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プロローグ

よろしくお願いします。

意味深な章題と思われるかもしれませんが、コタロウの過去とは関係はありません。

拝啓



日毎に寒気加わる時節となりました。皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。



僕達は今、クワンナ市から船に乗り、グランエクスト帝国シュガン子爵領領都、イシャーク市という町に来ています。


これまでに訪れた首都や公都程ではありませんが大きな町で、帝国南方の海(海が陸に大きく入り込んだ地形で『湾』と呼ばれているそうです)に面しています。



そう、海です。


僕は遂に、海に到達いたしました。


海といえば何か、そう、魚です。


いよいよ……いよいよ恋い焦がれてきた海魚がこの町に来て食べられるということで、今から待ち遠しい気持ちで胸がいっぱいです。


それから、一口に魚と言っても一体どんな美味しい料理があるものなのか、とてもとても楽しみです。



またこの町からは、海を通って他の港町に行く定期船も出ている様です。


現在僕達は、船に乗って海に出てみようか、大海原を眺めながら海沿いの道を辿ってみようか、いっそのことこの町に留まろうか、妻達と検討しているところです。


また進捗などありましたら、お手紙いたします。


本格的な寒さに向かう時節、皆様風邪など召されませぬようご自愛ください。



敬具



追伸1 イシャークの町で見つけました、珍しい工芸品をお送りいたします。


空のガラス瓶の中に帆船の模型が丸ごと入っているというもので、見た目のまま『ボトルシップ』という名前なのだそうです。


瓶の口よりも大きな船の模型が、一体どのようにして瓶の中に入ったのか、初めて見た時はとても驚いたものです。


お気に召していただけると幸いです。



追伸2 先日、ドルフ王国に向かうという大規模な傭兵団と交戦する事態となりました。


ドルフ王国内の政治的混乱は、予断を許さない状況になってきているように拝察いたします。


差し出がましい様ですが何卒ご用心いただきたく、お願い申し上げます。



「『ブラッドローズ傭兵団』が、潰滅しただと?」


「ハ、4ヶ月程前に我らが陣営への応援の依頼をかけて以降連絡が途絶えていたのですが、先日『グランエクスト帝国とスカール公国との国境近くの町を、大規模な傭兵団が襲撃した』との知らせが入ってまいりました。傭兵団は、その町の駐留軍および冒険者の奮戦により潰滅させられた(よし)にございます。その傭兵団の規模からして『ブラッドローズ傭兵団』に間違い無いかと」


「馬鹿な……我々が要請をかけた傭兵団が、なぜ帝国内の町を襲うのだ。そのようなことをする意味が無いではないか」


「かの傭兵団は、当代の団長に代替わりしてから先々代や先代のような大きな功績を挙げられてはおりません。そのことについて、団の実力の低下を心配する声も陣営内にはことの外多く……依頼の際にその指摘をしたところ、先方は『ならば土産を持って行くことにする』と申していたそうで」


「その土産とやらがこういうことか……それでやられていれば世話はない。国さえも落とすと聞いていたので声をかけたが、所詮は無頼の者ということだな。わかった、実戦経験のある2000の兵が得られないのは痛いが仕方がない。ベルマ殿下には私から話しておく」

お読みいただきありがとうございます。

また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。

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