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5. ついほう の けいい

よろしくお願いします。

寝取られ話になります。苦手な方はご注意ください。

サテルさんは、現在25歳の4級冒険者で、職種は軽戦士を兼ねたスカウト。


ここクワンナ市からしばらく南へ行った所にある漁村の出身で、以前は漁師として船に乗っていた。


それが20歳の時に一念発起して、この町に来て冒険者になったのだそう。



なんでも昔、サテルさんが乗っていた船が魔物に襲われたことがあったらしい。


必死に逃げて、なんとか船を近くの岸に着けたところで、幸いサテルさんも仲間も通りがかった冒険者のおかげで助かった。


その際に逃げることしか出来なかったことが悔しく、強くなりたいと思ったのが冒険者になるきっかけだった。


「この辺りで1番大きな町に行って、そこで冒険者登録すれば強くなれるだなんて、考え無しも良いところだった」と、苦笑いを浮かべていたサテルさん。


棚からヘビと恐竜で飛び級した僕達と違い、20歳から順当に功績を重ねて25歳で4級ってかなり優秀じゃないかと思うのだけど、サテルさんの場合は一緒にパーティを組んだ人達がかなり規格外だった。



他のメンバーは、2級重戦士のタサワスに3級魔法使いのベルに、同じく3級僧侶のユーシラ。


まだ冒険者登録したてでランクの低かった時に4人は出会って、『大地の黄玉』という名のパーティを組んだ。


そんなメンバーの中で、サテルさんは僧侶のユーシラのことが好きになる。


好物の恋愛話に食い付いたアリサとユーナの脅しと口八丁で聞き出した話によれば、控えめで楚々とした性格でどこか儚げな雰囲気をまとったユーシラに、これまで見てきた漁村の強い女性とはまた別の、新鮮なものを感じて彼女のことが気になり始めたのだそうな。


そして告白の結果、ユーシラもサテルさんの気持ちに応えてくれて、2人は付き合い始めることになった。


真面目で穏やかな性格のサテルさん。


生きるのに精一杯でこれまで女性と付き合った経験もあまりなく、ユーシラとの交際も手探りではあったのだけれど、それでも彼女は楽しそうな素振りを見せてくれていた。


他のメンバーのタサワスやベルも、2人の交際を祝福してくれていたらしい。当初は。



ちょうどその頃、ここクワンナの周辺では魔物の群れが立て続けに発生。


群れの討伐や町の防衛などに冒険者達が駆り出される中で、4人のパーティ『大地の黄玉』はみるみるうちに頭角を現した。


強力な爆裂魔法を得意とするベルを擁する『大地の黄玉』は、魔物の群れの覆滅などに大きな功績を上げた。



さらにはロックブラストディアーという鹿の魔物が大量発生した際に、タサワスが群れのリーダーを討伐したことで、クワンナ市の間近まで迫った数百体もの群れを撃退することに成功。


この功績が認められたことで、『大地の黄玉』は2級パーティへと一気に昇格を果たしたのだった。



ただその一方で、サテルさんのランクは他の3人程には上がらなかった。


というのも、サテルさんの職種はスカウト。


戦闘よりも敵の偵察や監視、地形の確認など、情報収集を主とする役目だ。


加えてサテルさんは普段から、依頼の際の食料品その他物資の手配やパーティメンバーのためのレア物装備品の情報集めなど、戦闘よりも後方支援での役割を大きく果たしていたらしい。


実際『大地の黄玉』がロックブラストディアーの群れを撃破出来たのには、サテルさんが集めた情報が大きな役割を果たしていた。


サテルさんが命がけで偵察を行い、群れのリーダーの位置を正確に特定したからこそ、『大地の黄玉』はリーダーをピンポイントで狙うことが出来たということだ。



「あの……ロックブラストディアーですか?大きな角が鋼のように硬くて、突進は岩壁をもぶち抜くって言われてる、ランク3級の?」


「そうだよ。そのロックブラストディアー」


「その群れを偵察してリーダーの位置を掴むって、十分過ぎるくらい凄くないですか?」


「実際、気が抜けなかったよ。何度もこれは死んだなと思った」



もしかしたらこの人、索敵とか情報収集の技術では僕より上かもしれない。


でも敵を倒したり、味方を回復したりという明確な実績と比べるとどうしても見劣りしてしまい、結果なかなかランクも上がり難くなってしまうというのが実情なのだそう。



そして、『大地の黄玉』が一流冒険者パーティの仲間入りと見なされる様になってきた辺りから、他のメンバーからのサテルさんを見る目が変わり出した。


サテルさんを除いた3人で行動することが増え、戦闘中の声がけなども次第に高圧的に、普段の会話はそっけないものになっていく。


タサワスに勧められたからと、ユーシラの髪型や化粧がタサワス好みのものに変わっていく。


タサワスがサテルさんに、ユーシラが自分になびいたことをほのめかす。


サテルさんの目の前で、タサワスがベルや、そしてユーシラと見せつけるようにイチャつき合う、挙句の果てには夜中に女性達の部屋から嬌声が響いてくると、この辺りはサテルさんも口を濁してはいたのだけれど。


完全に浮気である。


そういう浮気や不倫などの話題が苦手なユーナが、嫌悪感に顔をしかめている。


それでもサテルさんは、自分がもっと強くなれば、ランクが上がれば皆も、ユーシラも見直してくれるのではないかと、メンバーからの疎外感に耐えながら日々頑張っていたのだそう。


しかしその結果が、先日の追放騒ぎということである。


追放の場では実力不足だの何だの言っていたみたいだけど、実際のところはタサワスのハーレムパーティにサテルさんがいい加減邪魔になったのが本当の理由というのが透けて見える。



もうなんていうか……なんて言えば良いのやら。


失恋は僕も経験してはいるのだけれど、サテルさんのはまた色んな意味で質が悪い。


タサワスは、サテルさんがユーシラと付き合っているということをどう思っていたのだろうか。


その上で、自分とユーシラの浮気の関係を見せつけたかったのだろうか。


僕には理解が出来ない感覚だ。




皆が言葉を無くしている中、ユーナがこわごわと声をかけてみる。


「あの後、元パーティの人達からは何か?」


「いや、何も無いよ。あれきり顔も合わせてない」


「そ、そう……」


それは、良かったというか。

お読みいただきありがとうございます。

また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。


コタロウは好きな人や親しい人とはまた別に、嫌いな人にも敬称は付けません。

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