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10. よそうがい の であい

よろしくお願いします。

シュガン子爵の城の門の前で、僕達は門番の人に話しかけて子爵様に呼ばれて来たことを伝え取り次ぎを頼もうとした。


するとそこに一緒に来た1級パーティ『赤熱の旋風』のキンセンカさんが「自分達の連れである」と言い、なんとそのまま僕達も彼女達とすんなり中に通されてしまった。


なんでも『赤熱の旋風』はこれまでに幾度かシュガン子爵からの依頼を受けており、この城にも何度か訪れていたので門番の人とも顔見知りになっていたのだそう。


しまったな。


彼女達がシュガン子爵と面識があるのなら、ここに来る途中で子爵の人となりを聞いておくんだった。


まあ今更か。




なんとなく城の中が慌ただしい気もしつつ、城のメイドさんに案内されて、応接室に通された僕達。


並べられた長椅子にパーティごとに腰かけて、出されたお茶を吹き冷ましながら待っていると、15分程して部屋のドアが開いた。



ドアを開けて部屋に入って来たのは、身なりの良い服装をした細身で背の高い男性だった。


歳は大体20過ぎくらいだろうか。


暗い茶色の髪を肩まで伸ばし、端正な顔立ちをしている。


そしてもう1人、僕と同じくらいの年齢の女性。端正な顔立ちでつややかな黒髪を背中まで伸ばし、背丈は僕と同じくらい、スレンダー体型のとても美しい人だ。


着ている物は、多分だけど背の高い男性の物よりも高級品なのではないだろうか。


彼らの後ろには帯剣した護衛が2人ずつ、計4人付いていた。

護衛がいるということは、この人達は……



椅子から立ち上がって頭を下げる僕達に男性は軽く手を上げて、少し高めの声で言った。


「ようこそおいでくださいました、『赤熱の旋風』さん。それから、あなた方が『爆影虎』の方々ですね。この度は御足労くださいましてありがとうございます。私はカルナード・オーム・シュガン。ここシュガン家の当主で、この地域の領主を拝命しております」


「いつもご依頼をいただきありがとうございます。お召しにより『赤熱の旋風』、参上いたしました」


「お初にお目にかかります。3級冒険者のコタロウと申します。妻のアリサとユーナと共に『爆影虎』というパーティを組んで活動しております。こちらは同じく3級冒険者のサテルです。この度はお声がけいただきましたこと、光栄の至りに存じ上げます」


キンセンカさんと僕がそれぞれ挨拶と自己紹介をすると、シュガン子爵様はひとつ頷いて、僕達に笑顔を返してきた。



それにしても、この人がシュガン子爵様か。


話には聞いていたけど、実際に会うとやっぱり若いな。


そして若いのもあってか、貴族にしてはかなり腰が低い。


ちなみに2級冒険者辺りまでならともかく、1級冒険者ともなればたとえ平民出身でも、貴族からそれなりの礼儀対応を受けるようになるらしい。



続いてシュガン子爵様は、隣に立っていた黒髪の若い女性を紹介してきたのだけれど、その内容に、僕達は耳を疑うことになってしまった。


「こちらのお方はグランエクスト帝国の第4皇女であらせられます、マリアネーラ・ホワイト・グランエクスト殿下です」


「……………………は?」


僕やキンセンカさんの口から、思わずといった感じで声が漏れる。



皇女?


控除でも公序でも工場でも玉女でもなく……皇女?


皇女殿下!?


この国の!?


なんでこんな所にいるんだ!?




一瞬呆けた後、はっと我に返った僕達。


「ご無礼をいたしました!」


慌てて僕、アリサ、キンセンカさん、アリアナさんが床に膝を付き、そんな僕達の様子を見たユーナ、サテルさん、ローズさん、ラックル君が戸惑いつつも少し遅れて後に続く。


僕達はこの国の国民ではないのだから、相手が王族とはいえ畏まる必要は無いのではないかって?


そんな理屈が通るのであれば、世の中苦労は無い。


そんな僕達に、マリアネーラ殿下は鷹揚に話しかけてきた。


「そんなことをしなくて良いからお立ちなさい。お忍びでの訪問です。ひざまずかせるためにあなた達を呼んだのではありません」


丁寧な口調で、嫌味な感じなどはしない。



マリアネーラ殿下とシュガン子爵様に促されて、僕達は恐縮しながら長椅子に座り直した。


同じく殿下と子爵様も向かいの椅子に腰かけたところで、皆を代表するような形で僕がマリアネーラ殿下に挨拶をする。


「ご尊顔を拝し、恐悦至極に存じ上げます。知らぬこととはいえ先程のご無礼の段、何卒お許しいただきたく、伏してお願い申し上げます」


おそるおそる言ってみると、殿下は面白そうに言葉を返してきた。


「フフッ、随分と礼儀作法に詳しい様ですわね。冒険者とのことですが、あなたはもしや、どこかの貴族の家の出ですか?」


「はい。他の皆は違うのですが、僕はアト王国の貴族の家の生まれです。礼儀作法につきましては、実家にいた際に教わりました」


「そうですか、アト王国の……」


「左様でしたか」


「そ、そうだったのか?」


「なるほどのう」


「貴族様だったんだ……」


「今の僕はただの冒険者のコタロウですので、元貴族といっても気にしないでいただけると幸いに存じます」



僕の返事にマリアネーラ殿下やシュガン子爵様、それにサテルさんや『赤熱の旋風』の面々から驚きの声が上がった。


そういえば、アリサとユーナ以外にはサテルさんにも話してなかったっけ。


まあ別に、触れ回るようなことでもないのだけれど。

お読みいただきありがとうございます。

また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。

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