19. せんじょう の きしゅう
よろしくお願いします。
残酷な描写があります。ご注意ください。
僕達はそっと船縁に手をかけて、そして3人で一斉に甲板へ躍り込んだ。
「っ!?何だお前ら!?」
「敵襲!敵しゅ……!!」
側にいた敵兵をアリサが瞬く間に斬り倒し、武器を抜いて駆け付けてくる奴にはユーナが次々矢を放つ。
そして僕は、マジックバッグから取り出した赤ボトルに着火して、武器を抜いて飛び出して来た傭兵めがけて投げつけた。
「伏せて!」
僕の声に、アリサとユーナが素早く身をかばう。
同時に甲板で起こる爆発。
近くにいて爆発に巻き込まれた敵が、全身を炎に包まれてのたうち回る。
僕はもう1本、着火した赤ボトルを甲板のまだ燃えていない場所に投げた。
再度爆発が起こり、甲板に炎が広がる。
続いて、船室に出入りするための梯子のハッチ蓋を開けて、中に着火した緑ボトルを叩き込んで蓋を閉じ、ついでとばかりに側にあったロープの束を上に積み上げて重しにした。
蓋の下では毒の煙が充満し、「水持って来い!火を消せ!」と騒ぐ声が次第に咳き込みに変わり、やがてうめき声になるのが聞こえてくる。
ここで他の敵船が、こちらの船で起こっている異常に気づいた。
事故などではなく敵の襲撃と確信したらしい。
他3隻の船から怒声が上がり、続いて矢が、火球魔法が飛んでくる。
もう夜で暗いので、火球はともかく矢は闇に紛れて見え難い。
とはいえ、敵船とはかなり近づいてきているけどそれでもまだ距離はあるし、空から降ってくる矢は盾に隠れてなんとか避けられる。
一番怖いのは、間近から水平に放たれる矢だ。
遠射で勢いの落ちた矢などは、アリサとユーナが着ている革の上着に当たれば弾かれる。
ブラッドレクスやタイタニックアダーの、高ランクモンスター素材の面目躍如である。
僕たちの乗って来た小舟は敵船から見て陰にいるので、船が盾になって矢や火球が直撃する心配は今のところ無い。
小舟に気づいて襲いかかろうとする敵兵の1人をサテルさんの剣が貫き、さらに櫂で殴りつけて水に叩き落とすのが薄闇の中に見えた。
サテルさん、なんだかんだ言ってるけどやっぱり実力はある人なんだ。
攻撃してくる他の敵船にはユーナが応戦。
オブシウスドラゴンの力を乗せたユーナの矢は、敵の放つ矢や火球とは段違いの威力で、甲板に構えられた盾ごと敵兵を吹き飛ばしている。
そのうちに、この矢の威力であれば敵船の木壁を貫通出来ることに気づいたユーナが、狙いを甲板の敵兵から船の横腹に変更。
敵船の船体にいくつも大穴を開けて、敵兵が慌てふためいているのが見える。
敵船から闇雲に放たれる矢が、流れ弾でこちらの船にいる敵兵に次々当たっているけど気にしない。
盾に隠れて「撃つな!味方がいるぞ!」と叫んでいる敵兵には、忍び寄った僕が背中からククリを突き立てる。
「アリサこれ!」
「応!」
僕はアリサの側に、マジックバッグから残りの赤ボトルを全部取り出して並べた。
「……っ!ふんっ!」
僕が襲いかかってくる生き残りの敵兵と斬り結んでいる間、アリサが側で燃えていた火で着火した赤ボトルを振りかぶり、近くにいた別の船に向かって思いきり投げつけた。
彼女の剛力で投げつけられた赤ボトルが、船の甲板に着弾し爆発。
敵兵が慌てて右往左往しているのが、燃え上がる炎に照らし出されている。
「よし、続けていくぞ!」
この機を逃すまじと、並べられた赤ボトルを5本6本と、立て続けに3隻の敵船に向け投げつけるアリサ。
敵船からは反撃の矢や攻撃魔法が飛んでくるのをかわし、また襲いかかってくる生き残りの敵を斬り払いながら赤ボトルを投げ続ける。
敵の火球魔法がこちらの船に着弾して炎が燃え広がるけど、僕達は別にこの船を守る必要などは無い。
船を破壊してくれるならむしろありがたい。
と、アリサの投げた赤ボトルの1本を、敵船から放たれた火球が撃墜したのが見えた。
ただ知っての通り、投げたのは油の入った火炎瓶で、敵はそれを上空で、火炎魔法で破壊した。そしたらどうなるか。
引火した油と火の魔石が敵船に降り注ぎ、炎の海となった甲板で敵兵達の悲鳴が上がる。
あの船は、これで終わりだな。
隣に並んだもう1隻の方は……
目をやると甲板や船腹の火を、敵兵が必死に消そうとしているのが見て取れる。
さらにはユーナの矢が船腹に開けた大穴にアリサが投げた赤ボトルが飛び込み、船内でも爆発が起きた模様。
まだ水に浮いてはいるし、素人目には航行可能かどうかはわからないけど、それでもダメージは大きそう。
後はもう1隻。
今僕達がいる船から2隻を挟んで1番遠い場所にいたので、ユーナの矢や赤ボトルがあまり当たっておらずダメージが少ない。
あれはまだ生きているな。
でも敵は予想以上に混乱している。
今ならもう1つ!
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