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6. けいびたい の かこ

よろしくお願いします。


動物虐待ではありません。不埒な発言をした夫への制裁です。

「今初めて詳しく聞いたけど……大変だったな」


と、ゼッタさんも他に言葉が見つからない様子。


ただまあ起こってしまった事はもう仕方がない。


たとえ泣いて寝てるだけでも腹は減る。


いつまでもいじけてたってどうにもならないのだから、早く切り替えて今後を生きていかないとならない。


なんとか気持ちに区切りを付けてほしいところだけど……



「なんなら連中に復讐でもしますか?協力しますよ。タサワスさんの食事に腹下しを混ぜて、目に付く範囲のトイレを全部使用禁止にするとか。女性達と良い雰囲気になってるところに、物陰からお経を唱えてやるとか」


「い、いや、いいよ……」


「それとも女性の方を狙います?化粧水の中身を酢と入れ替えるとか。寝てる間にちょっと顔にテープか何かで細工して、目の周りにパンダ顔の日焼け跡が出来るようにするとか。もしくは口裂け女メイクを……」


「そんなことしなくて良いから……」


僕の提案を、引きつった顔で断るサテルさん。


さらには横で、アリサとユーナとゼッタさんまでもがドン引きの表情で僕を見ている。


「でも……そうだね。今後の生活もあるし、俺も前を向かないと」


と、それでもサテルさんは少し笑顔を見せた。


良かった、ちょっとは元気になってくれたかな。



「そうだね。嫌なことは気分転換でもして、さっさと忘れちゃうのが一番だよ。新しい恋を探すとかさ」


「ユーナの言うとおりですよ。何ならこの後気晴らしにパーッと色街にでも繰り出しいぃぃぁあ、フギャアァァァア!!」


加えて提案しようとした僕の頭の両側からユーナとアリサが握りこぶしを当てて、そのままグリグリと押し込んでくる。


「奥さんの前で堂々と女遊び宣言とか」


「良い度胸だなぁ?」


「冗談ですごめんなさいごめんなさい!!」


痛い。



テーブルの上で舌を出して伸びている僕にため息を吐くアリサとユーナに、青ざめた顔で苦笑いを浮かべているサテルさんとゼッタさん。


そんな中、ゼッタさんが「さてと」とテーブルに手をついて立ち上がった。


「俺はそろそろカストルを迎えに行かないと。それじゃあな」


疲れのにじんだ声でそう言うと、僕達に手を振って立ち去って行く。



カストル君というのは、ゼッタさんの1人息子で今9歳らしい。


奥さんはもうだいぶ前に亡くなっていて、今は父1人子1人で暮らしているのだそう。


そんな時、歩いて行くゼッタさんを見送っていたアリサが、ぽつりとサテルさんに尋ねた。


「ゼッタさんは、もしかして以前軍人か何かだったんだろうか?」


何かとアリサを見る僕達に、彼女は言葉を続ける。


「最初に会った時から思っていたんだが、あの人は普段から佇まいに隙が無い。歩き方にも、槍を持つ癖が残っている。多分、何度か実戦も経験している人なんじゃないかと思ってな」


こういうことには鋭いアリサ。


確かに、身のこなしがただの人ではないなというのは、僕も思っていたこと。


軍人や冒険者をやっていた人が、結婚や子供が出来たのを期に引退して一般の仕事に就くというのも、よくある話だ。



アリサの言葉に「へぇ」と驚いた顔になるサテルさん。


「良く気づいたね。まあ、その通りだよ。あの人前は警備隊にいてさ、凄腕で知られてた人なんだよ」


警備隊か。


サテルさんの話によればゼッタさんは、クワンナ市の元警備隊員。


腕っぷしも強かったし捜査の勘も良くて、凶悪犯や強盗団などの検挙に何度も大きな活躍をしてきた人だった。


ところが今から1年前、ちょっとした不祥事的な事が起きて、その責任を取る形で警備隊を退職することになったのだそう。


不祥事の具体的な内容についてはサテルさんは言葉を濁していたけど、直接ゼッタさんが悪いということではないし、警備隊からも退職を惜しむ声がかなりあったのだということは教えてくれた。



今は警備隊を離れて人足の仕事に就いているゼッタさんだけど、日々の鍛錬はかかしていないし、船のオーナーの不審な態度から密輸を見抜いたなんてこともあったらしい。


「とても警備隊の仕事を誇りにしていた人だし、まだ身体は鍛えているみたいだから、なんとか戻れる方法があれば良いんだけどな」


と、少し重い声で呟くサテルさんだった。




話し終えるとサテルさんは、ふぅ、と一息吐いて、ぼんやりとした目で河を眺める。


ゼッタさんのことについてもだけど、サテルさんまだ少し落ち込んでいるな。


そんな様子に気づいたアリサが、サテルさんに目を向けた。


「な……何?」


狼狽えるサテルさんをじっと見つめ「ふむ……」と頷いて、そして告げる。


「サテルさん、まだ吹っ切れてはいないみたいだな」


「う」


アリサの指摘に、サテルさんは苦い顔をする。


「時間をかけて忘れるというのもあるが……よし、なら私が発散させてやろう」


ニヤリと笑うアリサと、そんな彼女に引き気味のサテルさん。


あれ、なんか……ちょっと嫌な予感が?

お読みいただきありがとうございます。

また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] これはこたが悪い(確信) スカウトはどうしても戦闘力が落ちるから難しいとこあるけどコタをして凄腕ってレベルの人を追放は高くつきそう。近接攻撃力高いモンスターとの鉢合わせって感じで。
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