13. りょうしゅ の いらい
よろしくお願いします。
「依頼……ですか」
「私達に依頼があるというのは聞いておりましたが、彼らにもですかの?」
僕とキンセンカさんの問いに、軽く頷くシュガン子爵様。
「はい。とは言っても、『赤熱の旋風』さんと『爆影虎』さんにはそれぞれ別の依頼をお願いしたいのですが」
別の依頼とな。
クワンナ市防衛のお礼では話は終わらなかったか。
あまり面倒なことではないと良いんだけどな。
子爵様はまず、『赤熱の旋風』の4人に向き直った。
「まず皆さんには、こちらにおわしますマリアネーラ殿下の護衛と、領内のご案内をお願いしたいのです」
「殿下の……ですか」
シュガン子爵様からの依頼に、少しだけ驚いた様子のアリアナさんとキンセンカさん。
ローズさんとラックル君については、目を丸くして完全に仰天の表情をしている。
本来なら王族ともなれば、護衛なども冒険者ではなく、本職の騎士や兵士が対応するもの。
合わせてこうした外遊先などでは、王宮から同行した護衛に加えて、滞在先の貴族や長が要人の安全についての責任を負う。
しかし今回のマリアネーラ殿下の訪問はお忍びということで、連れている護衛も最小限。
そこに大っぴらに大勢の護衛を付けて目立ってしまうというのはよろしくない。
たとえ大勢ではなくても、シュガン子爵家が戦力を動かしたとなればどうしても注目はされてしまう。
出来る限り余人には知られないように殿下の安全を守る必要があるということで子爵様が出した考えというのが、1級冒険者パーティである『赤熱の旋風』に依頼するというものだった。
彼女達であればここイシャーク市を拠点にしているので地理についても詳しいし、何度かシュガン子爵様からの依頼も受けているので、人柄や礼儀作法については問題無いとわかっている。
実力的にも申し分ない。
そういうわけで『赤熱の旋風』には、マリアネーラ殿下がここシュガン子爵領に滞在している間だけその護衛に付いてほしいというのが、子爵様からの依頼だった。
報酬については後程話を詰めるとのことだったけど、依頼内容からしても相当な高額になることは間違い無いだろう。
説明を聞いて、キンセンカさんが「なるほど」と頷く。
隣に座っていたアリアナさんと軽く目配せをし合うと、シュガン子爵様とマリアネーラ殿下に向き直って頭を下げた。
「この依頼、お引き受けさせていただきます。殿下、何卒よろしくお願いいたします」
「……!」
冷静な顔をしているキンセンカさんとアリアナさんに対して、ローズさんとラックル君は一瞬身体を固くした。
1級パーティとはいえ、さすがに皇女様の護衛依頼なんてのはそうそうあるものではないだろう。
緊張と不安の表情を浮かべているローズさんとラックル君に、アリアナさんが「これも経験ですよ」と優しく声をかけている。
「お引き受けいただき、ありがとうございます。詳しい話については、別室を用意してありますので、そちらへ……」
「護衛を受けてくれて感謝いたします。どうかよろしくお願いいたします」
シュガン子爵様の言葉に、マリアネーラ殿下と『赤熱の旋風』の人達は立ち上がり、護衛の人達と連れ立って部屋を出て行く。
扉から出る際、ローズさんが僕達にこっそりと、疲れた笑顔を見せて行った。
◇
「領主様と、皇家からもお金が出たよ」
「なんだか、凄いことになってしまったな」
「ねぇ、いくらくらい入ってたの?」
「……この硬貨は?今まで見たこと無いな……」
「ああ、白金貨ですね。すごい、2枚も入ってる」
「…………白金貨!?」
「2枚入ってるので……1枚をサテルさん、もう1枚を僕達が取るってことにしましょうか」
「ちょま!?」
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