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1. こい の うた

よろしくお願いします。

クレックス子爵領の領都ラヌルを出てから、もうそろそろ1週間程。


僕は今領境を越え、ソマリ男爵領のコモテ市という町へ向かう道を歩いている。


僕の格好は旅装束はそのままに、背中にはリュック、後ろの腰にはマジックバッグとククリ、ボウガンはリュックに下げて、何かある時はすぐに取れるようにしてある。




コモテという都市は、クレックス子爵領の南隣のソマリ男爵領にある。


隣国クロウ共和国との国境に近く、3つの街道を繋ぐ交通の要衝の町で物の行き来も非常に多い。


さらにその町には腕の良い革職人がいる店があるそうなので、そこでマジックバッグに入れてあるシャドウタイガーの皮を服に仕立ててもらうつもりだ。


そういえば慌ててラヌルを出て来たので、革職人さんがいる店の名前、聞くの忘れたな。


まあそこはコモテの町に着いてから探せば良いか。



ラヌルの町で、革用品店の人に無理言って防腐処理をしてもらったシャドウタイガーの皮だけど、魔法によるなめしと合わせて処理はしたものの、何分急ぎだったので大したことは出来ていない。


ただし高ランクモンスターの皮ということで皮や毛にも魔力が通っているのだそうで、何もしなくても1ヶ月と少しくらいは腐らないらしい。


まあ今はマジックバッグに入れてあるから、防腐処理と合わせてもう少しもつだろう。


徒歩ならあと5日程でコモテの町に着くということなので、この旅の進み具合なら町に着くまでには十分間に合うはず。




遠方への旅ということで、本来なら普通は乗り合い馬車に乗るか、冒険者なら同じ方向に向かう隊商や行商人の護衛の依頼を受けたりして、一緒に行ったりするのが基本的だろう。


ただ僕はラヌルの町をかなりあわただしく出て来たものだから馬車を探す余裕も無かったし、これまで道で会ったり、途中の宿場町で会った馬車はみんな満席で断られていた。


どうも僕には馬車運が無い。


そして今の僕は冒険者ランクが6級なので、隊商の護衛の依頼を受けて馬車と一緒に移動なんてことも出来ない。


まあ無いものは仕方ないので、切り替えてのんびり歩いて行こう。




昨夜宿場町の宿で会った馬車の御者さんに訊いたら、この先コモテまではほぼほぼ平坦な道が続くみたい。


ちょっと行くとしばらく森が続くのでその辺は注意らしいけど、今は平野で見晴らしも良い。


こうした主要な街道は、町の軍隊や騎士団が訓練も兼ねて定期的に見廻りや、魔物の討伐を行っているのでそういった襲撃の心配も少ない。


ただし、その領地の領主の方針や性格にもよるのだけど、この警備隊や騎士団による見廻りや討伐というのは基本的には平地や主要道路の周辺を中心に行うものであって、脇道や山道、森の中の道などはそこまで念入りではないことも多い。


安全な所だけ見廻って危険な所を放置とかどうなんだって気もするけど、大抵の場合はそこまでやるお金が無いってのが大きな理由。


だから最終的にはやっぱり自分の身は自分で守らなきゃいけないし、商人などが旅をする時に護衛を雇うというのは大切なことなのだ。



ちなみに軍事に力を入れているベリアン侯爵領ではこうした領内の見廻りにも熱心で、ベリアン領では盗賊や魔物の襲撃に逢うことは無い、なんてことまで言われてたりする。


ただその一方でいき過ぎた軍事政策により発生した貧困による人心の荒廃で、旅人が泊まった村の住民から襲われて身ぐるみ剥がされた、なんて事件は多発しているそうな。




まあ世知辛い話はこれくらいにして、今日は何よりとても良い天気。


どこまでも晴れ渡った青空に、太陽の陽射しが暖かい。


せっかくいい気分なので軽く歌を歌いながら、真っ直ぐ伸びていく道をてくてく歩く。


歌は前世の日本の歌で、空に布で作ったでっかい魚を泳がせる歌。


歩きながらなので、ゆっくりした曲調の方じゃなくてマーチ調の方。


にしてもこの歌、昔の言葉遣いなのか、言い回しが格好良いんだけど難しい。


そして唐突に人の名前が出てくるんだけど、この人一体誰なんだろう?




次の日、僕は街道を真っ直ぐ進んで、話に聞いていた森の中に差し掛かっていた。


聞いた話だとけっこう広い森で、歩きならこの森を抜けるのに2、3日。


んで森を抜けたら1日か2日でコモテに着くとのこと。


これからしばらく森の中を歩くのかと思うと、ちょっと気が滅入るけどまあ仕方ない。


ちゃんと道があるのだし、それに沿って歩けば良いだけまし。



ただ少し困ったのが野宿。


平地みたいに見晴らしのいい所ならともかく、森の中で地面にそのまま寝るのは危ないし怖い。


なので夜は木の上に登って、太めの枝に体を縛りつけて寝てる。


前世はともかく、今世なら木に登ってもちゃんと下りられるぞ。


ただ危ないといえば、この森に入ってからまだ1度も魔物と遭ってないな。


なんか妙に森が静かなような?




そんなことを思いながら2日程森の中を歩いていると、前方からなにやら騒がしい音が聞こえてきた。


聞こえてくる音は金属音と人の怒声、何か生き物の咆哮、そしてかなり濃厚な血の臭い。


この道の先で多量の血が流れてる。どうやら誰かが魔物に襲われて戦っているようだ。


加勢するかどうかは見てからの判断として、とりあえずはどんな相手と戦っているかは確認しとく必要がある。


僕は道を音の方に向かって走り出した。

お読みいただきありがとうございます。


また、評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。



○「橘薫る」


✕「タチバナ カオルさん」

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