2. ふね の うんきゅう
よろしくお願いします。
「アリサお嬢さんを、僕にください!」
「断る!」
「なぜですか!?僕は真剣に彼女のことを愛しているのです!必ず、彼女を幸せにしてみせます!」
「幸せにすると言ったか。だが気持ちだけでは人を幸せにすることなど出来はしない、それなりの経済力というものが要るのだ。アリサを幸せにするためにコタロウ君、キミは一体いくらの金を出せるというのかな?」
「え、え〜と……銅貨3枚くらい?」
「よし、彼女を連れて行くが良い」
「朝から人の枕元で私が銅貨3枚とはどういうことだ!」
グランエクスト帝国に入国し、関所の門前町から馬車に乗ってクワンナという町に到着した僕達。
期待していた海魚を食べられなかったことで、落胆のあまりめそめそと1日泣いて過ごしていたものの気を取り直し、僕達は現在今後の予定を検討しているところだ。
なんでもこの町からは、側を流れるシエラノ河を下る客船が出ているらしい。
船は3日間程河を下り、最終的には海の側にある、ここシュガン子爵領の領都イシャークという町に着くのだそう。
領都なら大きな町だろうし、何よりも海の側の町であれば当然海魚も食べられるはず。
加えて大きな船に乗るというのも初めてのことなので、ここはぜひ体験しておきたい。
ということで、こいつはまた魚かと呆れ顔のアリサとユーナと3人で乗船を申し込もうとしたのだけど……
「運航してない?」
「はい、実は少し前から、この町の近辺に盗賊が出現しているという情報が入ってきているんです。危険ということでイシャーク行きの船はストップがかかってまして、再開もまだ未定です」
運輸ギルド水運部門の窓口で告げられたのは、ここクワンナ発で海に出る客船が現在運休中という話だった。
なんたること。
これでは海に行くことが出来ない。
海魚が食べられない。
ここに来てまたさらにお預けを食わされることになるというのか。
茫然自失としている僕を尻目に、ユーナが受付の女性に尋ねている。
「盗賊か……船を持ってる連中ってこと?」
「これまでに船が襲われたり、捕まったりというのは無いんですが、武装した船が目撃されたとか、不審な船に後をつけられたという報告は多数上がってきています」
いわゆる海賊というやつだろうか。
でもここは河だから……河賊?ってのも聞かないから……水賊?
水賊艦……なんか違う気がする。
めんどくさいし海賊でいいや。
「大規模な相手なのですか?」
「具体的にどれぐらいいるかまでは、まだ把握は出来ていません。ただ近づいて来た不審船には、かなりの数の人間が乗っていたという話は聞いています。それに加えて陸の街道沿いにも、武装した不審な集団を目撃したという情報が寄せられていまして」
ユーナとアリサの質問に、困った顔で答える受付嬢さん。
現在運輸ギルドでは、商業ギルドをはじめとしてこの町にある複数の商会から、事態の解決を求められている状況。
今のところ陸運については、護衛の数を増やすことで対応中。
水運についてはしばらくの間様子見とし、被害が無い様であればこちらも護衛を増やすなどして運行再開を検討しているところだという。
冒険者ギルドには既に討伐の依頼を出しているので、盗賊の詳しい情報についてはそちらに行けばある程度はわかるんじゃないかとのことだった。
冒険者ギルドか。
確かに、この町に着いてからはまだ顔を出していなかったな。
ちょっと行って訊いてみるか。
それにしても……またマグロが遠退いた……
こうして、とりあえず冒険者ギルドに行って盗賊の情報を見てみることにした僕達。
ギルドのドアを開けて中に入るとそこでは、
「……本当に残念ではあるんだが、もう君の実力では俺達の受ける依頼に付いてこれるとは思えない。サテル、君にはここでパーティを辞めてもらおうと思う」
「そんな!?確かに俺はお前と比べて力は弱いけど、そこは索敵と作戦面でなんとか……」
「索敵は今後はベルがやると言ってくれている。作戦関係は俺がやる。問題は戦う力なんだよ。俺と強力な魔法使いのベル、そして回復魔法の名手であるユーシラと、2級パーティに昇格した俺達の中で君1人が明らかに力不足なんだ。そう思わないかい?」
「で、でも俺は……!」
なんか揉め事が発生していた。
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