表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/453

2. だっしゅから の じゃんぷ

よろしくお願いします。

おおぉう……



僕は戦場から少し離れた所で、道から外れた草むらの中に隠れて目の前で起きている戦いを見ていた。


道を走ってある程度まで近づいたら、いったんそこでリュックを隠して素早く武器の状態をチェックし、ボウガンには矢を装填して腰に引っかける。


いつもの戦闘体勢を整えると、今度は道から外れて森の中に身を隠しながら気配を殺して慎重に接近。


そうして可能な限り戦闘現場に近づいた僕が、草むらの中から見たものは……



おそらくは身分の高い人の物と思われる、装飾の施された豪華な馬車と、荷運び用の馬車が2台。


馬車についてるあの紋章、なんかソマリ男爵家の物に見えるけど。


その馬車を守るように取り囲んで、それぞれ武器を構える鎧を着た騎士の人達。


馬に乗っている人もいれば、歩行の人もいる。数はひのふの……7人。


その内1人は革の軽鎧を着ている、あの人だけなんか冒険者っぽい。


みんなに指示を出している騎士の人と、1人だけ軽鎧の人が女性であとは男性。


そして上空からそんな人達に襲いかかろうとしている、体長6~7mぐらいの巨大な翼の生えた2本脚のトカゲ。



あれはいわゆる、ワイバーンという奴なのではないだろうか。


ワイバーンというのは、まあ今言った通りの、大きな翼を持つ空飛ぶトカゲだ。


ドラゴンによく似ているけどあくまで別の魔物。


ドラゴンなどは非常に頭が良くて人語を解する者もいるし、中には人間より賢い者もいるそうな。


それに対してワイバーンの知能は獣と同程度、ブレスを吐く能力も無い。


それでもその飛行能力とスピードは脅威であり、認定ランクは3級。


ただし討伐には最低でも、3級以上の魔法使いもしくは遠距離攻撃の出来る者を含めたパーティを当てるのが望ましいとされる。




…………てかなんでワイバーンがこんな所にいるんだよ!?


ワイバーンってもっと森の奥地とか高山の上の方にいるもんなんじゃないの!?



……ま、まあ実際にいる以上は仕方ない。


見ると僕の目の前で戦ってる騎士の人達は、明らかに苦戦してる。


やっぱり相手が空中でこちらの攻撃が届かないのが痛い。


騎士の中に1人杖を構えた魔法使いがいて、ワイバーンが接近してきたところに氷魔法で氷柱を放っているけど、牽制が精一杯で敵の速さに付いていけてないみたい。


冒険者の女性を含めて弓持ちが2人いて矢を射ってるけど、届かないか勢いが落ちたところを打ち落とされるかかわされるかで、有効打は与えられていない。



でも、それでもあの騎士の人達は強い。


お互いの死角をカバーしながら、上手くワイバーンの攻撃を防いでいる。


精鋭部隊なのかな。


とはいえ既に何人かやられてるみたいで、地面に倒れているのが4人程。


今はお互いに決め手を欠いている状態。



でもこのままではいずれジリ貧だ。


ワイバーンと人間の騎士では、確実に騎士の体力が先に尽きる。


助けたいけど、僕の武器と力では……



さてどうする。


ワイバーンの動きをよく見ろ。


見た感じ敵の攻撃方法は1つ、上空から急降下して両脚の爪で敵を引っかける。


それでも飛び道具には警戒している様で、放たれる矢や魔法はことごとくかわされている。


でもシャドウタイガーのような、魔力による防御は見た感じ無いみたい。


騎士さん達の攻撃は矢も含め、全て回避か迎撃で対応している。


う~ん……これなら……あとは……


よし、やってみるか。




僕はじりじりと、少しずつ場所を移動しながら機会をうかがう。


狙いはワイバーンが僕に対して正面か、出来れば側面で騎士達に急降下攻撃を仕掛ける時。



様子を見ていると、これまでよりも更に上空高くに舞い上がったワイバーンが騎士達に狙いを定めて、そして翼を閉じた。


高高度からの急降下、これは僕にとっては思ってた以上のチャンス?


あとはお願い、騎士さん達しのいでよ……!


突っ込んできたワイバーンが地面近くで翼を広げて一瞬減速し、その鋭い爪を騎士達に向ける。


そうだ、いくらワイバーンといっても急降下してそのまま地面に激突するわけにはいかない。


必ず、減速して滞空する瞬間がある。


狙うのは……そこ!



僕は魔力による身体強化を最大限にかけ、草むらから飛び出しワイバーンに向かってダッシュ!


馬車の上に跳び上がり、そのまま屋根を踏み台にして更にジャンプ!


ワイバーンの顔が目前まで迫ったところで、僕はマジックバッグから火炎ビンを1本取り出し着火、そのまま思い切りワイバーンの頭めがけて投げ付けた。


こいつは鳥と同じだ。


上から相手を見下ろす、もしくは高所から獲物を襲うのには慣れているけど、逆に自分と同じ高さや自分よりも高い位置から攻撃されるのには慣れてない。



突然現れた僕に驚いて対応が出来ず、火炎ビンを顔面に喰らったワイバーン。


いきなり頭をまるごと火に包まれてパニックを起こし、上手く羽ばたくことも出来ずに地面に激突する。


着地した僕はすぐさまワイバーンに駆け寄ると、腰からククリを引き抜き悲鳴を上げてのたうち回るワイバーンの背中に飛び乗って、右の翼の付け根に思い切り突き立てた。


そのまま同じ所を狙って、何度も抉るように刃を突き刺す。



飛行能力さえ潰してしまえば、ワイバーンは一気に弱体化する。


飛べなくなったワイバーンは、まともに歩けもしないただの大きなトカゲ。


そうなれば後は騎士さん達が倒してくれる。


何も翼を切り取る必要はない。


腱さえ切ってしまえればもう翼は上がらない。



僕は痛みの咆哮を上げるワイバーンに負けじと、何度もククリを突き刺し続けた。


と、なんとか頭の火を消し止めたワイバーンが、その長い首を伸ばしてこちらを睨み付けるのが見えた。


僕は左手でククリを押さえ、右手で腰からボウガンを引き抜いてワイバーンの頭に向かって発射。


矢はワイバーンの顔面に命中し、そのヘビのような頭が仰け反る。


僕は矢の無くなったボウガンを投げ捨て、だめ押しでマジックバッグからもう1本火炎ビンを取り出し、着火してワイバーンの頭に投げつけた。


再び火に包まれた頭が地面に落ちるのを横目に見ながら、僕はまたワイバーンに刃を突き立てて、そしてふと気がついた。



あれ、こいつ……動いてない?


もしかして死んでる?

お読みいただきありがとうございます。


また、評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ