12. いくさ の ほうこく
よろしくお願いします。
嘘は吐いていない。
敵100人を船ごと爆殺していようが、討ち取った中に傭兵団の団長と戦闘団長が含まれていようが、それでも数人は数人だ。
僕の返答にアリサとユーナが「またこいつは……」という顔で、サテルさんが呆れ顔でこちらを見ている。
そんな皆の視線に気づいたか、顔を上げたマリアネーラ殿下が半目で僕達を見ながら、低い声で言ってきた。
「本当ですか?わかっているとは思いますが、皇女に嘘を吐くというのは重罪ですよ?」
「すみませんでした。彼の話には間違いがありまして、こちらの『爆影虎』の人達は3人で、クワンナの港を封鎖した敵の船4隻を沈めるという大手柄を挙げています。それから敵の団長と副団長を倒したのがこちらのアリサさん。兵に隠れていた団長を見つけ出したのがこちらのユーナさん。そして団長と副団長を誘い出して倒す作戦と、合わせて敵の兵士を追い払う作戦を考えたのが、こちらのコタロウ君です」
「な!?」
「夫は普段から自分の手柄を謙遜する癖がありまして。決して殿下を謀ろうなどといった意図はございません。何卒、お許しを願います」
マリアネーラ殿下の脅しに、サテルさんが白旗を上げた。
震え声で報告するサテルさんに続いてアリサが、観念したという表情で白状をする。
2人の返答を聞いて、やっぱりなという顔をしてテーブルの上で手を組むマリアネーラ殿下と、苦笑いを浮かべているシュガン子爵様。
突然の寝返りにあたふたしている僕を見て、『赤熱の旋風』の人達が堪えきれずという感じで吹き出している。
……こうなったら。
「……こちらのサテルさんは類稀な舟の繰り手にございまして、彼がいなければ僕達は敵船に近づくことすら叶いませんでした。また地理の把握、情報収集にも非常に優秀な者でして、僕が作戦を立てられたのも、彼の豊富な知識あってこそのものにございます。彼もまた、大手柄と言って差し支えないものと愚考いたします」
こうなったら道連れだとばかりに、僕はサテルさんの成果をまくし立てた。
「な!?いや、ちょっ……!俺……じゃない私は……!」
反撃にあって慌てるサテルさん。
「なんてことを言ってくれるんだ!」と僕に詰め寄るサテルさんと「くけけけけ」と笑う僕を見て、アリサとユーナが頭を抱えている。
そんな僕達を見かねたか、マリアネーラ殿下が横から制止してきた。
「内輪揉めはまあ、それぐらいにしてくださいな。そちらのサテル殿の功績についても、クワンナ市から報告は受けています。舟を出したことや市内の地理を把握して『爆影虎』の方達の援護を務めたこと、たとえ敵を倒してはおらずとも立派な成果ですよ。胸を張りなさい」
「は、はい……」
ひたすらに恐縮しているサテルさん。
シュガン子爵様はそんな彼を含めた僕達4人に向き直り、改まった口調で告げた。
「冒険者ギルドから報酬は支払われたと聞いていますが、それとは別に私達からも褒賞金を出させていただきます」
そう言って、子爵様は僕達に向けてテーブルに小袋を出した。
合わせてマリアネーラ殿下が言葉を添える。
「この度の功績については、皇家からも褒賞金を出させていただきます。子爵殿の分と合わせた金額になっているので、確認してください」
「ありがとうございます。頂戴いたします」
皆を代表して僕が袋を受け取った。
いくら入ってるのかはわからないけど、このお金は後で4人で分けることにしよう。
その後はシュガン子爵様から求められたことで、マリアネーラ殿下と『赤熱の旋風』の4人も交えてお茶を飲みながら、クワンナ市防衛戦の話をする。
僕達が小舟で敵の船団に奇襲をかけた話ではキンセンカさん達が「思い切ったことをやったものじゃのう」と感心した顔をし、門が破られ町に侵入して来た敵に対してゲリラ戦を展開した話ではシュガン子爵様が「なるほど、そういう戦い方もあるのですね」と頷いていた。
小1時間程話をしたら、やがて子爵様がもうお開きという感じで話を切った。
「いや、興味深いお話を聞かせていただいて、ありがとうございました。もっと色々と聞きたいところではあるのですが、時間もありますのでこれぐらいとさせていただきましょう」
その言葉に、軽く頷くマリアネーラ殿下と改めて頭を下げる僕達一同だった。
お礼も受け取ったし話も終わって、これで僕達の用事は終わりかなと思っていたら、シュガン子爵様は続いて別の話を切り出してきた。
「クワンナの戦いの話はこれぐらいとしまして、次にもう1つの要件についてお話しをしたいと思います。実は『赤熱の旋風』さんと『爆影虎』さんに、私から依頼をしたいと思っているのです」
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