18. こうざん の まち
よろしくお願いします。
僕達は馬車に乗って街道を進み、1週間程して隣領エアルドリー伯爵領の領都マリゾー市に到着。
その町で1日休息を取った後、山道を3日程進んで目的地であるワムラダの町に着いた。
ワムラダの町には前にも述べた通り、鉄を産出する鉱山がある。
その鉱山を経営しているのが、ルクク商会という商会。
ルクク商会はワムラダの町の鉱山運営と、主にマリゾー市との鉄鉱石の取引を行っている商会で、それ以外の商売などには今のところ手を広げたりはしていない。
というのも、そもそもルクク商会というのが、ワムラダの町の鉱山を開発するために立ち上げられた商会なのだという。
そんなワムラダの町は鉱山の町ということで、当然の話山の中にある。
領都マリゾー市が海岸線から少し内陸に入った場所にあって、ワムラダの町はそこからさらに山間に入ったところ。
山に入るということは、海から離れるということ。
海から離れるということは、海魚が食べられなくなるということ。
そう、また海魚の無い生活に逆戻りである。
海沿いの街道を走っていた時はまだ良かったものの、海から離れる程に憔悴していく僕を見てアリサとユーナとサテルさん、加えて馭者のローレンさんまでもが呆れた顔をしていた。
まあ何はともあれ、無事にワムラダの町に入れた僕達。
入り口の門をくぐり抜けると門前はちょっとした広場になっていて、その少し奥が繁華街となっているみたいだ。
色とりどりの看板を掲げた建物が建ち並んでいるのが見える。
鉱山の仕事は重労働なので、こうした町には労働者の息抜きのため必然的にお酒や女性とイチャイチャなどの娯楽が発達するのだそうな。
場所柄にもよるのだけど、鉱山で働く労働者の間では、仕事の合間に博打なども盛んに行われていたりもするらしい。
ローレンさんの話では、繁華街の奥が住宅街で、更にその奥が鉱山関連の倉庫や作業場、そして1番奥の山裾に鉱山の入口があるとのこと。
「さて、ワムラダに着きましたが、これからどうしましょう?」
「そうですね。まずは着いたということで宿を確保しましょう。ローレンさんのおすすめの宿か何かあれば連れて行ってもらえますか?部屋が取れたら、僕達はここの町長さんに挨拶に行ってみます」
「了解しました」
ローレンさんと今後の予定を話し合いながら、僕達は町の中へ馬車を進める。
ローレンさんには、この町に来たのは人捜しの依頼でとだけ言ってある。
町長さんに挨拶に行ったら、せっかくなので合わせてフランシスさんについて何か知らないか聞いてみるのが良いだろう。
まだ日も高いせいか人気の少ない繁華街を通り抜けていると、町の奥の方から何やら騒がしい声が聞こえてきた。
ローレンさんが案内してくれたのは、以前来た際に泊まったという『クロダイ屋』という宿屋。
乗り合い馬車の馭者や行商人の御用達だという、簡素な造りではあるけど小綺麗な宿屋だった。
訪ねた時はご主人は留守にしていた様だったけど、女将さんが対応してくれた。
なんだか話し好きそうな顔をした人だ。
「さっき、お山の方で何か騒ぎがあったみたいでねえ。うちの旦那が様子を見に行ったんだけど、まだ帰ってきてないんだよ。あんたら、何か知らないかい?」
「いや〜私らも、たった今この町に着いたばかりなもんだから」
チェックインがてら、ローレンさんと話をしている女将さん。
お山というのは鉱山のことか。
確かに町の奥の方で何やら騒いでたみたいだったけど、何かあったのだろうか。
とりあえずローレンさんは馬車を車庫に入れてから部屋で一休みするそうで、僕達はこれから女将さんから教えてもらった町長さんの家に行ってみることにした。
ついでに、何の騒ぎなのかも見て来ることにしようか。
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