の穴に瓜の皮をまとめて放り込んだ。




僕が泊まることになる騎士団の宿舎はかなり大きな建物で、大体200人くらいなら泊まれそうなぐらいの大きさがある。


一方でここ、コモテの町に常駐する騎士団の人数は現在30人、多い時でもせいぜい50人程なのだそうで、普段は訓練や警備隊と一緒に町の内外の治安維持などにあたっている。


交易の要衝の町なんだし、本当ならもっといてもよさそうな気もする。


その一方で、特に緊張状態にあるわけでもない国との国境に大兵力を置いても仕方ないし、そんなことして下手したら余計な外交問題の火種にもなりかねないので、常駐兵力は最小限にってのはありなのかもしれない。


ただ聞いた話によると、これも単純にソマリ男爵による予算削減が理由らしい。


ちなみにアリサさんはシャルロットお嬢様の護衛隊の隊長という立場があるので、彼女には個室と執務室が割り当てられる。


立場的には責任者とまではいかないけど、ある程度の融通を利かせられる位置にはいるそうな。




僕が宿舎に帰るとアリサさんは少し前に戻っているとのことで、アリサさんの執務室を教えてもらった。


執務室を訪ねると、アリサさんは机に座って書類に向かっているところだった。


「こんにちは」


「コタロウか。すまないな、まだ仕事が終わっていないんだ。さっきは出かけていたみたいだったが、冒険者ギルドにでも行っていたのか?」


「はい、ちょっとギルマスとケンカして来ました」


「待て、ギルドマスターとケンカって言ったか。何があった?」


「だって顔合わせるなり『他所者で低ランクは帰れ』とか言うんですよ?受付からは詐欺師扱いで素材の買い取り拒否されるし」


思い出すだけでも腹が立つ。


「最近ここの冒険者ギルドの評判が良くないという噂は聞いていたが……」


「ユーナさんからも聞いてましたが、予想以上でしたねえ」


僕はため息を吐く。


まあいつまでも気にしてても仕方ないし、今後はなるべく関わらないようにするつもりだけどさ。



「やれやれ……まあギルドのことについては後でユーナにでも話を聞くとして、それで何か用か?」


疲れた顔で話を変えてくるアリサさん。


「いえ、先日言ってた革職人さんのいるお店を教えていただけたらな、と思ったんですが、お忙しいならまた後にでも」


「ああそのことか、少し待て。私が案内してやれれば一番良かったんだが、今はそうもいかないからな……これでわかるか?」


アリサさんは紙を1枚取って、そこにさらさらと簡単な地図を描いてくれた。


「場所はここから歩いて30分程の所だ。大通りから一本入った場所にあるから、わからなければ近くの人に訊くと良い。名前は『ランドルフ工房』で、売店は経営していない。作った物を契約している店に卸したり、注文を受けて作ったりといったことを専門にやっている工房だ」


おお、オーダーメイド専門の工房か。


それでやっていけるってことは、それだけ腕が良いってことだな、これは楽しみだ。


「どうもありがとうございます。行ってみます」


「夕食の時間までには戻れよ」



アリサさんに頭を下げて部屋を出る。


部屋を出ながら、なんかお母さんみたいだなあ、なんて思っていると後ろから殺気が飛んできた。


考えてたことがバレたんだろうか。


恐るべし女の勘。

お読みいただきありがとうございます。


また、評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。



受付嬢へのヘイト回収はしばらく後になります。

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